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第597話 『ブレッドの街、それから…… その3』



 ――――翌日、私は自分の借りている宿の部屋にクロエを待たせて、まずミャオとシェリーに会った。二人はもう治療を終えて元気になっていた。



「ミャオ、もう大丈夫みたいね」


「お陰様ニャー。もう、元気いっぱいニャ。ニャッニャッニャー」


「それなら良かった。それでね、早速なんだけどミャオ……」


「もしかして、もう今日旅立つニャ?」



 それでね、早速なんだけどミャオ――その言葉だけでミャオには伝わったようだ。やっぱり付き合いが長いというのもあるけれど、ミャオとは友達なんだなーって思う。



「うん、もう色々と昨日あった事を聞いていると思うけど、クロエの事もあるしそろそろ旅立とうと思うの」



 クロエがエスカルテの街に住みたいって言ったり、このブレッドの街へ残ると言えば、バーンにその後の事を頼んで色々としておかなくちゃいけない。


 もしくは、王都に行きたいと言えば、王都へ連れて行ってお父様にクロエの事を話し事情を理解してもらって、今後のクロエの生活の事など頼まなくちゃだし、王都まで送っていかなければならない。それは、別に構わないのだけれど、きちんと段取りは立てておかないと。


 私にはエスメラルダ王妃との約束があり、パスキア王国に向かわなくてはならない事も差し迫っていた。だから特にこれと言った用事がないのであれば、さっさと行動しておく方がいいと思ったのだ。


 これでパスキア王国に遅れて到着とかなったら、またエスメラルダ王妃やエドモンテに何を言われるか解らない。ゾルバは大っ嫌いだけど、ドワーフ王国での借りはあるし、それはちゃんと返さなければならない。つまりゾルバの顔を立ててあげる。


 だから私は、ミャオとシェリーの傷の具合――状態を確かめた後、早々にクウやルンにも別れを言ってブレッドの街を出るつもりだった。



「それで、アテニャは次はいつクラインベルトに戻ってくるニャ?」


「ううーーーん、それは解らない。エスメラルダ王妃は、私とパスキア王子を引っ付けたがっているけど……

この通り、私はまだまだ冒険もキャンプも続けたいしね。このヨルメニア大陸の隅々まで、この目で見てみたい。だから縁談は、無かった事にさせてもらうつもりだけど」



 縁談と聞いてミャオがニンマリと笑う。



「ニャニャーー!! アテニャは、パスキア王国の王子と結婚するのかニャ!! つ、ついて行こうかニャ。スンスンスン……ニャにか、儲けになるニオイがするニャ」


「だーかーらー、しないって! エスメラルダ王妃との約束で、パスキア王国の王子とお見合いするだけ。したらお役目達成で、再びキャンパーもとい冒険者に戻るだけ。ただそれだけよ」


「ニャーー。そう言えばパスキア王子は、かなりの美少年と聞いたニャ。っていう事は、中年好きのアテニャからしたら、ちょっとアレかもしれないニャね」


「言い方!! 誰も中年好きとか言ってないでしょ! 確かに私がカッコいいとか、そういう事を言ってる相手っておじさんが多い気はするけど……」



 ミャオは、目を細くするとニャヒヒと笑った。瞳の中に一瞬、金貨のシルエットが見える。



「そうニャってくると、アテニャはクラインベルト王国の第二王女でありニャがら、パスキアの次期王妃になるって事ニャね。そうニャったら、是非ニャーをご贔屓にして欲しいニャ。アテニャの欲しい物はニャンでもニャーがお届けするニャ。即日お届けニャ」


「私を利用して大儲けできるとでも思っているのなら、とんだ見当外れよ。だから私はパスキア王子と縁談を進める気はないし、パスキアの王子は全部で4人いるの。私が縁談する相手のカミュウ王子は、末弟よ。私がカミュウ王子と結婚しても王妃になんてなれないわ。順当なら、長男のエリック王子が第一王位継承者だろうしね。私がパスキアの王妃になるなら、エリック王子と結婚しなくちゃだよ」


「ニャニャ! それニャらカミュウ王子でなくエリック王子と添い遂げればいいニャよ。臨機応変ニャ。ニャーは全力で応援するニャ」


「だーかーらー、しないって! それに私がさせられそうになっているのって政略結婚だからね。姉のモニカならいいけど、第二王女である私っていうカードじゃ、エリック王子との縁談はきっとまとめられないわ。吊り合わない。ってだから、私は結婚なんて今はまだ考えてないし!」


「ニャニャー、今後は考えているニャ?」


「兎に角、私の恋人は冒険とキャンプなの! 甘える相手は、カルビ!! 尊敬する人は師匠で、今の所の恋人もカルビなのー!」


「一番面白くない答えだニャ」


「ミャオだって、お金が恋人でしょ」


「アテニャは、たまにニャーに酷いことを言うニャ」


「人の人生をアレコレ決めようとするからよ。それより、クロエにどうするか聞いたら私達はもうこの街を出るけどミャオはどうするの?」


「とりあえず、そのアテニャやニャーンさんの追っていた鰐の仮面、それを最初に被っていたトニオ・グラシアーノという男はニャーの友人ニャンだけど、無事だったみたいでもう自分の屋敷に戻って安静にしているみたいニャから、商談の件も含めてお見舞いに行くニャ。その後は、シスターケイトとアンナのいる教会に少しまたよってからエスカルテの街に戻るニャ」


「大丈夫?」


「トニオは操られていただけで、昔から知っている商人ニャけどいい奴ニャ。帰りの道もシェリーが護衛についてくれるから安心ニャよ」



 確かにミャオの言う通りだと思う。鰐の仮面は、もうトニオ・グラシアーノのもとにはない。鰐の仮面が召喚したバリオニクスという魔物も、水蛇(すいじゃ)が食べてしまったから。


 私はミャオとまた暫く会えないのかなと思うと、少し寂しくなって彼女と握手をした後にそのままハグをした。



「すんすんすん……」


「また、匂いを嗅がないでニャ」


「嗅がないよー。ちょっと別れを惜しんでいるだけだよー」



 そしてルシエル達を呼ぶと、皆もミャオと別れの挨拶をした。


 ルキアは、クウとルンと久々に会えて凄く楽しそうにしていたので、別れを惜しんでいるのが凄く伝わってきた。

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