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第477話 『クラインベルトであった事 その3』



 キャンプ場に運び込まれた食材を見て、皆で食べるご馳走は何がいいかと思案したけど、それは直ぐに決まった。


 ――バーベキュー!! それと、以前たちよったニガッタ村で購入したスパイスなんかがまだあるから、カレーを作る事にした。


 バーベキューと聞いて、皆飛び跳ねて喜ぶ。でもカレーを食べた事のあるルシエルとルキア、カルビだけがそれを聞いて本当に喜んでいるだけで、他の皆はカレーがどういったものなのか、理解していない。ルシエル達につられて喜んでいる感じだった。


 ルキアがルーニとリアに、カレーがどういった料理なのかという事を説明する。すると二人とも興味津々で目を輝かせ、口からはもうすでにちょっぴりよだれが垂れかかっていた。



「さあ、それじゃあいよいよ準備をしましょうか!! バーンとルシエルは焚火に薪を足して、バーベキュー用の網の準備をしてくれるかしら。そしてカレーを作るから、大きな寸胴鍋も用意してほしい。網も沢山焼ける様に、大きな網でお願い」


「おっしゃ! オレに任せろ!」



 寸胴鍋に、大きめの鉄製の網。それを聞いてバーンが質問をした。



「おいおいおい。寸胴鍋は確かにあるが、そんな大量にそのカレーを作って食べきる事ができるのか? 食材の量から言って、バーベキューも沢山焼くんだろ?」


「大丈夫。私達の分だけじゃなくて、私達の事を守って警備してくれている騎士達にも配るから、大量に作らないといけないの」


「な、なんだと⁉ そこまで考えていたのか……気配りに関しても流石だよ、お前は――脱帽だな」


「はいはい。理由が解ったら、早速作業に取り掛かって。お父様も手伝ってくれる意志があるなら、お酒を運んだり、食器など用意してくれる? マリンとノエルは、カレー用にライスを準備してほしいから、ライスを川で洗って来て。それから焚火で、メスティンを使って美味しく炊いてくれるかな」



 国王にお酒と食器の準備をさせる私。他の者にもきびきびと指示を出した。だってこれはキャンプなのだから、むしろ手伝わないと楽しめない。手伝う=参加するということ。



「よ、よし。余に任せよ。酒と皆の使う食器の準備、見事果たしてみせようぞ」


「うん、ボクもりょーかい。じゃあ、まずはライスを水で洗えばいいんだね」



 手に持っている杖を翳して、何か魔法を詠唱しようとしたマリンを慌てて止める。



「こらこらっ! 魔法はだめ! ちゃんと、川で洗って来てください!」


「え? 駄目なのかい?」


「だーーめ。ちゃんと川の水を使用して、手で丁寧に洗った方が美味しいんだよ。マリンが魔法を使用して横着しないようにちゃんと見張っていてね、ノエル」



 ノエルは頷くと、ライスの入った麻袋を持ち上げてマリンにそれを洗うようのタライを持たせた。水色の魔法使いに、褐色のハーフドワーフの女の子。フフフ。なかなかいいコンビかもしれない。

 


「じゃあ、私達は何をすればいいですか?」


「うん。それじゃ、ルキアとルーニとリアには、バーベキューとカレー用で使う野菜や肉、それらを調理しやすいようにカットしてもらおうかな。まず野菜は川で洗ってきて、それから食べやすいようにカットね。ミラールとロンは、そのカット済みの野菜と肉をいい感じに串に刺していって次々に焼いてくれるかな」


「うん、任せて」


「解った!」


「はーーい、ルーニに任せて。それじゃ、やろうルキア、リア」



 これで、全員に役割を振り分けた。私やルキアは、もうそういうキャンプ料理には慣れているからいいけど、ルーニやリアが包丁で手を切ったりしないように見ておかないと、二人は手付きが覚束ない感じもする。


 そしてミラール達の方も、火傷などしたりしないように、保護者役としてしっかりと目を配り監督した。



「ロン、凄く手つきがいいね」


「え?」



 ルキア達がカットした野菜やお肉、それをミラールとロンが早速用意した串に刺していく。何気ない作業だけど、ロンの手際を見ていて直ぐにそれが解った。慣れた手つき。日頃から料理をしている者の手つきだった。



「う、うん。あれから俺、エスカルテの街で料理人になりたくて飲食店で住み込みで働いているんだ」


「へえー、そうなんだ! 凄いねロン。そんな事を聞いたら、ロンの作る料理が食べたくなってきちゃう。それじゃまた今度、ロンの働いているお店に行ってもいい?」


「も、もちろんだよ! アテナが来てくれたら嬉しい!! 俺、色々料理を作れる様になったから来てくれたらご馳走するよ」


「えーー本当に!? 凄い楽しみ!」



 にっこり笑う。すると、私とロンの間にミラールが入ってきた。



「ぼ、僕も頑張っているんだ。バーンさんのもとで冒険者になろうと毎日励んでいるんだけど……アテナやバーンさんに比べたらまだまだだけど、剣の腕もそれなりになってきたと思ってて……」


「ミラールがバーンに弟子入りしているなんて……ちょっと会わない内に、二人ともこんなに成長してたんだ。ロンもミラールも、あれから物凄く頑張ったんだね。それじゃあ折角だから、あとでミラールがどれくらい強くなったかちょっと剣を合わせてみようかな」


「え? いいの!」


「いいよー。ルシエルやノエルも強いから、あの二人と戦ってみるのもいい勉強になるかもだし」


「うん! でも、アテナに教えて欲しい!」



 私は頷くと、にっこりと笑ってロンとミラール二人の頭を左右それぞれの手で撫でた。


 あの時、救いだす事ができた少年たちが今は、こんなに生き生きしていて、自分のやりたい事を見つけて頑張っている。それを考えるだけでも、ぎゅーーーっと心が熱くなった。


 そんな感情に暫く浸っていると、マリンとノエルが大量のライスを川で洗って戻ってきたので、慌ててメスティンの準備にとりかかった。


 幸いメスティンは、ライスの量に応じてちゃんと多めに用意されていたので良かったけれど、焚火が足りなかったのでまた更に焚火を作り、ライスの入ったメスティンを火にかけた。


 そして、全ての準備が整うといよいよ宴が始まった。


 私はお父様の背中を押して、宴の音頭を取ってと即した。するとお父様は皆の前に立った。咳払いをしてから、今日この日皆で集まれてキャンプができた奇跡を祝って、乾杯の音頭をとった。


 ルキア達は、一応まだお子様なので、お酒を飲んでもすぐに倒れ込んでしまったり、気持ちが悪くなるかもしれないので、他の飲み物で乾杯するように言って進めた。

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