表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
523/1354

第523話 『宿のシャワー室にて』



 宿に入ると、ロビーのソファーでミャオが転がって待っていた。寝息。私は彼女に近づいて、マリンに負けない位に見事なミャオの鼻提灯に、そっと指を突き刺して割った。



 パチンッ


「ハニャーーッ!! な、何事ニャニャニャ!!」



 ミャオが飛び起きた。その声を聞いて、クロエはビクっとした。因みにマリンも、独特な変な笑い方をしている。



「プフーーーー!」


「ウフフ、起きたミャオ? 待っててくれたんだ」


「そうニャ。待ってたニャー。明日の予定をちゃんと聞いておこうと思ってニャ。それで……それで、この子はニャンニャンニャ?」



 ミャオの独特な喋り方に、戸惑いを見せるクロエ。私は彼女にも解るように、ミャオに経緯を説明した。



「ニャーるほど。それで、明日は早朝からキャンプニャー」


「ミャオはどうするの? また商談?」


「そうニャ。あのリッチー・リッチモンドから買い取った品物、全て高値で売れそうニャ。それでもう少し粘れば、値をもう少し釣り上げられそうだったからニャ。頑張ってるんニャ」


「へえ、そうなんだ。ルシエルとノエルは、どうなんだろ?」


「二人はもう飲み潰れて眠っているからニャー。そう言えば、明日もこの街で滞在するなら、気になるお店がまだあるから食べ歩くって言ってたニャ。因みにクウとシェリーは、ニャーとまた一緒にお仕事の続きニャ」



 なるほど、それなら明日のキャンプは、私とルキアとルンとマリン。そしてクロエとコナリーさんで楽しむという事か。ふんふん、それはそれでまたいいかもしれない。いつもとは一風変わったメンツだし。



「それじゃ、ミャオ。ここの宿代は全額私が出すから、明後日まで宿泊(しゅくはく)って事で部屋をとってもいいかな? まあ明日は、キャンプして帰りは明後日になるんだけどね。一応そうしておいた方が、何かあった時にも拠点になって困らなくていいかなって思って」


「ニャー。それはいい考えニャ。それなら今回は、アテニャにあまえさせてもらって、宿代をゴチになるニャ。ゴチですニャ。それと明日は早いんニャ? ビショビショのままだと風邪を引いてキャンプどころじゃなくなるニャよ。さっさとシャワーを浴びて明日に備えて寝るニャ」


「うん、ありがとうミャオ。じゃあ、ルシエルとノエルが起きたら、キャンプに行く事と明後日戻るって伝えておいてくれる?」


「お安いご用だニャ。任せるニャ」



 ミャオと予定を話し終えると、私はクロエの手を引いて宿の二階へ上がり自分の部屋に入った。部屋に入る所でマリンと別れる。



「それじゃ、ボクもシャワーを浴びて、明日に備えて早々に寝る事にするよ」


「うん、それじゃまた明日ね」


「うん、お休み」


「お休みーーー」


 ワウッ



 すると、私とカルビに続いてクロエもマリンに言葉を発した。それは、聞き取れない位の大きさの声だったけど、マリンにはしっかりと聞こえていた。



「お休みなさい、マリンさん」


「うむ。お休みなさい」



 マリンなりに、ウケを狙ったのか偉そうに「うむ」とか言ってて笑ってしまった。部屋のドアを開くと、まずカルビがスルスルっと中に入り込んだ。クロエにもそれが解ったようで、はっとする。カルビを追いかけようとしたクロエに話しかけた。



「クロエって呼んでいい?」


「は、はい」



 緊張しているのが解る。



「それじゃ、クロエ。一緒にシャワーを浴びましょう。服もビショビショだしね」



 そう言えば、クロエの着替えを持ってくるのを忘れてしまった。下着は、今洗って乾かしておけば明日にはなんとか……服は……背丈はルキアとほぼ同じくらいだから、明日起きたらルキアに借りればいいかと思った。



「それじゃ、こっちに来てクロエ。カルビもね」



 濡れたままベッドに飛び乗ろうとしたカルビに「駄目よ」と言って釘をさす。そして、クロエとカルビを連れてシャワー室に入り、湯を浴びた。


 クロエの身体は玉のように綺麗で、雪のように白かった。だけどルキアに比べて痩せ細っている。


 明らかに緊張しているクロエに、私はシャワー室で逃げ惑うカルビを捕まえて彼女に抱きかかえさせた。すると、クロエはカルビを抱きしめて、少し安心した表情を見せた。この子は本当に、カルビの事が好きなんだな。



「グーレス……」


 ワウッ



 クロエは、カルビの事をグーレスと呼んでいた。カルビという名前があるのをもう知っているはずなのに……だけど、私はあえて訂正するような事はしなかった。


 クロエがカルビに気を取られている間に、私は彼女の身体を洗い頭を洗ってあげた。



「フフフ。お客様、何処かお痒い所はございませんか?」


「ええ、とっても気持ちいいです。何時(いつ)も身体を洗う時は、水ですし……母が洗ってくれるんですけど、大変なので一週間に一度って決まっているので。だから、とても気持ちいいです」



 一週間に1回、水で身体を洗うだけ。


 冒険者をしていると、身体を洗うのに川に飛び込んだり湖で水浴びしたりはする。だけど年頃のこんなに可愛い女の子が、一週間に一度しか身体を洗えないのは、とても可哀そうだなと思った。


 私だったら、可能なら毎日お風呂に入って身体を隅々まで洗って清潔にはしておきたい。


 私は冒険者なので、魔物の返り血を浴びる事もある。人と会う事もしばしばだし、衛生管理に勤める事で病気にもかかりにくい。身体を清潔にしておくという事は、やっておいて損のない事ばかりなのだ。


 身体を隅々まで洗い終えると、タオルでクロエの身体を隅々まで拭いた。クロエは恥ずかしそうにしていたけど、私もカルビもスッポンポンだからと言ったら笑ってくれた。


 とりあえず裸のままだと風邪を引きそうなので、クロエには毛布を羽織らせてベッドで横にならせた。そして、その胸元にカルビを潜らせると、今日一日色々な事があったからか、クロエはカルビを抱きしめたまま直ぐに可愛い寝息を立てて眠りについた。


 私は、暫くクロエとカルビの寝顔を眺めていると、眠くなってきたので髪の毛を綺麗に拭いて、少しぼーーっとする。


 そしてクロエとカルビが気持ち良さそうに眠っているベッドにモゾモゾと入って、一緒に眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] アテナはクロエをどうする気なんだろう? [一言] クロエの目が見えるようになるといいなぁ んで毒親達から引き離せるとベスト
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ