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第676話 『青い球体 その1』



 ジジジ……キシャアアアア!!



「うおおお!! せりゃあああっ!!」



 洞窟内で、再び遭遇したオオケラ3匹が襲い掛かって来たので、『土風(つちかぜ)』で斬り倒した。


 弓矢やナイフの扱いは得意だけど、正直剣は……って感じだった。へたくそではないと思うけれど、どーも苦手っていうのかな。


 だけどドワーフの王国でアテナが、剣も持っていた方が何かといいからとこの太刀『土風』をプレゼントしてくれた。


 それからは常に腰にぶら下げて、何かあれば使うようにはしているが、思ったよりもなかなかいい感じ。剣が苦手とかそういうのよりも、アテナがオレにこんな高価でいいものをプレゼントしてくれた事の方が遥かに嬉しかった。


 だから今では苦手だから使わないのではなく、苦手だからこそ得意になろうと思いなおしている。我ながら、凄まじい向上心だな、うん。


 その甲斐あってか、ムフフフフ。随分と剣の腕も上達したと思っている。もちろん弓やナイフ程のレベルには足りないが。


 広い場所に出た。地中にある、空洞というのか。


 空洞には水溜り……っというか泉があった。ノクタームエルドでも、洞窟内にこういう場所はあったなと思いだす。ついこの間まで冒険していた場所なのに、今思い出すと何年も前の事のように思える。とても不思議だ。


 泉に近づくと、そのまましゃがみ込んで両手で水をすくってみた。


 こういう洞窟内に湧き出た水は、綺麗で冷たくて美味い。だがノエルがノクタームエルドには、毒水の溜まる場所もあると言っていた事を思い出す。普通は地にしみ込んだ雨水などが土や砂、岩の間を通ってろ過されたりして湧き出たりしている。もちろん、もっと地中から吹き出している出所の解らない謎水もあるらしいけど。


 それと同じ原理で、有害な鉱石や土などを通過して湧き出たり、魔物の死骸や毒をもつキノコや植物などのエキスを含んで流れ出る水があって、そういうのが毒水になったりするらしいのだ。



「だけどなー、オレにはこれが飲んでいい水なのか毒なのか解らん! アテナやマリンなら、あっさり見抜きそうなもんなんだけどなー。なんといってもマリンは、水属性魔法のスペシャリストだというし……やっぱりザックに、カルビと一緒にマリンを押し込んで背負ってくるんだったかなー」



 高難易度のエルフジョークを織り交ぜつつ、オレは両手で救った泉の水を見つめた。


 そう、アテナが以前言っていた。キャンプの際に飲み水が必要になった場合、近くで見つけた水が飲めるかどうか確認する方法があると。本当は、最後に煮沸できればより完璧だと言っていたが、そこまではいらんだろう。


 まずは、水に触れてからその手を見る。手が痺れたり、痒み、痛みを感じていないか。うん、問題はない。


 次に匂い。変な匂いがしないか。うん、特に無臭。ついでに水を顔の近くに持ってきているので、何かゴミや……そうだね、虫の卵とか幼虫とかそんなヤベーもんが浮いていないかどうかを見る。


 そこまでクリア出来たら、今度は水を飲まずに舌先だけで軽くぺろりと舐めてみる。もちろんそれで問題がなければ、もう少し口の中に含んでみてそれでも特に違和感がなければ、ごくりと飲んで様子をみる。


 …………ゴクリ。


 うん、うんめーーぞ!! 冷たくて、これは美味しい水だ!! ゴクゴクゴクゴク……


 実は喉が結構乾いていた。だから、泉の水が大丈夫だと解るや否やガブ飲みする。


 やーー、アテナは流石だな。キャンパーだと名乗っているのも伊達ではない。アテナが説明をし始めた時に、まーーた始まったーって思ったけど、ちゃんとアテナが言っていたうんちくを聞いていて良かった。



「おうん?」



 泉の水をしこたま飲んで満足すると、その泉の底に何かある事に気づいた。なんだ、ありゃ。辺りは暗いしよく見えない。だけど確かにこう……なんてーのか、青い丸っこい球体のようなものが水の底に沈んでいる。


 うーーん、どうしたものか。


 こんなの見た事がないし、凄く気になるけど……思い出すのはさっき聞いた男の悲鳴。泉の向こうにまた更に奥へ進む道が目に入る。凄く気になるからと言って、ここでのんびりとこれがなんなのか調べている暇もない。


 オレは後ろ髪をひかれえる思いで、立ち上がり先へ進むために泉から離れようとした。だけどもう一度だけ、さっきの泉の底に沈んでいる青い球体を懐中灯で照らした。


 すると僅かに泉の水――水面が波打ったかに見えた。いや、波打っている。



「な、なに? なにがなんだ?」



 少し後ずさりをすると、泉の水は更に大きな波紋を広げて、波打ち始めた。もう一度、泉の方を照らし出すとさっき目にした泉の底に沈んでいた青い球体が徐々に上に浮かびあがってきていた。



「な、あんじゃあこりゃああああ!!」



 思わず声をあげた。


 それもそのはず。泉の底に沈んでいた青い球体は、どんどん水面にあがってくると、ザバアっと水音を立ててそこから浮かび上がり、泉の丁度真上に浮上した。全体にスライムのようなフヨフヨとした水を纏い、宙にフヨフヨと浮いている。なんなんだありゃああああ。


 別にエルフにそんなものは備わってはいないが、オレの直感がなんとなくこれはヤバイんじゃないかと告げている。


 よし、こいつは見なかった事にして先へ進もう。そう思った刹那、顔の前を何かが走った。



 ビュンッ!


「ほへ?」



 宙に浮くスライムのようになった泉の水を、身に纏う球体。それが放った、水のビームのようなものだった。それがオレの顔の直ぐ横をかすめて、その向こうの岩壁に穴をあけた。



「おいおい! なんて貫通力だ。み、水だろ? こんなの急所に命中したらいっぱつで即死だぞ」



 言ってマリンの水属性魔法【貫通水圧射撃(アクアレーザー)】を思い出した。マリンの得意な魔法で、岩をも貫通させる水のビームを放つ殺傷力の高い魔法。そのものだ。


 青い球体は、貫通水圧射撃(アクアレーザー)がオレに当たらなかった事を見るやいなや、再び同じ攻撃を繰り返してきた。



 ビュンッビュンッ


「うそだろお!! おいおいおい!! ひええええ、ちょっと待って!!」



 バク転で回避。慌てて近くにあった岩の陰に隠れる。しかし青い球体の放った貫通水圧射撃(アクアレーザー)は、オレが身を隠した岩にも穴を空ける。


 ま、まずい。果たしてこいつを振り切って、先へ向かえるのか。向かえたとしても、帰りにまた遭遇する事になる。じゃあ、倒すしかないのか。どうやって?


 思考を巡らせていると、青い球体は容赦なく連続で貫通水圧射撃(アクアレーザー)を放ってきた。

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