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第509話 『発見! ゴロツキシスターズ』




 コーヒーサーバーとドリッパーは、ルキアが選んでくれた。それと、ルンとルキアと私のそれぞれで見つけたお気に入りコーヒーカップ。


 お会計は私がまとめて支払った。すると、ルキアが自分とルンの分も払うと言ってきたので、大丈夫だからと言って説得した。説得の決め手は「王女だから、こう見えて王女だから」と言い放った事。


 それを目の当たりにしていたアンは、冗談を言っていると笑っていた。そして当の私自身もこういう光景は、よく飲食店とかで「私がだすから、私がだすからーー」って押し問答している人をたまに見かけるけど、自分達もそれに似ているなと思って笑ってしまった。



「ありがとうございました。また、いらしてくださいね」


「うん。ルン、きっとまた来るよ! またねーー」



 ルンが、笑顔で返事をする。それを見てアンがまた微笑んだ。


 お目当ての買い物も終わり、お店を出ると今度はそろそろ夕ご飯の時間だな思った。何か美味しい料理を食べようと、飲食店を探して見て回る。



「ねえ、アテナ、ルキア! あのお店――とてもいいにおいがするんだけど! 凄く美味しそうなにおい!!」


「えー、どこどこ?」



 ルンの指す方向、そこにはなんだか明るい感じのお店があった。釜土という文字がお店の入口に表記されている。



「なんのお店ですかね?」


「ちょっと待って、メニューが張り出しているから読んでみるね。えーーと……」



 ルンが私のスカートの裾を引っ張る。



「ねえ、なんて書いてあるの? なんて書いてあるの? ルン、まだ文字読めないから読んでみて」


「はいはい、ちょっと待って。えっと……わああっ! ここ、ピザを出しているお店みたいよ!!」


『ピザ?』



 ルキアとルンが、同時に可愛らしく首を傾げた。


 そう言えば、王都でもピザを出すお店は数少ない。ピザを作る為にはピザを焼く釜土がいるし、それを出すお店を作るなら当然釜土を作らないといけない。


 ピザを焼く釜土って拘りとか凄くありそうだし……だからそれを作る技術を持っている職人も必要だし、はたしてエスカルテの街でピザを出しているお店があったかと聞かれると、見たことがないかもしれない。


 ううーーん、食べたい! ピザが凄く食べたくなってきた!



「まあ、入って食べてみれば解るよ。凄く美味しいんだから、ピザ!」


「そ、そうなんですか! 私、ピザが食べてみたいです! 今晩のご飯、ここで食べてもいいですか?」


「もっちろーん。それなら、ここもお姉さんがご馳走するから二人とも遠慮しないで食べてね」



 飛び跳ねて喜ぶルキアとルン。その騒ぎに店の中から店員が顔を出したので、「3名でお願いします」と伝えた。


 こちらへどうぞと店員が言い、中へ入ろうとした所でルンが咄嗟に何かに気づいて向かいの建物の横、路地を指さして大声で言った。



「あ! あれ見て、アテナ!!」


「え? どうしたの、ルン。何かあった?」



 見ると建物と建物の間の路地、そこに何かの屋台がある。


 屋台からは何やら湯気が立ち昇っている。のれん。6つほど並んでいる椅子の全てには、お客さんが座っていて客層は、後姿からの印象だけど冒険者や言っちゃ悪いかもしれないけれど、ゴロツキのような見た目の人達が楽しそうに食事をしながらお酒を飲んでいた。


 ルンが指をさしたのは、その並んで座る客の中にいる二人。その後姿から、確実にそれがどこかのハイエルフとハーフドワーフだと解った。ハイエルフは、あの立派な弓を背負っているし、その相方のハーフドワーフは大きなバトルアックスを背負っている。


 あっ! 隣のゴロツキに、お尻を触られた。ハーフドワーフの少女は、そのセクハラをしたゴロツキに殴り掛かる。止めに入る他の客と、大笑いしているハイエルフ。



「アテナ、あの二人ってルシエ……」


「はいはーーい、もう私お腹ペッコペコ! ルンとルキアもそうだよね! さあ、お店の中に入ろう!!」


「え、でも……」


「いいからいいから」



 まったくもう、あのゴロツキシスターズは……ルキアはもう慣れてるかもだけど、ルンの教育上良くないと思った私は、二人を無理やり店に押し込んだ。


 店内はとても明るくて綺麗なお店だった。そして、なんとなく陽気な感じ。カウンターとテーブル席があり、私達3人はテーブルの方に座った。


 カウンターの奥には厨房があり、一部吹き抜けになっていて客席からでもピザを焼く釜土が見えていた。それに気づいたルキアとルンは、目を丸くしてまじまじと見つめている。


 できる事なら、クウも連れてきてあげたかったな。でもクウの方にはミャオがいるし、きっとそっちはそっちでいいものを食べさせてもらっているだろうと思った。



「それじゃあ何にする? ここにメニューがるから、食べたいピザと飲み物を選んで。あと、ポテトとサラダも注文しようか」


「はい、それじゃあ私は……えっと……マルガリータ? これってなんですか?」


「アハハ、マルガリータって女の人の名前みたーーい!」


「マルゲリータね。私の大好きなピザなんだけど、モッツァレラチーズとバジルがたっぷりと乗っているピザなんだよ。私これにしようかなー? すいません、いいですかー?」


「少々お待ちください。……はい、ご注文お決まりでしょうか?」



 店員さんが来ると、私は早速マルゲリータピザとアイスティーを注文した。



「そ、それじゃあ私はこのシーフードピザとアイスティーにします。ルンは、何にする?」


「ルンは、さっき外でルシエルとノエルが食べていた食べ物のピザが食べたい」


「え? ルン、それはちょっと」


「大丈夫よ、ルキア。それじゃあ、照り焼きチキンのピザとオレンジジュースください。それと、一番大きなサイズでクワトロピザを一つとポテト、あとこのシャキッとシャキシャキシャカリキ贅沢サラダをお願いします」


「かしこまりました」



 店員がオーダーを通すと、早速ルキアが聞いてきた。



「なぜ、ルンのピザを照り焼きチキンにしたんですか? それと、クワトロってなんですか?」


「フフフ。さっきルシエルとノエルが屋台で食べていた食べ物は、焼き鳥っていって鶏肉を食べやすいサイズにカットして、串に刺して焼いて食べる料理だったから。だから、チキンかなって思って。あと、クワトロっていうのは4って意味で、クワトロピザっていうのはピザ一枚を4等分にしてそれぞれ4種類のピザになっているメニューなのよ」


「つまり、1枚で4種類味わえるんですね。す、凄いです! アテナは本当に色々と知っているんですね」


「アハハ。色々美味しいものを探したりしていると、いつのまにか詳しくなっていたってだけだよ」



 ルキアに食いしん坊ですねって言われなくてよかったと思った。ルシエルがここにいたら、絶対そういう風に言ってくるに違いない。


 そんなこんな思っていると、私達のテーブルに続々とオーダーした料理が運ばれてきた。

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