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第630話 『交易都市リベラル その1』



 交易都市リベラルまでの道中、セシリアとの会話は続いていた。



「それでそのレティシアさん……だけれど、先にリベラルに到着していて、私達が来るまでに『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』について色々と探ってくれているのよね」


「ええ、そのはずです」



 もともとレティシアさんは、リベラルで冒険者として活動していたらしい。


 リベラルの冒険者ギルドで、誰もやりたがらないガルーダの討伐を請け負って、モロロント山にやってきていた所で、私と出くわして力になってくれた。

 

 ガルーダは、私達が救出しようとしていたコルネウス執政官と同じ場所にいて、彼を襲おうとしていた。


 ガルーダ討伐と、コルネウス執政官の救出。レティシアさんと目的の重なった私達は、一緒になってガルーダを討伐し、コルネウス執政官を助け出した。


 あの時、私はガルーダに掴みあげられて上空に連れ去られかけて、とんでもない酷いめにあった。


 上空に連れ去られかけた私を助けようと、ボーゲンとレティシアさんがロープや植物の蔓で私の身体を捉えて引っ張ってくれた。だけどガルーダも私を鷲掴みにしたまま離さなくて、両方から凄い勢いで引っ張られて身体がバラバラになるんじゃないかって……拷問みたいな恐ろしい目にあった。


 助けてくれた事は、素直に感謝しかないけれど、でももうできれば二度と同じ目には会いたくないし、思い出したくもない。それくらい怖くて、痛いめにあった。



「レティシアさんの当初の目的は、ガルーダ討伐だったので、リベラルにはその報酬を受け取りに行っています。そしてそのついでに、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』について調査をしてくれるという事でした」


「リベラルには、このメルクト共和国を乗っ取ろうとしている『闇夜の群狼』の幹部がいる……」



 セシリアとの会話に、ローザが入ってきた。



「そうです、誰かは解りませんが幹部がいて、その人が大勢の盗賊達を操って、このメルクト共和国を襲っています。その人をレティシアさんが見つけ出してくれていれば、私達が倒して捕まえて、戦局は一気に好転すると思います」



 セシリアが頷く。



「そうね。ボーゲンやメイベル達が首都グーリエを奪還し、私達がリベラルで敵の親玉を倒す。そしてコルネウス執政官に本来の力を取り戻して頂いて、政府を本来の形に戻して機能させれば、『闇夜の群狼』は四散し、このメルクト共和国は息を吹き返すわ。混乱に乗じて、暴れまわっている盗賊団も同じでしょうね」


「見えてきましたね。つまり、その3つを成しえる事ができれば、この国を救えるという事ですね」



 ローザがニヤリと笑った。



「政府が復活して力を取り戻せば、軍も編成できる。武器や防具に関しては、セシル陛下が全面的に支援してくださるだろうし、そうなればそれでも居座っている賊どもは一網打尽にできるな」



 ボーゲンやメイベルやミリス達は、きっと自分達のやるべきことをしっかりと見つめていて、そこへ向かって行動を続けている。ビルグリーノさんやマルゼレータさん達もそう。


 私達も、この国に平和を取り戻すために、何としてもリベラルで『闇夜の群狼』の幹部を見つけ出さないと。


 リベラルに到着するまで、そんな話を続けた。アイシャは、とても気を使ってくれる女の子で、私達の話している内容については、まるで耳に入っていない――そんな感じでいてくれた。


 



 ――――交易都市リベラル。


 私達は、その都市に続く街道をずっと北に進んでやっとその近くまでやってきた。目の前は荒野が広がっていて、そこにとても巨大な街があった。


 街の周囲はぐるっと高い石の壁に囲まれて、その上には何十人もの警備兵が立っている。防衛の為の兵器も配備されていて、石壁の直ぐ向こうには背の高い見張り塔がいくつも見える。


 これが交易都市、リベラル。メルクト共和国の北部にある自治都市で、メルクト共和国にありながらも一つの国と成している街。


 ローザが声をあげた。



「これは凄いな。外から見れば、砦というよりはもはや城塞だな。このずっと向こうまで長く続く壁の向こう側に活気がある街があるのだと思うと、なんだかワクワクするな」


「そうですね。王都やエスカルテの街、リオリヨンの街なども石壁に囲まれていますが、リベラルは街でありながら自治都市というだけあって迫力がありますね。見てください、あそこ。沢山人が並んでいますよ」



 荒野の向こう、街に入る大きな門の前には沢山の人達が長蛇の列になっていた。これは凄い。街に入るだけでも、今からじゃ1時間位かかりそう。


 アローは、レティシアさんとこの街に何度も来ているし慣れている。私は荷車の上にいるアローにどうしようと目線を送った。



「タイミングが悪かったですね。特に混雑している時に訪れてしまった事と、時間帯もありますかね。もう少ししたら、夕暮れになります。商人だけでなく、この辺りを通りかかった多くの旅人達も、リベラルで宿をとる予定なのですね。ですが今から並べば、いずれは中へ入れます。かかっても……そうですね、1時間位じゃないですかね」



 やっぱり1時間はかかる。セシリア、ローザ、アイシャと顔を見合わせる。



「仕方がないわね。どちらにしても選択肢は一つよ。並ぶしかないなら、直ぐ並びましょ」


「うちは、特別急いではいーへんので、お任せしますよって……っていいますか、もう目的地についてしまいましたもんなー。うちこのまま一緒させてもらっても、お邪魔になってやしまへんやろか?」


「そんな事ないですよ! ね、セシリア」


「そうね。アイシャは見ず知らずの私達を助けてくれたわ。私達の方こそ、良ければもう少しアイシャと一緒に行動したいわ」



 ローザとアローも、うんうんと頷いている。それを見てアイシャは、はにかんだような可愛い表情をして喜んでくれた。


 今の私達は、とても大切な事を成し遂げる為の行動中ではあるけれど、ここにくる道中で偶然知り合って助けてもらったアイシャとの出会いも大切にしたい。


 そう思ったのは、私だけではなかった。

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