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第507話 『コーヒーショップ その1』




 コナリーさん夫婦の営む喫茶店を出ると、私達はまたブレッドの街を散歩する感じで、ルキアやルンとてくてくと歩いた。


 ノクタームエルドに入った時に、ロッキーズポイントで偶然再会した行商人モルト・クオーンから購入した腕時計。


 いつでも時間が解れば便利だなって思っていたけれど、実際に使ってみると想像を遥かに飛び越えて便利だった。今はもう、腕時計が無いと困ってしまう。


 確認すると、時計の針は15時過ぎを回った所。まだ晩御飯というのにも少し時間がある。


 ルキアと私の手を、一緒に握る為に間に割り込んできたルンが言った。



「ケーキ美味しかったね! また行きたいね!」


「そうだね、美味しかったね。是非また行こう!」


「うん! それで、今度は何処に行くの?」



 ふーーむ。どうしようか……


 あれ?


 ふと見ると、カルビの姿が消えていた。店を出るまでは、ルンと一緒にいたはずなんだけど……



「ルキア、ルン。カルビがいないんだけど、何処へ行ったか知らない?」



 キョロキョロと周囲を見渡した後に、首を横へ降る二人。



「知らなーーい。お店出る時まではルンと一緒にいたけど、気が付いたらいなくなってたんだよ」


「そう言えばどうですね。何処か行っちゃったみたいですね。どうしましょう? 探しますか?」


「うーーん、そうねー」



 このブレッドの街は、私もそれなりに知っている。喫茶店の多い街で、別名喫茶の街とも呼ばれていて、そういう珈琲とか紅茶とか好むおおらかな人達が住んでいる街。治安もそれなりにいいし、カルビが街内を徘徊しているのだとすれば、それ程心配はないのかもしれない。


 それに……


 ふとルシエルとノエルの事が頭に浮かんだ。あの二人は、絶対にこの街でグルメツアーを開催しているはず。もしかしたら、マリンも今頃はあの二人に合流しているかもしれない。


 私達が気づかないうちに、この近くをルシエル達が通ったので、カルビはそれを見つけてつられて行った……っていうのも考えられるのかもしれないと思った。



「まあ、もしかしたらルシエル達を見つけたのかもしれないし、この街はそれ程治安も悪くない街だから大丈夫だよきっと。もし、夜になって宿で合流する時にカルビがいなかったら、私とルシエルで探しに行くから、特に心配しなくていいんじゃないかな」


「そ、そうですかね」


「うん、カルビだってたまには一人になりたい時もあるかもしれないしね。まあ、様子を見ましょう」


「は、はい」


「それはそうと、あそこ」



 そう言って私はあるお店を見て指をさした。ルキアとルンがそれを見て声をあげる。



「わーーー!! なんか面白そうなお店!! なんなの、あれ何のお店?」


「あれは、コーヒーショップですね。アテナの事だからキャンプ用品とかアウトドア専門店とか、そういう物が売られている専門店や雑貨屋さんを覗きたいと思っていましたが」


「フッフーーン。ルキアはそう思ったでしょー。でも今は、コーヒーショップを見たいの! 折角コナリーさんに無理言って一緒にキャンプしてもらって、珈琲の入れ方を教わるんだもん。こんなチャンスなかなかないかもしれないからね。だから、ちゃんと珈琲をドリップする道具を買っておこうかなって思って」


「なるほど、そういう事ですか。それなら私も是非一緒に習いたいので、珈琲を入れる為に必要な道具を購入したいです」


「だよねーー! でも、あの陶器のドリッパーやガラスサーバーは高そうだし、専用ポットもそうだし嵩張るから、それは1セットだけ購入して一緒に使おうよ! マイカップは、それぞれで選びたいけれどね」


「はい! 考えると凄く楽しくなってきました!!」


「ルンは? ルンはーー?」


「ルンもマイカップは、ルンが自分で選ぶんだよ」



 テンションが上がりまくってルキアと、ハッスルしているとルンが不安な顔をしたので、ルキアがにこりと笑ってあやした。本当に、ルン達といる時のルキアは、ちゃんとお姉さんをしている。



「ルンはまだ小さいから、珈琲を入れる為のセットは、もう少し大きくなったらにしようね。そうしたら、私がルンに珈琲を落とせる道具をプレゼントするから」


「はいはーい。私も私も! 私とルキアで素敵なのを選ぶからね。でもさっきルキアが言ったけど、今日はルンにも可愛いコーヒーカップを見つけて買ってあげるからね。一緒に素敵なのを探そうよ」


「わーーー!! やったーー!! ありがとう、アテナ、ルキア!!」



 にっこにこのご機嫌のルン。仲良く手を繋ぎ、いざお店の中へ。


 カランカランッ


 今日は空がずっと曇っていてすっきりしないお天気で、いつまた雨が降るかもっていう感じだからなのかもしれないけれど、街の通りにもあまり通行人がいなかった。


 コナリーさんの喫茶店もそうだったけど、ここのお店もお客さんはいない。でも営業中の看板は出ていた。人がいないのはちょっと寂しいけれど、貸し切りみたいな感じで、落ち着いて商品を見る事ができるのは素直にいいなと思った。


 お店の中は、棚やショーケースなどがあり色々な珈琲を入れる為の道具やコーヒカップ、ポットなどが沢山陳列していた。それはどれもお洒落で、私達は目を奪われた。



「いらっしゃいませーー」



 きょろきょろと商品を見ていると、直ぐにお店の奥から店員さんが顔をだした。黒髪ポニーテール、眼鏡をかけたお姉さんだった。



「何かお探しですかー?」


「いやーー、ちょっと珈琲を入れる為の道具を……」



 店員のお姉さんに色々アドバイスをもらいながら、選んでみようと思った所でルンが先走って答えた。



「ルン達、テレサさんの喫茶店ってお店に行ってきたんだよ!! それでね、明日キャンプして珈琲を落とすのーー!」


「あっ、ルン。そんな事をいきなり店員さんに言っても……」


「キャンプ? テレサさんの喫茶店? ああ、なるほど。コナリーさんのお店に行ってこられたんですね。あそこは、このブレッドの街でも3本の指に入る人気店ですからね。因みに私の中では一押しです、フフフフ。それで、キャンプって……そういえばショーンさんは、キャンプのご趣味があったような……もしかしてショーンさんとキャンプに行って、珈琲を入れて飲まれたりする予定なんですか? それで、このお店にその為の道具を買いにこられたんですね!」



 黒髪ポニーテール、眼鏡のお姉さんはそう言ってルンの頭を撫でると私とルキアの手を握った。



「それならうちには、珈琲を入れる為のいい商品が沢山ありますよー。どうぞどうぞ見ていって下さい」



 凄く助かるけど、とんでもなく理解の速いお姉さんだなって思わず笑ってしまった。


 あときもーちだけど、少しミャオに感じが似ているかも。商売をしている人は、皆こんな感じなのかな。

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