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第598話 『モーニング その1』



「アテナ! またキャンプに連れて行ってね! 今度はルンが一人で珈琲を入れてあげるから!」


「うん。ルンが入れてくれた珈琲を飲めるのを、楽しみにしているよ」


「アテナさん。ルキアの事、よろしくお願いします」


「クウこそミャオの事、くれぐれもよろしくお願いします」


「ニャんとニャ! ニャーが保護者ニャよ!!」



 ニヒヒと笑う。こうしてミャオ達は、トニオ・グラシアーノに会う為に、私達よりも一足早く宿を出た。


 まあ色々会ったけど、ミャオとは久しぶりに会えて楽しかった。これでローザもいれば、完璧だったのにな。でもローザはメルクト共和国で、悪い賊を討伐して国を救うためにテトラやセシリアと奮闘中だという。そんなローザの事を思うと、わがままを言ってられないかな。


 心配しなくてもきっと、また皆で一緒にキャンプができる。


 泊まっていた宿の前でミャオ達に手を振って見送った後、ルシエルが言った。



「……さてと、それじゃどうするんだっけ?」


「とりあえず、皆は朝食でもとってきて。私はクロエと食事をしてくるから。そうね、一時間位でいいと思う。一時間したら、コナリーさんの喫茶店に来てくれる?」



 そう提案すると、ルシエル、ルキア、ノエルは頷いてくれた。マリンは……まだ眠たげな眼をしている。きっと寝ぼけているな。



「よっしゃよっしゃ、解った解った。一時間後にコナリー喫茶ね、よしよし。それじゃー、オレら飯に行ってくるわ。また後でな」



 ルシエルも察してくれるようになった。以前なら、オレもついてくーって言って駄々をこねそうなものなのに。成長したなー。


 クロエと話をするのは、きっと一対一の方がいい。その方が彼女も変な緊張をしなくて済むし、話しやすいだろう。


 とりあえず、そういう段取りで決まった。ルシエル達が何処かへ食事に向かおうとした所で、ルキアがきょろきょろと辺りを見回した。



「あれ? カルビがいないですよ。何処に行ったんでしょうか?」



 またカルビがいなくなっている。ルキアはそう思ってまた不安な表情をした。だけど私は知っている。



「大丈夫。カルビなら、クロエの部屋にいるから。だから、カルビは私達が連れて行くから大丈夫だよ、ルキア」


「あっ、そうだったんですね。良かったです。それじゃアテナ、また後で」


「うん、それじゃまた後で」



 ルシエル、ルキア、ノエル、マリン。ミャオ達に続いて4人の仲間を見送ると、私は再び宿に入り自分の借りている二階のクロエの待つ部屋に戻った。


 部屋の中に入ると、クロエが椅子に腰かけて待っていた。その足元にはカルビがいて、クロエはカルビの背中を優しく撫でていた。



「お待たせ、クロエ。それじゃ宿をチェックアウトするから――これから一緒に出ましょうか」


「は、はい」



 荷物をまとめて部屋を出ると、一階へ下りた。手を貸すべきか悩んだけれど、クロエは杖を使用して廊下を歩き、手すりをしっかりと掴んで階段を一人で降りる事ができた。


 階段では、もしも足を踏み外すような事があってもいいように、私はクロエより先に階段を下りて素早く対応できるように注意を払っていた。だけどクロエは、しっかりとやれている。


 ロビーで少しクロエとカルビを待たせ、私はフロントで料金を支払い宿をチェックアウトした。



「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」



 くーーー、結構な料金だった!! そう言えば宿代って、なんか勢いで確かミャオに私が支払うって言っちゃったんだよねー。


 今チャックアウトをしたら、宿のご主人に全員分の料金を請求されるまでその事を忘れていた。ミャオめえ。まったくもーー。ミャオが悪いわけじゃないし、私が払うって言ったからこれでいいんだけど、想像を大きく越える料金を請求されたから……くすん。

 

 でもまあ、皆との久しぶりの再会だし今回はいいか――と割り切ることにした。だって例えばシェリーの分なんて、バーンが出すべきなのになって思う。まあもう支払ってしまったし、もうなんだかんだ言っても始まらないし。あと、私が払うって言ったんだから!


 でも手痛い出費だったなー。全員分ってなると、かなりの金額だもんね。普通に新しいキャンプ用品を買い揃えられる金額……



「アテナさん。どうかしましたか?」


 ワウ?


「ううん、いいのいいの。なんでもない、なんでもない。そんな事よりもこれでチャックアウトが終わったから、私達も朝ごはんにしましょ」


「え? でも皆さんは?」


「カルビはいるけど……二人の方が話しやすいでしょ? 皆には、食事だけ別にしようって話しておいた。とりあえず、コナリーさんのお店に行ってみない?」


「え、ええ。解りました」



 これからクロエがどうしたいのか? 朝ご飯をしながらそれを聞くつもりなんだけど、クロエはちゃんとその事を理解していて、一生懸命なんて話そうか考えているようだった。


 だから私は、コナリーさんの喫茶店に到着するまで特にクロエとはその事に関して会話をしなかった。


 クロエの手を引いて、コナリーさんの喫茶店に到着する。今日は、良く晴れたいい天気。ブレッドの街には人が沢山出ていて活気に満ちていた。


 この街に来てからは天気もあまりよくなくて霧が発生していて、人があまり外に出ていなかったので同じ街かと目を疑う光景だった。



 カランカランッ


「いらっしゃいませ……あら? アテナさんにクロエちゃん」


「おおクロエちゃんか。あれから色々あったみたいだが、大丈夫かな?」



 コナリーさん夫婦が私とクロエの顔を見るなり、駆け寄ってきてくれた。



「おはようございます、ショーン・コナリーさん。テレサさん。クロエの家に騎士団が着ていたから、ご心配されていたのかもしれませんが、もう解決しました。クロエは大丈夫です。ね、クロエ?」


「え、ええ。ショーンおじさん、テレサおばさん。わたしはもう大丈夫です。それで今日は、ここで朝ご飯を食べに来ました。アテナさんが、わたしの今後の事で相談に乗ってくださるというので……お話を」


「そうか、それなら良かった。私もテレサも心配していたから……さあ、店の中へどうぞ、入って入って!」



 クロエの元気そうな顔と声を聞いて、コナリーさん夫婦はホッとしていた。


 私とクロエはカウンターから一番離れた、大きな窓の隣にあるテーブル席に座った。

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