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第481話 『また、新しい旅の始まり』




 ――――翌朝、早朝。



「もう行ってしまうのか? ティアナには会ったのか?」


「うん、お父様。早めに起きて、お母様には私一人で会ってきたわ……エスメラルダ王妃には、用事が済んだらパスキア王国へ直接行くからって伝えておいてくれる?」


「なんだ、別々に向かうのか?」


「一緒に行かない方がいいと思うけど。それにルシエル達も一緒に行くし、嫌がるんじゃないかな」


「ふむ。ルシエルな。お前は本当に良い仲間達に出会ったな。よし、解った。じゃあ行ってこい。だがくれぐれも無理はするな。縁談が嫌になったら、戻ってこい」


「ありがとう、お父様」



 お父様は、昨日遅くまでバーンやルシエルと飲んで語らっていた。私がノエルやマリンとお喋りしたように、お父様もルシエルと話に花を咲かせたのだろう。


 しかし……



「うううう……気持ち悪い……」


「っもう! 飲みすぎなんですよ、ルシエルは!! もうちょっと考えてお酒を飲まないと駄目なんですよ!」


「やめろルキア、大きな声をあげるな。う……うええええ」


「ちょ、ちょっとルシエル!!」



 完全に二日酔いになってしまっているルシエル。お酒は好きみたいだけど、めちゃくちゃ強いという訳でもない。なのに、いつも調子にのって飲みすぎるから案の定、具合が悪くなってルキアに叱られていた。


 こんなので、本当に馬に乗って駆けられるのだろうか。



「それじゃあ、またアテナお姉様」



 ルーニと、リア。



「うん、また戻ってくるからねルーニ。リアは一緒にこないの?」



 まず最初の目的地は、エスカルテの街だった。お母様に続いて、そこでレーニとモロのお墓参りをする。


 それからカルミア村に行って、ルキアとリアのご両親のお墓にルキアを連れていくつもりだった。だから、リアにも声をかけた。



「はい、王都に来たので私はもう少しルーニと……もう少しお話もしたいし、もうちょっと王都にいようかなと思って」


「そう、じゃあルキアもここに残ってもう少し、リアやルーニと一緒にいる? そうすればまた後で迎えにくるけど」



 今回皆で楽しんだキャンプでも、ルキアはずっと妹のリアと、更にルーニとも気が合って一緒にいた。だから、もう少しここでゆっくりしていってもいいなと思った。だけど、ルキアは顔を横に振る。



「ううん。大丈夫です。お父さんとお母さんに一度、会っておきたいですし……それに、リアやミラールやロンには会いましたけど、クウとルンにも会いたいですからね。一緒に行きます」


「そう。じゃあ、ちゃんと二人に挨拶をして」



 そう言うと、ルキアはルーニとルキアと3人で抱き合った。そして「また今度」と言って別れを惜しんだ後、今度はバーンのもとに近づいていき、彼に抱き着いた。



「おいおい! どうしたってんだ? 照れるぞ」



 助けを求めるような顔で私を見るバーン。私はクスリと笑った。



「ありがとうございます、バーンさん!! ミラールやロン、クウにルン、リアにも優しくして頂いているだけでなく、本当にいつも色々としてくれて……言葉にできない程、感謝しています」


「あーー、そう言う事か。それなら気にするな。俺の仕事はそういう仕事なんだよ。冒険者っていうのは、別に魔物を倒したり冒険するだけが仕事じゃないからな。感謝してくれるっていうのなら、お前も誰かが助けを求めてたりしている場に遭遇したら、自分に何かできる事があるかを考えて、可能なら助けてやれ」


「はいっ」



 バーンがルキアの頭を撫でると、彼女はより一層にバーンに抱き着いて頷いた。しかし、折角の感動のシチュエーションだけど、その後ろでルシエルが真っ青な顔で倒れそうになっている。うーーん、そろそろ出発しよう。



「それじゃ、お父様、ルーニ、リア! 行ってきます! パスキアへも約束だから、必ず向かうから。縁談はきっと破棄するだろうけどね、アハハ」


「ああ、それでいい。何かあったら王都へ戻れ」


「いってらっしゃい、アテナお姉様! またすぐにでも一緒にキャンプしようね!」


「アテナさん、お姉ちゃんをよろしくお願いします!」


「うん、それじゃまたね」



 手を振ると、皆も手を振った。ルシエル、ルキア、カルビ、ノエル、マリン。全員もう出発の準備ができている。



「それじゃ、アテナ。エスカルテの街までは一緒だ。キャンプ場の外に馬を用意しているから、それで向かおう」



 バーンとミラールとロンが待っていた。


 私達は、バーン達について行くとキャンプ場の外に確かに馬が用意されていたのでそれに乗った。



「うっぷ……やばい、馬に乗ると、余計に吐きそうだ……世界が回って見える……」


「プフーーーーー」


「おい、もしかして笑っているのかマリン……うぷっ」


「プフーーー」



 なんとか馬に乗れたものの、フラフラとふらつくルシエル。そしてその度に、胃の中の物を今にも吐き出してしまいそうにして頬を膨らませている。そう……まるで食べ物を沢山、口の中に頬張っている栗鼠みたいに。それがツボに入ったのか、マリンが独特な笑い方をしてウケている。ノエルは、ルシエルよりもマリンの方を突っ込んだ。



「なんだよ、それ」


「え? 何が?」


「そのプフーーってやつだよ」


「え? 笑っているだけだけど?」


「なんだよ、それ。笑っていたのか。しかし、なんで笑っているんだ?」


「え? だってルシエルが栗鼠みたいで面白いじゃないか。ほら、あの頬。傑作じゃないか、なあ。プフーーーー」


「はいはい。皆待ってるから。それじゃ、出発しましょう! ルシエルも、もうだめって思ったらすぐに伝えて」


「も、もうだめ……」



 もともとは、身から出た錆。ルシエルの呟きを皆、聞こえていなかったようにして馬に騎乗し始めた。ルキアは、馬に騎乗するのは初めてなのでバーンと一緒に跨った。


 私はカルビを抱き上げると、背負っているザックにカルビを入れて馬に騎乗した。


 ワウッ


 まずは、エスカルテの街へ行って久しぶりにレーニとモロに会う。その次は、ルキアが産まれ育った村、カルミア村。


 再度、お父様やレーニやリアに手を振ると、キャンプ場を抜けて大通りの方へ駆けた。途中、巡回中のゲラルドと会ったので、手を振るとゲラルドは私に頭を下げた。



(ゲラルド、また暫く留守にするけど、お父様やルーニの事をよろしくお願いします)



 通りには人が多い。距離もあったので、彼に向かって心の中でそう呟いたけど、その言葉はきちんとゲラルドに届いている。そう確信した。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ティアナ 種別:ヒューム

アテナとモニカの母親で、クラインベルト王国の前王妃。アテナとモニカがまだ幼い時に、病でなくなった。もともと身体が弱かったが、アテナとモニカはいつか良くなると信じて疑わなかった。ティアナは、アテナと共にドルガンド帝国に誘拐された事があり、その時に知り合って助けてもらった伝説級冒険者ヘリオス・フリートとは友人になった。ヘリオスもティアナの思いに応えるために、王国の王妃ではなく友人のティアナとして接した。


〇レーニとモロ 種別:獣人

カルミア村の子供達。ルキアやミラール達と同じく奴隷にして売り払うため、拘束されて馬車で運ばれていた。偶然通りかかったアテナが救出を試みたが、レーニとモロは既に亡くなっていた。

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