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第634話 『交易都市出入口門前にて その1』



 ――――メルクト共和国の北東部に位置する交易都市、リベラル。


 私、セシリア、ローザ、アロー、そしてここへ来る旅の途中で知り合ったアイシャというコロポックルの少女と共に、今私達はリベラルの街にやってきていた。


 リベラルの街は大きな石壁に囲まれていて、その中へ入ると、物凄い数の店と人の数でひしめき合っていた。


 例えばエスカルテの街は、クラインベルト王国でも王都、リオリヨンの街に次ぐ大きな街だけれど、通りも綺麗でお店や家も寄り集まって建てられているけど、高い建築技術で計算されて建造されている為、窮屈感も無く綺麗に配置されている。美しい街並み。


 だけどこのリベラルの街は、何もかもが犇めきあっている。歩いていても、人とぶつかる事があるし何と言うか……息苦しい街だと思った。


 それはそうと、街の外であんな盗賊達の騒ぎが起きたのに、私達はどうして街の中にすんなり入れたのか。その理由だけど、それは何て言うか私達にもはっきりとした事が解らなかった。


 あの時、出直そうとした時に後ろから誰かに肩を掴まれた。振り返ると、そこには1人の可愛らしい女の子が立っていた。


 少し日に焼けた肌がとても健康的で、ローブを身に纏って顔も布で隠してはいるけど、その瞳だけでも美人だと解る。


 その女の子が私達に声をかけてくれて、街の中へ入れてくれたのだ。







「この場にとても似つかわしくない可愛らしい服装……二人共、もしかしてクラインベルト王国の王宮メイドかな?」



 女の子の言葉に驚いたのは、私だけではなかった。同じ王宮メイドである、セシリアもそうだしクラインベルト騎士であるローザも驚いた。



「あ、あなたは誰ですか?」


「先に質問したのは、私だからね。だからって、じゃあ答えたから私が答えるかどうかは解らないけれど、フフフ。でもさ、とりあえず先にあなたが答えるのが筋ってものじゃない?」



 ローザが睨みつける。



「おっと、迷惑ならもう引き下がるよ。ただ君達がクラインベルト王国の関係者だとしたら、友好的な関係を築いておきたいと思っただけなんだけどさー」



 どういう事だろう? 


 リベラルの街の商人なのか、それともメルクト共和国を救って欲しいと思って活動か何かをしている人……


 え? でも私達クラインベルトの者が、メルクト共和国を助けようとやってきている事は、この人は知らない事のはず。


 もともとがメルクトから賊の目を掻い潜ってメイベルとディストルだけが、クラインベルト王国に助けを求めてやってきたところからこの旅は始まっているし……だいたいこのメイド服を見て、パッとクラインベルトの王宮メイドだって解るなんて……普通ではない。


 じゃあ、この人はいったい? 私とローザの代わりに、今度はセシリアが話した。



「そう、それなら答えるわ。ずばり、あなたの言う通りよ。私達はクラインベルト王国の王宮メイドよ。それじゃ今度は、こっちの番ね。あなたはなぜ、私達の事をクラインベルトのメイドだと解ったのかしら。そしてなぜ声をかけてきたの? あなたの名前は? 私達がクラインベルト王国の関係者であるのなら、あなたに何かしらの影響があるのかしら?」



 流石はセシリアだなと思った。質問にあっさり答えるやいなや瞬時に、怒涛の質問攻撃。ローブの女の子が目を細めてしまっている。もしかして本当に、友好的な関係を望んで声をかけてくたのかもしれない。


 でも何かあるか解らない。アーサー・ポートインも単なるキザな冒険者なだけで、単純に私達の力になってくれようとしていたと、出会った頃は思っていた。


 それにセシリアは、あえてローザが騎士であるという事まで明かさなかったのを見ると、私と同様に警戒は解いていないのだと思った。



「待ってよー、もう! 質問一つに何個質問を返してくるの? もういい、もういい! まったく、クラインベルトの者だとしたら、友好的にしたいっていうのは本当なのにな。迷惑だったらもういいよ。困っていたみたいだったけど、私の勘違いだったみたいね。邪魔してごめん。それじゃあ私、もう行くね」



 女の子はそう言って私達から離れた。私は何か解らないけど、このまま彼女を去らせてもいいのかと迷ってしまった。すると、その女の子は、黒ずくめターバンを巻いた男達のもとへと戻った。仲間……なのかな?


 女の子が黒ずくめの男達に何か話すと、男達は頷いて彼女の後に続いた。その後ろには……え? とても大きな鳥が何羽も続く。10羽は、いると思うけど……その鳥は、鳥と言っても馬位に大きな鳥で、足も長くてその背には荷の他に、騎乗する為の鞍が装着されていた。


 セシリアが言った。



「あれはクルックピーって鳥よ。国や場所によっては馬の代わりにして騎乗したり、荷を運ばせたりするために利用されているわ」


「クルックピー……ですか」



 フサフサした羽はとても弾力がありそうで暖かそうだった。それでいて目は大きく丸くて、とても可愛らしく、頭に逆立っている毛もチャームポイントとして見つめていると、なんだか思わず抱きしめたくなってくる……そんな気持ちになってしまう。


 そんな事を思いながらもボーーっと眺めていると、彼女とその連れの男達は門番に何かを話して手渡すと、そのまま城門の方へ歩き出した。え? もしかして!!


 セシリアと顔を見合わせる。私は急ぎ慌てて彼女の後を追うと、彼女に向けて叫んだ。



「その通りです!! その通り、私達はクラインベルト王国の者です! ですからあなたがもし、口利きをしていただけるのでしたら、私達も一緒に中へ入れてもらうように、お願いしてもらえないでしょうか?」



 するとその女の子は、こちらを振り向いて「やっぱりそうだったんだ。いいよ」っとあっさり頷いてくれた。でもローブの女の子は更に続けて、私とセシリアとローザがびっくりする事を言った。



「それじゃあ、助けてあげる。でももう一つ先に聞いておきたい事があるんだけどいいかな?」


「な、なんですか?」


「君達は、アテナという名の冒険者を知っていたりする?」



 ここまでが、私達がなぜリベラルの街に入れたかという経緯――

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