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第485話 『討ち漏らし』



「それではお気をつけて」


「色々とありがとう、村長。それにライルとブレンダも心配してくれてありがとう」


「ローザ団長、くれぐれもお気をつけて」



 荷物をまとめ皆に別れを言うと、セシリアと二人リーティック村を後にした。


 現在メルクト共和国内は、多くの賊が跋扈し荒れている。街道を行くのは危険だと思い、私達は草原地帯を通りテトラ達が待つトリケット村を目指した。


 馬があればもっと早く到着するだろう。しかしライル達が乗って来た馬や、村にいた馬を借りる気にはなれなかった。用が済んだ後に、返しにこられるかも解らなかったからだ。


 それにトリケット村までは歩いてでも行ける距離だろうし、あれから何日か経過している。コルネウス執政官がそこにいるのであれば、テトラ達は今頃は執政官を見事に助け出しているに違いない。


 早く合流できればそれに越したことはないが、賊だらけになっているこの国では、あまり迂闊な行動をしないに越したことはないと思った。


 まあ、リーティック村に寄り道して『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』でもない盗賊団を退治している我々としては、思っている事とやっている事が矛盾していてどうかと思うけれど……



「ローザ、いいかしら」



 あれこれと考えながらも草原をひたすらに歩いていると、セシリアが声をかけてきた。



「なんだ? 歩きすぎて足が痛いのか?」


「いえ、別にそうじゃないわ。テトラ達がコルネウス執政官を救出する為に向かったトリケット村なのだけれど、あとどの位でつくのかしらと思って。ローザは、知っているのかしら?」



 昔、騎士団長だった父に同行してこのメルクト共和国までは来たことがあった。首都グーリエにも行った事がある。だからなんとなくだが、土地勘は少しあった。



「トリケットという村へ行った事はないが、その村の直ぐ隣にあるモロロント山という岩山は、遠目に見たことがある。だからそこまでのルートなら、この私についてくれば心配はないぞ」


「そう、それなら良かったわ。それで、距離はどのくらいなのかしら」


「そうだな……このまま徒歩で……今晩はキャンプして、明日の昼過ぎには到着できるだろう。何事にも巻き込まれないで、上手くいけばの話だがな」


「そう、だいたい解ったわ」



 私の部下達は、私の事をどう思っているのか知らないが、私はそれなりにお喋りはする方だと思っている。しかし、セシリア・ベルベット。彼女はどうなのだろう。コミュニケーションは、気にする方なのだろうか。さりげなくセシリアを、観察する。


 やはり、彼女はあまり必要以上の事を喋らないように見える。王宮で何度かあった事はあるが、彼女は国王陛下直轄のメイドで私は騎士団、会ったと言ってもろくな会話も無く何度かすれ違った位のものだった。


 今ならば、私の立場も国王陛下直轄なのだが……メイドと騎士団……畑が違いすぎるな。



「ローザ、あそこ」


「どうした? 何か見つけたか?」



 セシリアが指をさした方を見る。慌ててセシリアの肩を触って、体勢を低くするように合図した。



「うわああああ!! 助けてくれええええ!!」


「ウワッハッハッハ!! ほらほら、さっさと逃げろよ!! どんくせえオッサンだぜ!!」


「ぎゃああああ!!」



 4人の旅人が、盗賊達に囲まれている。盗賊達は、その旅人達をいたぶり、荷物を略奪しているように見えた。


 しかも見かけた顔だった。



「ローザ。あの盗賊……リーティック村を襲っていた盗賊団じゃないかしら」

 

「ああ、よく気づいたな。女盗賊団アスラと組んでいた爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)だ。頭目、ダッガン・デッカドーもいるな」


「どうするの? 見つからないようにして、先を急ぐ? それとも――」



 セシリアの質問に即答した。



「ケリをつけよう。目の前で良民が賊にいたぶられて、殺められるのを許してはおけないしな。それにローザの相方のテトラだって、この惨状を目にしたら放ってはおかないはずだ。セシリアだって同意見だろ?」


「私は別にどちらでもいいわ。目的はこの国を『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』から救うって事だから。でも、ローザがあの人達を助けたいというのなら、もちろん協力するわ。だって、テトラなら放ってはおかないと思うから」



 そう、テトラならそうする。アテナやルシエルだって、絶対にそうするだろう。ならば、私がどう行動するかなんて至極当然。



「解った、よろしく頼む。それでは、セシリアはここで身を低くしてボウガンを構えていてくれ。それで援護を頼む。敵はダッガンを含めて16人。上手くやれば、ここで全員を討伐できるだろう」


「解ったわ。でも、本当に斬り込むのはあなた一人で大丈夫なのかしら?」


「私は馬鹿じゃない。敵を知り、己を知っている。それにあのダッガン・デッカドーっていう賊は、我がクラインベルト王国でも何度か荒らし回っていてな、奴とは何度か戦った。それで何度も追い詰めたが、どういう訳かその度に逃げられてな。因縁があるんだ。だから、これでケリをつけたい」


「なるほど、そう言う事なのね。理解したわ。それじゃ、賊を討伐しましょう。くれぐれも気を付けて」



 セシリアの方を向きて、大丈夫だと笑みを見せたあと、できるだけ身を屈めて盗賊達に近づいていく。草が生い茂っている所から、移動し接近すると剣を抜いて盗賊に斬りかかった。



「な、なんだああ⁉ 何者だあああ!!」


「この悪逆非道を飽きもせず繰り返す賊どもめ!! クラインベルト王国の『青い薔薇の騎士団』団長ローザ・ディフェインがお前らクズ共を掃討してやるぞ!!」


「ひゃああああ!!」


「王国騎士団ローザ・ディフェインか!! お前らもうリーティック村から旅立ったんじゃ……」


「討ち漏らしがあったからな。私だけ残った。もちろんお前らクズを成敗する為だ」


「くそー、えええい!! それならここで返り討ちにしてくれるわ!! かかれ、敵は一人だ!!」



 ダッガンが叫んだ拍子に向こうから矢が飛んできて、賊の一人を射貫いた。セシリアの矢。そして、ダッガン達が気を取られている間に、私は剣を振り回してそのことごとくを討ち捨てた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ダッガン・デッカドー 種別:ヒューム

リーティック村を女盗賊団『アスラ』と共に襲撃し略奪していた『爆裂盗賊団』の頭目。『アスラ』の者達は、盗みはしても不必要な殺しを好まないのに対して、ダッガンは殺しをなんとも思っていない。『爆裂盗賊団』は、何度もクラインベルト王国周辺でも暴れまわっており、ローザとは過去にも何度も追われて因縁がある。

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