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第470話 『三国同盟の件』




 とりあえず、エスメラルダ王妃にもパスキア王国にも少し待ってもらう事にした。


 今回私がクラインベルト王国に戻ってきた理由。それは、何もエスメラルダ王妃がかねてから進めていたというパスキア王子との縁談の話だけではなかった。


 ドワーフ王との約束、そして折角戻ってきたのだから、ミラール達の顔も見ておきたかった。


 ルキアは、今の今まで失ってしまったと思っていた自分の妹リアに再会できたけど、きっとミラールやロン、クウやルン、そしてバーンにだって会っておきたいはずだよね。


 パスキア王国へは行く。だけど、その準備もあるからとエスメラルダ王妃にはいくつか条件を出した。お父様にも関係のある内容なので、一緒に聞いてもらった。


 まず一つ目が、パスキア王国へ向かうのは7日後にして欲しいという事。ミラール達にもだし、私だってローザやミャオにも会いたい。


 セシリアやテトラがもし戻ってきているのであれば、ルーニを救出してくれた事も踏まえて改めてお礼も言いたいし……兎に角、やっておきたい事がいくつもある。


 そして二つ目だけど、先にガラハッド王との約束を果たしておきたかった。


 お父様には、両国の平和の為にこのクラインベルト王国と、ドワーフの国との同盟を結んで欲しい。更に、隣国のガンロック王国とも可能であれば同盟をしてほしいと言った。


 ガンロックは、クラインベルトのこの同盟の申し入れを受ければ、きっと王女ミシェルやエレファの耳にも入る。そうすれば、あの二人ならきっと賛成してくれるはず。お互いの平和と発展の為になるならって。


 最後に三つ目。またパスキアの件になるけれど、パスキア王国へ行くのであれば、私は私の仲間も連れて行きたい。そして仲間達も、客人として扱ってほしい。私にとって、皆は家族みたいなものだから。


 あと、最後にって言ったけど、ついでだから4つ目!


 私は一週間後にこのクラインベルト王国を仲間と一緒に出発しパスキア王国へ向かう。でも、エスメラルダ王妃と一緒にはいかないという事。


 パスキアには必ず行くのだから、エスメラルダ王妃やエドモンテとは向こうで会えばいい。別行動で現地に到着したいという事。この調子で同行しても、きっとろくなことにはならない。



「解りましたわ。それならばいいでしょう。わたくし達は、護衛の兵とともに馬車で向かいます。でも本当に一緒に行かなくてもいいのですね?」


「はい、いいです。私は仲間と共にパスキア王国へ向かいます。でもエドモンテが言ったように、とりあえず王子と会う約束はしましたが、縁談を進めるかどうかは私達が会って決めます」



 私達……これもエドモンテが言った事だけど、私が良くてもパスキア王国の王子が嫌だっていう可能性だってある訳だしね。その逆だってある。


 そうなれば、私は縁談を断る。まだまだ冒険だってしたいし、色々な世界でキャンプだってしたい私は、まず間違いなくそうするだろうけど……でも、エスメラルダ王妃の部下であるゾルバには借りもあるし、パスキア王子に会うという事で、ドワーフの王国でエスメラルダ王妃の鎖鉄球騎士団に作った借りを精算しようと思った。


 エスメラルダ王妃は頷いて、お父様の方を見た。



「わたくしの方はそれで問題ありませんわ。それで、あなたはどうされるのです? アテナがガラハッド王と話を進めてきた件――この国と、ドワーフの王国との同盟をお認めになるのですか?」


「ふむ。それについてはよかろう。ドワーフの王国との親密な同盟関係を築くことができれば、ドルガンド帝国に対しても今まで以上に、圧力を向けられるしの。何よりアテナが頑張って築いてくれたドワーフ王との繋がりを無駄にはできん。早速、ガラハッド王にもガンロック王国のベスタッド王のもとにも、平和と繁栄の為の同盟締結をしたいという書状を送ろう。そして良い返答をもらい次第、三国で会って良い関係を結べるように話を進めよう」


「本当に!? 本当にいいの、お父様!!」


「うむ。平和の為にはそれが一番いい。ドワーフの王国もガンロック王国も、ドルガンド帝国の軍事侵略には脅威を感じて警戒しておるしな。上手くいくだろう。それにドワーフの王国と仲良くなれば、鉱物資源も沢山まわしてもらえる。そうなれば、この国は更に繁栄するだろう。エスメラルダ、エドモンテ、お前達も異存はなかろう?」


「わたくしはありませんわ。パスキア王子との縁談の件だけ、よろしくお願いしますわ」


「私も異論なんてありませんよ。姉上はどうしようもない人ですが、ドワーフ王国のガラハッド王と信頼関係を築いて戻ってきた事に関してだけは、見事と言わざるを得んでしょうな。我ら三国同盟が結ばれればドルガンド帝国にとって、かなりの脅威となる事は間違いないでしょうからな。でも、付け加えればここで姉上が大人しく政略結婚に対して前向きになってくれれば、その同盟にパスキア王国も加わり、更にヴァレスティナ公国が付けば、帝国など恐るるに足らんものになるでしょうがね。ハッハッハ、ですので姉上、本当に平和を望むなら、もう少し縁談の件を真剣に考えてみてはどうですか?」



 そう言ってエスメラルダ王妃とエドモンテは玉座の間から出ていった。



「むっきーーー!! エドモンテめ!! 他人事だと思って好き放題言ってくれちゃってからに!! しかも、意外と正論を言うから、余計に腹が立つわ!!」


「はっはっは。まあまあ。とりあえず、これで話もまとまったじゃろ。アテナよ、以前にこの城から再び出発した時にエルフと合流すると言っていたじゃろ? そのエルフもここへは来ておるのだろ?」


「うん、来てるよ。それにこんな私にも、他にも仲間ができたんだよ。マリンは、会った事があるでしょ?」


「おお、マリン・レイノルズも来ておるのか。マリンは、セシリアやテトラと共にルーニを助けてくれてな。まあ、その話は歩きながら話そう。とりあえず、お前のその大事な仲間をいつもでも待たせておくのもアレじゃろ? きっと心配しているのではないか?」



 私は、「うん、そうね」と行った後、お父様も一緒に私の後をついてきている事に気づいた。お父様は、ルシエル達に会うつもりなんだと思った。


 なんだろう、この親しい友人たちを自分の父に合わせる感覚。


 ニコニコしている父の顔を見て、なんだか恥ずかしいような……父をルシエル達に合わせたくないような、なんだかよくわからないけれど気が進まないような、兎に角そんな変な気持ちになった。


 要は、照れ臭くて恥ずかしいって事なんだと思う。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ローザ・ディフェイン 種別:ヒューム

クラインベルト王国の騎士。『青い薔薇の騎士団』団長。アテナやルシエル、ミャオの友人。現在はテトラと共に『闇夜の群狼』に襲われたメルクト共和国を救う為に他国で活動している。

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