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第467話 『愛の鞭』




「アテナ王女殿下!! ご機嫌うるわしゅうございます!」


「爺!! 久しぶりね!!」



 2人の感動の再会程ではないけど、私の方も私の帰りを首を長くして待ってくれていた人が、お父様やルーニの他にもいた。


 ルキアの妹リアの次に、城門の方から駆けてくる純白の立派なローブを羽織った宮廷大魔導士、ミュゼ・ラブリック――爺。


 私は爺を抱きしめると。その頬に口づけをした。爺の私を抱きしめる両腕は、微かに震えている。それは老齢によるものではなく、勝手に城を飛び出して冒険者になってしまった私の行く末を、ずっと案じてくれていた事を物語っていた。



「爺、本当に久しぶりね。元気だった?」


「元気だった……ですと? まったく姫様は……どれだけ儂が、姫様の事を心配していたかお解りになられますか? きっと、解りますまい!」


「え? あの、ちょっと?」



 爺はそう言うと、両手を掲げ魔法を詠唱し始めた。



「《空中浮遊魔法(レビテーション)》!!」


「ひゃ、ひゃああ!!」



 すると私の身体はフワッと宙に浮きあがる。腰を突き出したような体制にされ、爺が手をサッと動かすと私のスカートがまくり上がった。身動きも取れない。



「ええ!! ちょ、ちょっと爺!!」


「まったく、姫様は!! 許しませんぞ!!」



 爺は更に魔法で宙に浮いている私の身体に金縛りのような術をかけると、私の身体を自分の方へ引き寄せて、皆の前で私のパンツをおろし、露わになった私のお尻を何度も叩いた。



 バシィ、バシィ、バシィ、バシィ!



「痛い痛い!! っていうか、感動の再会だったのにーー!! なぜなの!?」


「なぜですと? それもお解りになられない? ええい、じっとしなさい! これは、愛の鞭ですぞ姫様!! 儂や国王陛下、王妃にエドモンテ王子、更にはルーニ様に……心配した者の数は計り知れませんぞ!! 姫様は、それを解っておられんのです!!」


「わ、解ってるって!! い、痛い!! 爺、止めて!! ほら、皆いるし兵達もいるし恥ずかしいよ!!」


「なーーにを、こんな短いお召し物……ミニスカートなどを好きでお召しになられているのですから、他の誰にお尻を見られても平気なのでしょ? いい機会です! しっかりと皆に姫様の腫れあがったお尻を見てもらえばいいのです!! それで少しは反省なさってください!!」


「うそーーー!! っもう!! 痛い痛い!!」



 私と爺の感動の再会に呆然とするゾルバや、ゾーイとその他鎖鉄球騎士団。ルシエルがこの光景に大笑いしすぎて嗚咽を漏らしていたのは言うまでもないけれど……ルシエルめ……うう……


 他の皆も見ているだけで、無情にも助けてくれなかった。唯一、ルキアがハラハラして何か言おうとしていたけど、リアとルーニに止められていた。


 うう……お尻が痛いし、恥ずかしいし……もう……


 城の前には、普通に人が行きかっている。そんな公開処刑所で、20回も爺にむき出しになったお尻を叩かれようやくお仕置きが終わった後、お父様の待つ玉座の間へと足を進めた。その間、爺に受けた罰でまともに歩けず、ずっとへっぴり腰のようになっていた。


 城の中、この通路を抜けると玉座の間という所で、爺が立ち止まってこちらを振り返る。



「それでは、ここからはアテナ王女殿下、並びにルーニ王女殿下のみお進みくだされ」



 確かにそうだ。皆には待っていてもらった方がいい。そう思い、皆に声をかけようとしたところでルーニが嬉しそうな表情で言った。



「それじゃあさ、それじゃあアテナお姉様がお父様に会って大事なお話をしている間に、ルーニが皆をお城の色々な場所に案内してあげるね」



 ルーニの顔は本当に笑顔に包まれている。リアとは友達で、マリンとは顔なじみみたいだけれど、ルキアやルシエルやノエル、沢山の友達が一気にできたと思っているのだろう。フフフ、良かったねルーニ。



「暫くぶりの、親子の再会に無粋な真似はしたくない。あたし達は外していいか?」



 ノエルが代表してそう言った。ノエルはドワーフの王国でミューリやファムと、ガラハッド王との関係を直ぐ傍で見てきた。だからこういう気の使い方ができる子なのだろうと思った。



「うん。お願い。また後で合流しましょ。それじゃ、皆の事をお願いねルーニ」


「うん、まっかせて!! じゃあ、何処から行ったらいいと思うリア」


「そ、そうですね、それじゃまずお庭の方から……」



 お庭と聞いて、ルシエルとマリンが騒いだ。



「待ってくれ!! オレもう腹がペッコペコだよ。先に何か食べさせてくれよーー。お城にあるなんか、美味い物食べたいよう。まずは腹ごなししてから、庭で何かして遊ぼうぜ」


「ボクもルシエルに賛成だ。僕もお腹と背中がくっつく程に餓鬼状態だ。なんでもいいから……いや、できれば肉的な物を食させてもらえると、とても嬉しい」


「もう、ルシエル!! 王女様に失礼ですよ!! マリンさんも、マリンさんです!! ねえ、ルーニ様!!」


 ワウワウッ!!



 ルーニに縋りついて、食べ物をねだるルシエルとマリン。それを注意するルキア。そしてそんなルキアを後方支援するカルビ。ルーニは、そんな彼女達を見て、にっこりと嬉しそうに微笑んだ。



「うん!! それじゃあ、とーーっても美味しい料理を直ぐに用意させるから、まずはそこでご飯を食べましょう!! その後はお庭に行って遊ぼうよ。誰かにお茶とお菓子を用意させるから、色々と冒険のお話も聞かせて欲しいわ!」



 ルーニは、ルシエルとマリンが頷くのを見ると、早速リアとルキアという可愛らしい獣人の姉妹の手をとって、「こっちこっち」と皆を誘導した。


 私はルーニ達を見送ると、一度深呼吸してから、爺と共にお父様の待っている玉座の間へ向かった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ミュゼ・ラブリック 種別:ヒューム

クラインベルト王国の宮廷大魔導士であり、アテナやモニカ、ルーニの教育係。エドモンテは別。アテナ達には、爺と呼ばれミュゼはアテナ達に魔法を教えた。もともとはオズワルト魔導大国の大魔法使いだったが、セシル王からの頼みでクラインベルト王国にやってきた。マリンの祖父、ラダン・レイノルズも大魔法使いと呼ばれ、オズワルトにある都市、マギノポリスではミュゼと共に魔導大国の双璧と言われていた。


空中浮遊魔法(レビテーション) 種別:黒魔法

上位の風属性魔法。空に浮いて飛べる魔法。飛べる速度や、浮遊時間は他の魔法と同じく術者の技量で異なる。

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