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第525話 『コナリーさんとのキャンプ、始まる! その2』



「おーー、おーー。ハハハハ、何とも大勢で来たね」



 喫茶店の前まで行くと、既にコナリーさんが待っていてそう言った。なんだか、とても嬉しそう。まるで首を長くして孫を待っていたみたい、フフフフ。



「えっと……ルキアとルンとカルビは、もうご存知かと思いますが――今日は、マリンとクロエも一緒によろしくお願いします」


『よろしくお願いしまーす』



 皆で揃ってコナリーさんに頭を下げる。ただ、ルンは私の背中におぶさっていて、また寝そうになっている。マリンも目を瞑ったままだし、なんだか口もムニャムニャさせている。



「はっはっは、こちらこそよろしくお願いします」


「も、もう来ちゃっているんですけど、迷惑はおかけしませんから……」


「迷惑だなんて、とんでもない。こんなに可愛い子達と今日は一緒にキャンプをできるなんて夢のようだよ。妻はキャンプはあんまりなのだが、こんなに可愛らしいお嬢さんたちが勢ぞろいするって知っていたら無理してでも来たかもしれないな。はっはっは。」



 コナリーさんは、にこにこと笑ってそう言ってくれた。本当にいい人だ。



「それはそうと、クロエちゃんもアテナちゃん達とお友達だったんだね。お母さんは君が今日、私と一緒にブレッドの街を出てキャンプしに行くことを知っているのかね?」



 クロエは、小さな声でコナリーさんに答えた。



「は、はい。ちゃんと知っています! コナリーさんの事は……伝え忘れてしまいましたが、アテナさん達と一緒に行くことは伝えて承諾をもらっています! アテナさんがAランク冒険者なので安全だって言ったら、いいって……」


「ふむ、そうか。それなら、大丈夫だろう」



 コナリーさんは、口の周りに蓄えた白い髭を片手で触ると、納得してそう言った。


 しかし人の事は言えないけれど、コナリーさんも物凄い大きな荷物を背負っている。一泊するだけのキャンプなのだけれど、私達の為に色々と準備してくれているのかもしれない。



「それじゃ、皆そろそろ行こうか。私についてきてくれ。今日も天気は曇っていて、また雨が降るかもしれん。それに、街にいてもこの霧だ。キャンプしに行こうと思っている場所は、もっと霧が濃いかもしれない。街の外は魔物も生息しているし、くれぐれも注意しながら私から離れずに向かうんだよ」


『はーーーい』



 コナリーさんの言葉に皆、揃って返事をする。魔物が出たとしても私とマリンがいれば、どうって事ない。もちろん油断はいけないけれど、何とかなると思った。それに……ちょっと霧の中を皆で歩くって、そんな経験あまり無いからドキドキする。



「あの、アテナ……」


「なに、ルキア」


「ルンなんですけど、私がおぶりますので、変わってもらってもいいですか?」



 うーーん。本当にルキアの気の使いようは尋常では無い。とても9歳とは思えない、気遣いと真面目さ。このルキアの成分の少しでも、ルシエルに注がれればなあーって思う。



「いいのいいの。ルンは、私が背負っていくしぜんぜん重くないし。それに、ほら。ルンを背負っているとちょっと背中が温かいしね」


「あはは、それはそうかもしれませんね。ルンってなんだか体温が高いですからね」


「ねー。だから、ルキアはクロエの手をちゃんと握って誘導してあげてくれる? カルビも見てくれているけど、ルキアにもお願いしておけば尚更安心だから」


「は、はい。解りました」



 ルキアはそう言うと、クロエの隣にピタリと張り付き、「手をつないでもいいですか?」と声をかけて彼女の手を握った。


 ルキアの小さな可愛らしい手は、クロエに同年代位の女の子だと知らせる方法にもなりえた。クロエの顔に、少し笑顔が灯る。



「あ、ありがとうございます。ルキアさん」


「いえいえ、凄い霧が出てますからね。こうして手を繋いでいないと、私も迷子になってしまいそうなので」


「き、霧が出ているんですか?」


「はい。結構、凄い霧ですよ。少し先が見えない位です」


「そ、それでなんとなく空気が湿っているような感じがしていたんだ……ルキアさんは、そんなに霧が出ている日に、街の外に出てキャンプをするなんて怖いと思わないですか?」


「え? はい。思わないです!」


「手を握った感じ、ルキアさんは私と同じ位の歳のような気がするんですけど、もしかして物凄く強いんですか? 冒険者と言っていましたし」


「いえ、強くないですよ。Fランク冒険者ですし。でも、アテナがいるから何も怖くないんです」


「ア、アテナさん……」


「アテナは私を救い出してくれたんですよ。アテナは物凄く強くてそれで、優しくて……私、妹が一人いるんですけど、姉がいるとすればアテナのような……」



 可愛い二人の会話に癒されようと耳を傾けていたけれど、凄く恥ずかしくなってきたので私は、少し歩く速度を上げて先頭を行くコナリーさんの横に並んだ。


 クロエには、ルキアとカルビがついてるし、その後ろにはマリンがついてきているので安心だと思った。そして、コナリーさんに話しかけた。



「今日は私達をキャンプに連れて来てくださってありがとうございます。折角なので今日は、コナリーさんから色々と学ばせて頂こうと思います」


「はっはっは。それは、こっちのセリフだよ。私はキャンプが趣味だと言ったがね、いつも一人ソロキャンプだ。それも気楽でいいと思っているが、たまにはこうして大勢でっていうのも、楽しいだろうと思っていた。……つまり、その機会を君達があたえてくれたという事だ。ありがとう」



 ありがとうという言葉は、簡単に口にできそうでそうでなかったりもする。言えない人は、言えない。


 今日、明日とコナリーさんと一緒にキャンプをする訳だけど、どうにか美味しい珈琲の入れ方を伝授してもらえないかなと欲が湧いてきた。

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