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第541話 『バーン・グラッドの用件 その2』




 ニャーは、バーンさんにリッチー・リッチモンドから買い取った曰く付きの商品に関しての話しをした。


 しかし冒険者ギルド……バーンさんが探し求めているのは、鰐の顔のデザインをした怪しげな仮面のみ。それを何とか回収して、冒険者ギルドへ引き渡して欲しいという。



「トニオ・グラシアーノ。ブレッドの街の商人で、ニャーの知り合いニャ。商品は、昨日のうちにトニオに全部引き渡してしまったニャ。これから取引完了の書面を交わして、代金を受け取りに行こうと思っていた所ニャ」


「そうか、それなら好都合だ。俺達が手に入れたいのは、鰐の仮面だけだ。他の品物は特に問題がない。どうだ、ミャオ。引き受けてくれるか?」



 冒険者ギルドのミスで面倒な事になったとはいえ、バーンさんにここまで言われればしょうがない。普段、お世話になっているしなあ……


 クウが心配そうな顔をしている。



「どうしましょう? トニオさん、鰐の仮面だけでも返却してくれるでしょうか?」


「ニャーン。トニオもニャーに負けず劣らずの商人ニャからねー。頼めば返してはくれそうニャけど、きっとチャンスとばかりに吹っ掛けられるニャ。商品を持ち込んでいるニャーの方が、その商品で逆にお金を搾り取られるのは、結構屈辱的ニャ」



 バーンさんが頭をポリポリと掻くと、ニャーと肩を叩く。



「頼むよ、ミャオ。あの仮面は回収しなきゃならん」



 回収しなきゃっていうのが、気になる。



「もしかして、あの仮面……呪いのアイテムとかそう言うのだったかニャ?」


「うーーん、まあそんなところだ。まあ兎に角そのトニオ・グラシアーノという商人から、返却もしくは買い戻して欲しい。その費用と、お前が仮面を売った代金には、色をつけてやる位の事はできるからさ。なんなら、俺達も同行しよう。その商人のもとへは今から行くんだろ?」


「解ったニャ、解ったニャ! でもニャーンさんまでついてくるとなんだか物々しいニャ。鰐の仮面の事は、ニャーからトニオに話して返却してもらうニャ」


「そうか。それじゃ俺は、このブレッドの街の冒険者ギルドか酒場かのどちらかで吉報を期待して待ってるからよ。無事、ブツを手に入れたら来てくれ」


「解ったニャー」



 クウとシェリーと顔を見合わせる。面倒な事にはなったけど、仕方がない。トニオ・グラシアーノのもとへ向かおうとした。すると、何か思い出した風な感じでバーンさんにまた呼び止められた。



「おっと、そうだったそうだった! 一つ言っておかなくちゃな」


「ニャンニャンニャ?」


「鰐の仮面、手に入れたら直ぐに持ってきてくれ」


「だから解ってるニャー! しつこいニャよ」


「解ってるなら、いいんだがな……その鰐の仮面、呪われているからな。手に入れても、決して被ったりするなよ。いいな」


「解ったニャー」


「シェリーもよろしく頼む。しっかりと、ミャオとクウの護衛をしてやってくれ」


「ああ」



 それでも何やら心配そうな顔を続けるバーンさん。でもニャーがやりにくいと言ったので、バーンさんは一緒にいる他の3人の男達と一緒に、この街の冒険者ギルドの方へ歩いて行った。


 クウがニャーの顔を見る。



「それじゃ、行きましょう。そろそろお昼になりますけど、バーンさんの要件もあるしさっさと商談を終えてしまった方がいいと思います」


「確かにクウの言う通りだニャ。それじゃ、トニオの家に行くニャ」


「お店ではなくてですか?」


「トニオ曰く、今日は店の方は雇っている従業員に任せているって言ってたニャ。だから今日は、家の方へ押しかけるニャ」



 トニオ・グラシアーノ。ブレッドの街の商人。なかなかのやり手で、ニャーよりも儲けている。それで去年に、貯めに貯めた財産でこのブレッドの街の直ぐ外れに屋敷を購入したという。そこに、彼は住んでいる。


 ニャー達は、相変わらずの曇り空、霧が立ち込める中トニオ・グラシアーノの屋敷へと向かった。



「クウ、ちょっと怯えてないかニャ。大丈夫かニャ?」


「え? だ、だって、こんなに霧がでているんですよ。視界も悪いですし、大丈夫だと解っていても、霧の中からいきなり魔物とか恐ろしいものが飛び出してくるかもしれないとか……気が付いたらミャオもシェリーさんもいなくなっていて、私一人になってしまっているかもしれないとか……そんな事を考えてしまいます」


「ニャッハッハッハ! クウは、可愛いニャね。そして、想像力が豊かだニャ」


「だ、だって!! ミャオは怖くないんですか? シェリーさんも!」


「アタシは冒険者だ。この手のシチュエーションには慣れている。だが確かにこれ程霧がずっと立ち込めているっていう地域も珍しいし、不気味に感じるな」


「普段はもっといい感じの街ニャよ、ブレッドの街は。霧に包まれるのは、時々だそうだニャ。それにこの霧の発生する環境でないと、美味しくならない種類の珈琲豆も近くで栽培しているらしいから、なるべくしてなっている環境ニャンニャよ」


「そ、そうなんですか……でも、やっぱりちょっと怖いかもです。ルン……アテナ達は、大丈夫でしょうか?」


「ニャハハ。それこそ大丈夫ニャ。アテニャとマリンがいれば、ルンやルキアの事は全く心配ないニャ。それに何かあっても街には、ニャーンさんやルシエル達もいるニャからね」



 そう言うとクウは、納得した。でも、やっぱり立ち込める霧の中を歩くのは怖いみたいなので、クウの手をそっと握って歩いてあげた。

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