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第484話 『ローザ復活』 (▼ローザpart)




 ――――メルクト共和国。リーティック村。


 ベッドから起き上がり服を着ると、剣や鎧などの装備を身に着けた。


 ――よしっ! 行ける!


 ガチャッ


 部屋の扉が開く。そこには眼鏡をかけた長い黒髪のメイドが立っていた。セシリア・ベルベットだ。


 私は、クラインベルト王国のエスカルテの街からこのメルクト共和国にあるリーティック村までテトラやボーゲン、ミリス達と共に賊を討つ為にやってきた。


 しかし、私はこの村で不覚にも二人組の賊に襲われて傷を負ってしまった。薬草や回復ポーションでも、回復しきれない程の何か芯に残るダメージ。


 もっとグレードの高いポーションを持参して来ていればと後悔した。セシリアが回復魔法のスクロールを持っていると言っていたが、それは緊急事態に備えて温存しておいた方がいいと言って使わせなかった。


 そういう訳で私は、傷を癒すためにテトラ達と一時的に別れてこの村に残ったのだが、なんとセシリアが一緒に残ってくれたのだ。


 私なんかの為についていなくてもいい、テトラの助けになってやれとも言ったが、実際セシリア一人でも残ってくれた事でその分心強く感じた。だから、本心は感謝している。

 


「あら、目が覚めたのね。もう完全回復なのかしら」


「そうだ。完全回復だ。これから、遅れた分を取り戻しに行くぞ!」


「そう、なら良かったわ。それはそうと、クラインベルトからあなたを追ってお客様が来ているわよ」


「お客様……だと?」



 まさかと思った。次の瞬間、扉がバンと開いてセシリアの横から顔見知りの二人が部屋に雪崩れ込んできた。



「ロ、ローザ団長!! ご無事ですか!!」


「ラ、ライル!! それにブレンダもか!!」 


「怪我をしていると聞きました。一応回復ポーションを持参してやってきたのですが」


「すまない、だがもう完全回復だ。ポーションはいらない。しかし……お前達が追って来るなんてな。二人だけなのか? ドリスコや他の団員はどうしている?」



 ライルとブレンダは、私が率いる『青い薔薇の騎士団』の団員だ。二人とも大切な私の部下。


 二人も私の事をとても心配してくれていたようで、もう本当に完治して動けるのかどうか、私の身体のあちらこちらを見て確認しているようだった。私の質問については、ライルが答えた。



「ドリスコ副長は、他の団員と共にクラインベルトとメルクトの国境近くで野営し、待機しております。もしローザ団長からのご指示をいただけましたら、すぐにでも動けます」



 ドリスコ達には、王都で待機するようにと伝えたはずだったのだが……気になってここまで来てくれたのだろうと思った。



「それにしても、よくこの村に私がいると解ったな」


「はい、それはこちらのセシリアさんからリーティック村にローザ団長がいるとききまして」



 どういうことだ? セシリアを見ると、彼女は少し微笑を浮かべて答えた。



「この村の人達が、国境付近にクラインベルトの王国騎士団が野営していると話しているのをたまたま耳にしたの。それで頼みを聞いてくれそうな人に調べてもらったら、青い薔薇の紋章が入った旗を掲げていたと聞いたので、その騎士団の責任者に手紙を渡してもらったのよ。もちろん、先に責任者の名前を確認したわ。副長のドリスコ様なら、王宮でお会いした事もあるから」


「そうだったのか。それでドリスコに、私がこの村にいる事を伝えてくれたのか」



 ドリスコをはじめとして、ライルやブレンダ。それに騎士団の皆は、私のピンチをなんとなく感じて駆け付けてきてくれたのだ。かなり心配させてしまったようだ。なんて、心強い部下達なのだろうかと思う。


 しかし……



「ライル、ブレンダ。心配してここまで来てくれた事は嬉しく思う。しかしこれは、命令違反だぞ。私は王都で待機するようにとドリスコにも命じたはずだ」



 そう言った瞬間、ブレンダが私に抱き着いてきた。



「それだったら、私を罰してください!! それでも、私達はローザ団長に何かあったらと思うと……ローザ団長に限って大丈夫だと思っていましたが、考えが甘かったのです。賊と戦って手傷を負われたんですよね? 私達は絶対にローザ団長を失いたくはないんです!!」


「ブレンダ……」



 涙ぐむブレンダの頭を撫でた。すると、セシリアが訊いた。



「それで――どうするのかしら? 完全回復したのなら、テトラやメイベル達の後を直ぐにでも追いたいのだけれど……『青い薔薇の騎士団』が国境付近まで来ているのなら、連れていくという考えなのかしら?」



 確かに命令違反はあれだが、ここまで慕って来てくれたのは嬉しい。それにドリスコ達が傍にいて、一緒に戦ってくれたらどれ程心強いだろうかと考える。


 しかし……


 あのローグウォリアーとビーストウォリアーと名乗っていた賊。それにこの国には、『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』以外の盗賊団も混乱に乗じて暴れまわっている。


 そんな中で、集団でぞろぞろと動くのは得策ではないと思った。しかも騎士団だなんてより目立つ。これは戦争ではないのだから、できれば隠密に行動をしたい。


 私はライルとブレンダの目を見つめていった。



「私を心配してくれた事は、素直に嬉しい。ドリスコや他の皆にもありがとうと伝えておいてくれ」


「そ、そんな。それじゃあ私達は……」


「これはこの国を救う為の任務なんだ。隠密行動が今は必要なのだよ。お前達は陣に戻り、団員をまとめて一度エスカルテの街か王都へ戻ってくれ。もし兵が必要になったら、タイミングを見て呼ぶ。その事をドリスコに伝えた(のち)、ドリスコの指示に従え」



 何か反論しようとしたライルとブレンダを目で制し、セシリアにそろそろ出発しようと告げた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ローザ・ディフェイン 種別:ヒューム

クラインベルト王国の国王陛下直轄の騎士団『青い薔薇の騎士団』の団長。セシル王の命でメルクト共和国の救援にテトラと共にやってきた。途中、リーティック村にて正体不明の刺客、ローグウォリアーとビーストウォリアーに襲われ怪我を負わされる。テトラたちは先行する事を決断して、ローザにはリーティック村に残って回復に努めるようにした。


〇セシリア・ベルベット 種別:ヒューム

クラインベルト王国の国王陛下直轄の王宮メイド。王宮では別名、上級メイドとも呼ばれている。黒く長い美しい髪に眼鏡をかけていつも澄ましているので、あまり人を寄せ付けるタイプではない。テトラとは親友になり一緒にメルクトへやってきたが、途中ローザの負傷で彼女を一人にする訳にもいかず、ローザと共に残った。


〇ドリスコ 種別:ヒューム

クラインベルト王国、『青い薔薇の騎士団』副団長。大きな体で、力持ち。だけどその見た目と異なって堅実な戦法を得意とする。ローザの信頼する副官。休日に喫茶店で読書する事を楽しみにしている。最近読んだ本のタイトルは『最強の補佐になる為に』。


〇ライル 種別:ヒューム

クラインベルト王国、『青い薔薇の騎士団』団員。ローザの部下。実家が居酒屋を経営しており、休日はそれを手伝っているので料理が上手い。最近は芋の煮っころがしに凝っている。


〇ブレンダ 種別:ヒューム

クラインベルト王国、『青い薔薇の騎士団』団員。ローザの部下。ローザの事を誰より尊敬していると思っている若き女騎士。帽子集めを趣味としている。


〇リーティック村 種別:ロケーション

メルクト共和国にある村。女盗賊団『アスラ』と『爆裂盗賊団』によって占拠されていたが、テトラ一行が立ち寄って賊を攻撃して追い払った。そして村は解放された。

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