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第473話 『彷徨える者達』




「久しぶりだな、アテナ。元気そうでなによりだ」


「バーンこそ、本当に久しぶりね」


「ああ。また色々と大冒険したそうじゃないか。ドワーフの王国を救ったとか。そんなとんでもない噂が俺のもとにも聞こえてきているけど、マジなのか?」


「えっへっへー。どうかな」


「やっぱりマジ(ばな)かー! まあ実は王女様で、伝説級冒険者ヘリオス・フリートの弟子だもんな。それだけ見ても、サラブレッドだもんな」



 相変わらずその言い方!!

 

 私は久しぶりの再会に、まずバーンと握手を交わす。するとルシエルが、バーンの姿を見るなりコソコソと隠れだした。


 そう言えば私とルシエルとバーン、それにローザを加えて4人でマンティコア討伐に出かけた時に、ルシエルはバーンに随分と気に入られていたなと思い出した。フフフと笑う。



「あーーー!! アテナ、今オレを見て笑ったな!!」


「折角バーンと会ったんだから、しっかりとハグでもしたら。私もするから」



 そう言って私はミラールとロンを抱き寄せて、照れる二人をぎゅっとハグした。二人とも最初に会った時より少し背が伸びている感じがする。


 しかもミラールに至っては、背中にロングソードまで差していて顔も少し精悍になってかっこよくなっていた。この子はきっと街でも他の女の子に、モッテモテに違いない。



「ア、アテナ!! 恥ずかしいよ!」


「もう少し、ぎゅーーっとさせて!! ぎゅーーーーーっ!!」



 私がミラールとロンを抱きしめて、二人の思いがけないほどの成長に感動していると、ルシエルも悲鳴をあげた。見ると、バーンに抱き着かれている。



「やめろおおお!! オレもそっちのルキアとリアの友達の方がいい!! はなせえええ、バーン!!」


「はっはっはっは、照れるなって!! なんせ、久々だからな。それになんか、お前は娘みたいで可愛らしいんだよな。遠慮なく心行くまであまえていいぞ」


「ふざけんな! オレのが年上だろうが!! オレは114歳だぞ!! はなせったらーー!! こら、においを嗅ぐな!!」



 本当に仲の良い親子に見える。114歳のルシエルは、見た目が少女だから当然だけど、私の目から見ても娘に見える。


 まあ、バーンとも色々あったけど、それでもこうしてミラール達を育ててくれているみたいだし……私の方も大きな誤解があったかな。


 ルキアの妹リアは、既に亡くなってしまったと思っていた。だけど本当は元気にしていて、その妹のリアと姉のルキアの感動的な姉妹の再会をさせてくれた。


 見直したというか、大きな借りができてしまったなと思った。だから今日だけは、ルシエルはバーンの玩具になっても何もいうまいと思った。喜んで貸し出ししよう。


 戯れる二人を眺めて和やかにしていると、お父様が私の肩をポンと叩いた。



「アテナ。あのバーンに抱きしめられて、どうにか脱出しようとして暴れているハイエルフが、お前の友人のルシエル・アルディノアか?」


「そうよ。私の親友で頼もしい相棒。っていうか、ルキアやノエルやマリンもそうだけどね。マリンはもう会っていると思うけど、良かったらルキアやノエルにも声の一つでもかけてくれると嬉しいな」


「う、うむ。それはかまわんが、このような場所でこの国の王が声をかけるというのも、お前の友人達が固まって困惑してしまわんか?」


「フフフ。こんな場所だからオーケーなんでしょ。それにお父様は、今は国王ではなくて一介の冒険者のおじさんって設定なんじゃなかったっけ?」


「お、おお! そういえばそうじゃった、そうじゃった。わはは、これは娘に一本取られたのう」



 お父様が笑う。そして向こうではルシエルの悲鳴。とりあえず、ルシエルとバーンの再会は邪魔しちゃ悪いので、そっとしておいて私は皆を集めてキャンプを始める事にした。



「それじゃ、これから皆で楽しいキャンプを始めよう!」



 ワーーーーーーッ


 歓声。私はルーニの方を見て言った。



「それで――私が仕切っていいの、ルーニ?」



 ルーニはお父様と目を合わせたあと、リアとも顔を合わせてニヒヒと笑った。



「もちろん、お姉様に仕切って欲しいです!! その為にここまで準備したんですもの!! とりあえず、間もなくここへ城の者達が薪や食糧、テントやテーブルに椅子、調理道具などキャンプに必要なものを運んできますから、アテナお姉様はルーニ達にどうすればいいか指示してください」



 ルーニがそう言ってくれると、他の皆も頷いてくれていたので、この場は仕切らせてもらう事にした。



「解ったわ。それじゃ、今ルーニが言ったキャンプ用品や食糧が早速運ばれてきたようだから、皆でまずテントを設営しましょう。それが終わったら、そうね。焚火はもう作ってくれているみたいだから、暫く夕方まで思い思いに過ごしましょう。別にお酒を飲んでもいいし」



 そう言ってバーンの方を振り返ると、バーンはお酒を飲んでもいいと聞いて親指を立ててみせた。ルシエルは、バーンに抱えられてぐったりとしている。



「それじゃ、まずは皆でテントを立てましょう!」



 手を叩く。兵士やメイドが城から続々と運んできてくれるキャンプ用品や食べ物にお酒。キャンプ場の端に積み上げられていく荷物。


 皆はそこから、テントを取り出して好きな場所に設営を始めた。



「さーて、それじゃ私もキャンプをはじめましょうかね。ルキア、私と一緒に……」



 ルキアと一緒にテントを作り、そこで一緒に寝ようと言おうとしたけれど、既にルキアには予約がいっぱいで大人気になっていた。


 なんとルキアのもとには、リアやルーニが駆け寄り楽しそうな会話に夢中になっている。どうやら今日は一つのテントで、三人一緒に寝るようだ。フフフ。きっと、夜遅くまで語り合う気ね。


 ふとノエルの方を見ると、彼女も運ばれてくる荷物を物色して回っていた。手には酒瓶。彼女はテントより先に酒を探して回っているようだ。


 私はしょうがないので、ミラールとロンのもとに行くと二人の肩に手を回して言った。



「ルキアはルキアで、ルーニやリアと一緒にテントを作って寝るみたい。だから、私達も3人でテントを作らない?」



 言った途端、ミラールとロンは首をブンブンと横に振って慌てた。



「だ、ダメですよ! 女性は女性、男性は男性でないと!」


「ええーー、でもミラールもロンも私にしてみれば可愛い弟みたいなものだし」


「ダメです!! 僕らが落ち着かないです! なあ、ロン」


「え? あ、うん。そうだな! アハハ」



 やっぱり、お年頃かと諦める。すると、マリンとカルビが向こうでじっと私の方を見ていた。やだ、目が合った! 物凄いこっちを凝視している!


 …………


 なるほど、あれは一人じゃテントを立てられない彷徨える者達だと気づいた。



「マ、マリン、カルビ。一緒にテントを設営しようか? それで、今日は一緒に寝る?」


「寝るーーーーう!!」


 ワウワウワウ!!



 銀髪を三つ編みにした少女と、可愛いワンコが私目掛けて飛びついてきた。


 さあ、楽しいキャンプが始まったよ。こんな活気があって楽しいキャンプは、ローザやミャオも加えたラスラ湖の湖畔キャンプ以来だなと思った。

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