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第538話 『ミャオの取引、二日目』 (▼ミャオpart)



 ニャニャッ!!


 ブレッドの街、二日目。


 今日は早朝からアテニャ達は、キャンプに行くと言っていたが……アテニャ達が泊っている部屋を尋ねると、もう既にいなくなっていた。ルンもいないので、さっさと行ってしまったのだろう。


 もしかしたら、ちょっとニャーも一緒に行きたかったかもーって気持ちが徐々に湧いてくる。でもダメだった。


 久しぶりにアテニャやルシエル、マリンに会えた事は嬉しい事だけど、ニャーには果たさねばならない仕事があるのだ。


 ――リッチー・リッチモンドから買い取った、曰く付きの商品の数々。


 とりあえず、幸先は良好。このブレッドの街で商売をしている商人仲間がいて、こういう品物でも買い取ってくれるとは思ってはいたけど、かなり高値で取引する事ができた。


 品は既に納品済み。あとは、取引に関する証書を交わして代金をお支払い頂くだけ。煙草や酒などの嗜好品もあったし魔石もあった。曰く付きというだけで、手を出さないエスカルテの街の商人は、本当におバカさんだと思った。ニャハハノニャーー。


 取引先に向かうのに、身だしなみを整えて外出の準備をしていると、部屋を誰かがノックした。



「ニャーー。入っていいニャー」



 ガチャッ



 ドアが開く。三角の可愛い耳が見える。それで、クウだと解った。



「もう用意ができたニャ。それじゃ、行くかニャ」


「は、はい」



 姿を現すクウ。なんとなく恥ずかしそうにするクウの服装は、昨日とは打って変わって物凄く可愛らしい感じになっていた。


 長い髪も今日はそれに合わせて結っている。例えるなら、それなりに裕福な家の娘さんって感じ。



「ニャーー!! 凄く似合っているニャ、クウ!! 可愛いニャンニャ!!」


「ありがとうございます。ミャオが私の為に選んで買ってくれたものだから、早速着てみました」



 そう。昨日、この街でクウに買ってあげた服だった。本心はきっと、クウもルンと同じくアテニャについていって一緒にご飯を食べたり買い物したり、キャンプをしたかったに違いない。マリンもそっちに行ってしまったし。


 だけどクウは、我慢してニャーのお仕事の方へついてきた。しかも仕事を学ぼうと、とても頑張っている。


 だからお仕事の合間に、折角ブレッドの街へきたのだから、ちょっとブティックを覗いて服を買ってもらうなんて事は、当然あってもいい事だと思った。それ位のご褒美が無いと、ニャーなら我慢ならない。きっと、しおしおーってなる。しおしおーーって。



「うんうん、本当に似合っているニャ。今度それで、ニャーンさんに会ってみるニャ。きっとクウの事、可愛い可愛い言うて色々と散財してくれるニャよ」


「そ、そんな……そんなことあるわけないですよ」



 頬を赤らめて照れる仕草が、余計にクウの可愛らしさを引き立てていると思った。これなら、おじさん達はきっとメロメロ。


 ニャハハ。このクウの可愛らしさを上手く使えば、商売にも大きく利用できるかもしれないとニャーの頭の中で、小さいニャーがそう囁いていた。


 階段を降り、1階へ移動するとロビーにあるソファーで既に退屈そうにシェリー・ステラが座って待っていた。ニャーとクウはシェリーに挨拶する。



「今日もまた行くんだろ?」


「そうニャ。行くニャよー。でもシェリーも本当に良かったのかニャ?」


「良かったとはなんだ?」


「ルンやアテニャ達とキャンプに行きたかったんじゃないのかニャ」


「なんでアタシがキャンプに行きたがる? アタシはキャンパーではないし、先に言ったが子供は嫌いだ。もう一つ言うと、アタシの仕事はミャオ達の護衛だからな。業務放棄して遊んでいたら、バーンさんに何て言われるか」


「そうニャった、そうニャった。シェリーは、真面目ニャンねー」


「真面目じゃない! 当たり前の事を、当たり前にしているだけだ」



 会話をしながら宿を出る。すると、昨日と同じく辺りには霧が発生していた。空も相変わらずの曇り空。アテニャの事だから心配はないけど、でもキャンプしに街を出ているのでやっぱり少し心配になった。


 霧に包まれたブレッドの街。あちらこちらから、珈琲やパンの焼く匂いが漂って来る。


 今日はこれから昨日伺った知り合いの店に行くつもりだけど、ちょっとその前に――少し、ルートを変えてたまたま目に付いたお店に入った。戸惑うクウに、おいでおいでする。シェリーは一言、「朝飯か」と呟いた。



「いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ」


「クウ、シェリー。あそこの席にするニャ」



 ブレッドの街のお店は、何処も洒落ていて上品な感じがする。しかもいいのは、上品は上品でも高級店は少なくて基本的には、庶民的で上品且つお洒落なお店という所。この街はそういうお店で溢れている。


 メニューを取ると、3人で仲良く寄り集まって眺めた。ふむふむ。ここは、トーストメニューが豊富なのか。



「二人とも決まったかニャ?」


「アタシは、普通にトーストとサラダにゆで卵……それと珈琲かな」


「わ、私も朝は軽い方がいいので、それにしようかな。あんまりお腹がいっぱいになっても、動くのが大変になってしまいますし」


「ニャー。ここは、経費という事でニャーが支払うからなんでもいいニャンニャよ。ニャーは、これにするニャ。すいませーーーんニャ」


「はい、ご注文はお決まりですか?」


「そうニャね。トーストとサラダ、それとゆで卵と珈琲ニャ。珈琲はホットニャ」


「って、アタシ達と一緒じゃねーか!!」



 物凄いスピードでシェリーが突っ込んできた。ニャハハと笑いながらも、メニューの文字に目が留まる。



「この厚切りトーストってニャンニャ! すいません、トーストをこの特性厚切りトーストに変えてもらえますかニャ」



 すると、シェリーとクウも慌ててメニューを見直し始めた。



「じゃ、じゃあアタシもそれで」


「わ、私もそれでお願いします」



 結局、3人一緒じゃん! って思った。

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