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第486話 『爆裂盗賊団の最後』




「ここがお前の死に場所だ。もしくは、大人しく私に逮捕されて、これまでの罪を償うか――選ばせてやろう、『爆裂盗賊団』頭領ダッガン・デッカドー」


「ぐぬぬぬ!! ローザ・ディフェイン!!」



 剣をダッガンの喉元に向ける。すると、ダッガンはつい先ほどまでリンチを加えていた旅人に向かって剣を振った。



「ぐはあっ!!」


「ひいいい!!」


「ダッガン!! これ以上罪を重ねてどうする!? 諦めろ!!」


「う、うるせーー!!」


「ぎゃあああ!!」



 追い詰められたダッガンは、次々に捕らえていた旅人を斬った。私はダッガンを止める為には、彼を斬るしかないと思い追い詰めたが、ダッガンは3人の旅人を斬り殺した後に残り一人を人質に取った。三日月刀(シミター)を人質の首に当てる。



「ひいい、助け……」


「黙れええ!! おい、これ以上俺様を追って来るな!! でないと、こいつも殺すぞ!!」


「やめろ、ダッガン。どちらにしろ、お前はここで終わりだ。この場でその旅人を殺しても、仮に逃げおおせたとしても私はこのままお前を野放しにはしない。目前で何の罪も無い人が3人も殺された。絶対にお前を裁くぞ」


「くそがああ!! 舐めやがって!!」


「よせ、ダッガン!! これ以上罪を重ねるな!!」


「くそくらえだ!! お前はまた、俺様を取り逃がすのさ、そしてまた俺様は自由にエンジョイライフだ。へへ」



 ダッガンはそう言って、躊躇いもなく人質の首に剣を突き立てた。血飛沫。



「ダッガン!! 貴様!!」



 叫んだ瞬間、ダッガンは人質にとっていた旅人を私に向かって投げつけると、続けて三日月刀(シミター)を投げてきた。それをかわし追い掛ける。



「ダッガン!! 待て!! 貴様、絶対に許さんぞ!!」


「ははーーー!! 捕まえられるものなら捕まえてみろってんだ!! どうせ、またお前は俺を取り逃がすのさ。へへ」



 ダッガンは、また逃げ切ってやるとばかりに勝ち誇った顔を私に見せると、背を見せ逃走しようとした。しかし、次の瞬間彼のその背に矢が突き立った。


 ダッガンは信じられないという顔をするとともに、前のめりに転がった。見ると、向こう側でボウガンを構えているセシリアの姿が見える。


 私は倒れているダッガンのもとへ近づくと、彼へ剣を向けた。



「いってえええ!! ちくしょー、もう一人隠れていやがったのか!! くそー、くそがーー!!」


「これまでだ、ダッガン」


「ちくしょー!! くそくそくそー!! っへ、解ったよ。こうなっちまったら降参だ。大人しくするよ。だからこの背に突き立った矢を抜いて治療してくれ。めちゃくちゃいてええ!!」



 ダッガンはそう言って、背に突き刺さるセシリアに射られた矢を見せた。


 周囲を見ると、私が斬り伏せたダッガンの子分共の死体に加えて、ダッガンとその子分がリンチをした挙句に、無情にも斬り殺した旅人達4人の死体が転がっていた。彼らは罪を犯したわけでもないのに、殺されてしまった。



「なあ、早く治療をしてくれ!! 回復ポーションかなんか持ってんだろ!! いてーよ!!」


「五月蠅い、黙れ!!」


「へ?」



 気が付くと、私はダッガンの首を斬り飛ばしていた。頬に血が飛んだ。セシリアが傍に来る。



「済んだかしら?」



 セシリアのセリフに私は笑ってしまった。なるほど、ルーニ様が誘拐された事件の時に陛下がなぜ王室メイドのセシリアを捜索に抜擢したか、その理由がやっと解った気がした。


 テトラは、戦闘力に優れているし忍び込んだりだとかそういうのも得意だという。しかしセシリアは、魔法を使える訳ではなく武術も全くできない普通のメイド……


 しかし、今のセリフで改めて普通のメイドではないのだと悟った。そう、只者ではない。



「ああ、済んだ。これでまた、追い詰めては取り逃がしてと苦汁をなめさせられると言った事に気を負わなくてすむ。ダッガン率いる爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)との決着が、やっとついた。もうこいつらによって、苦しめられる人もいない。ようやく晴れた気分だよ」


「そう? とても晴れているような顔には見えないけれど」



 捕らえられている人質を助ける事ができなかった。こんな仕事をしていると、こういう事は日常茶飯事に起きる。だが平然としていても、決して平気な訳ではない。



「それで、どうするの?」


「先を急いでいるのは解っているが、この殺されてしまった旅人達を埋葬してやりたい。手伝ってくれないか、セシリア」


「ええ、解ったわ。盗賊達も含めて20人も埋葬するのは、かなりの重労働だけれど。それも仕方がないわね」


「いや、旅人だけでいい。盗賊共の死体は、このまま討ち捨てていけばいい」



 頷くセシリア。


 私とセシリアは、爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)に殺されてしまった旅人4人を埋葬してあげた。


 草原には幸い柔らかそうな土の場所があったので、そこを掘って彼らを埋葬した。もちろんシャベルなんてものを持っている訳もないので、盗賊が持っていた剣などの武器をシャベル代わりにして掘った。


 再び歩き始める。私もセシリアも、手や顔に服など泥で汚れてしまったので川を探しながらトリケット村へと向かった。



「……手と顔を洗いたいわ」


「もう少しだ。もう少しで確か川があったはずだ。そこまで行ったら、今日はそこでキャンプを張ろう。水も手に入るしな」


「そうね。川があるのなら私もそれが一番いいと思うわ。でも、水があっても食べ物がないわね」



 リーティック村を出る時に、それは気づいていた。食糧の確保。しかし、村人たちは盗賊団に村を占拠されて、食糧や金品などあらゆるものを強奪されていた。だから、旅立つ時に食糧を用意して欲しいとは言い出しにくかった。


 今にして思えば、食糧位はライルやブレンダに言って調達させても良かったかもしれない。しかし今はそう思っても栓の無い事。


 ――草原。少し離れた所に影を見つける。それを指さしてセシリアに見せた。



「あれは、何かしら?」


「あれは、私達の今日の晩御飯だよ。狩って行こう」


「フフフ。すっかり、アテナ様みたいねローザ」


「それは私にとっては、この上ない誉め言葉だな。セシリアは狩りは得意か?」


「あまり得意ではないのだけれど、テトラと一緒に旅をするようになってキャンプは好きになったわ」


「そうか、それなら良かった。因みに狩りは得意ではないという事は、やろうと思えば一応できるという事だな」


「そういう事になるのかしらね」


「じゃあ早速獲物を狩るから、手伝ってくれ」



 そう言うとセシリアと一緒に、獲物に近づいて行った。気づかれないように――

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