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第463話 『ドルガンドの将軍達 その1』 (▼クリスタフpart)




 ――――ドルガンド帝国、帝都。ノイシュバーヴェンタイン城玉座の間。そこに私は向かっていた。


 大きな扉の前に、重装備の屈強なる衛兵が8名。私の顔を見ると、敬礼をする。それもそのはず。私はクリスタフ・ヴァルツ。この偉大なるドルガンド帝国の将軍なのだから。


 衛兵が私の身分を確認すると扉をノックする。すると、中から皇帝の従者が扉を開き一礼すると中に招き入れられた。


 なんともものものしい。このドルガンドの皇帝、ジギベル・ド・ドルガンドは周辺諸国に宣戦布告を重ねて発し、軍事侵攻を行う日々を模索し、それを進める為の計画に着手している。つまりは我が帝国の皇帝陛下は、世界征服を望んでいられるのだ。


 民族至上主義の我が国としては、それこそが国の形であるかもしれない。しかし周辺諸国にしてみれば、最も危険視される国であり、各国首脳の集まりともなれば真っ先に問題としてあげられる国でもあるのだ。


 ――皇帝陛下は、事を急いでおられるのではないか。


 お年がお年なので焦る気持ちも理解できるが、自国以外のほぼ全ての人間を完全に敵視し、従属させるか殲滅するかという蛮行を貫き通してきたが、これでは先の見通しが効かない。


 徹底的に敵を痛めつけ根絶やしにしようとしても、怨恨は残りやがては怨霊となってこの国へ降りかかるだろう。


 いくら強気な言を発せられても、皇帝陛下もそれがお解りになっておられるからこそ、ここまで身辺の警備を徹底させ20万もの兵をこの帝都に集めている。



「やっと来たか、クリスタフ・ヴァルツよ」


「はっ! 遅れました事、誠に申し訳ございません」


「よい、それではお前も列に並べ。既に呼び出した者達は、お前ともう一人を除いて集まっておる」


「はっ!」



 列に並ぶと皇帝陛下のおっしゃられた通り、既に我らがドルガンド帝国の名立たる将が招集されていた。


 向こうの端から見ると、銀髪の魔獣の異名を持つハイン・ハイドリヒ将軍の姿があった。その隣にヘカテ・メルセデス将軍、続けて鋼鉄の狐の異名を持つゲーアート・ロンネル将軍。更にその隣に続いて、フランツ・フリューゲル将軍にアテーム・シュヴァイン将軍。


 シュヴァイン将軍……あの豚野郎も呼ばれているのかと胸糞が悪くなった。敵対するものには、オークジェネラルと呼ばれているらしいが、全くお似合いの異名。まさに貪欲な豚。


 陛下のお気に入りらしいが、見た目と同じく中身は醜悪でヘドが出る男だ。先日も、余興だと言って、とある村で妻と子の見ている前で夫を拷問し、ゆっくりと時間をかけて焼き殺したらしい。


 そして反対側、向かいの列には悪魔召喚術の使い手ヴァルター・ケッペリン将軍と、新しく将軍に取り立てられた二人の将軍がいた。


 ヴァルター・ケッペリンも、あまりいい噂を聞かない。陛下のご命令とはいえ、ヴァレスティアナ公国と合同しクラインベルト王国のティアナ前王妃と第二王女アテナを誘拐した。


 しかも、独断で悪名高き巨大盗賊集団『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』を使うは、ティアナ前王妃を手籠めにしようとするわの暴挙ぶり。誇り高き帝国軍人として、とても許容できる行いではない。


 あとは、あの新参者の二人。一人は、ジーク・フリートと言ったか。単身ドラゴンに戦いを挑み、見事に勝利して竜殺しの異名を手に入れるも、戦った時にドラゴンに浴びせられた灼熱の炎で全身に大火傷を負ったそうだ。


 喉を焼かれ、声もしゃがれた声と化していた。どちらにしても、火傷で醜くなった顔と身体を隠すためだと言って漆黒の鎧兜を身に纏い、誰も顔を見たことがないという。竜殺しのジーク・フリート。


 そして、二人目は狐の獣人で希少種。尻尾が九本ある事から九尾と言われる伝説の種族で、とんでもない絶大な魔力を秘めていると言われている。ノヴェム・ナインテール。既に将の貫禄を放ち始めているが。まだ僅か13歳だという。得体の知れなさ加減はトップレベルの二人だ。


 いや、それを言うなら更にもう一人いた。


 少し離れた所に、白衣に身を包む女と対照的に黒いローブに身を纏う魔導士がいる。


 白衣の女は軍事兵器の開発研究員所長で、メロディ・アルジェント。金で雇われている単なる研究者にすぎないが、魔導士の方はどうにも人間に見えなかった。


 ある日、陛下のもとに現れ何か密談をし、そのままこの帝都に残り陛下に仕えている魔導士。その名もギデオン。見た目は人間であるが、全身に纏っている雰囲気と言うか……空気が余計にギデオンが人間でない存在のように余計に思わせていた。身体も魔法を専門にする魔道士にしては、不釣り合いに巨躯。それがまた不気味だ。


 なぜ陛下は、この怪しげな者達を侍らせているのか? それが解らなかった。しかし、絶対的な君主政治で統治しているドルガンド帝国が、民族至上主義を唱えるも、このような得体の知れない者達を軍事の為とはいえ、その中枢に配置している事が不可解でならない。


 陛下は世界征服を一代で完結させようとしておられる。お年も召しておられるし、焦る気持ちを考えれば致し方ないのかもしれないが……


 陛下は全員の顔を見回すと、目を閉じた。この場に召集しているあと一人の到着を待っている。


 すると私が列に並び程なくして、扉が再び開いた。


 この場にいるジーク・フリート将軍のように漆黒の鎧に身を包む少女が入ってくる。そして、陛下の前にくると静かに跪いた。



「たった今、3つの反乱軍を殲滅し戻りましてございます」


「見事だ。漆黒の戦乙女、ジュノー・ヘラー将軍。それで、首はいくつ持ち帰った」



 ヘラー将軍が何かを手に持って入ってきたのは、解っていた。彼女はそれをゴロンと陛下の前に転がした。6つの人間の首。この場にいる者、全員が人の生首を見ても眉一つ動かさない。見慣れた光景なのだ。



「反乱軍それぞれのリーダーと、将の首でございます」



 ヘラー将軍がそう言うと、陛下は手を叩いて喜んだ。ジュノー・ヘラーは、まだ齢は二十歳だという。しかし、その戦闘能力においては老練な他の将軍たちをも圧倒するものをもっていた。この帝国でも、一番か二番位の強者だろう。まさに無双。


 その凄まじい戦闘力は計り知れず、彼女が帝国の将となってからは、数えられない位の首を陛下に献上してきた。


 ジュノー・ヘラー将軍は、陛下のお気に入りだ。


 これで、陛下が招集をかけた将軍全てが玉座の間に集った。それを確認すると陛下は立ち上がり、この場にいる者達へ向けて言葉を発した。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇クリスタフ・ヴァルツ 種別:ヒューム

ドルガンド帝国将軍。もともとは、貧しい家で産まれるが幼い頃から書を好み、秀才と言われるまでになる。軍に入隊し、一兵卒から始めるが後に智勇兼備と謳われるまでにその能力を発揮し、平民から貴族の称号を得て帝国の将軍にまで伸し上がる。現在は、帝国だけでなく近隣国でもドルガンド帝国の名称として名高い。


〇ジギベル・ド・ドルガンド 種別:ヒューム

ドルガンド帝国皇帝。


〇ハイン・ハイドリヒ 種別:?

ドルガンド帝国将軍。銀髪の魔獣と言われ恐れられている将軍。


〇ヘカテ・メルセデス 種別:?

ドルガンド帝国将軍。


〇ゲーアート・ロンネル 種別:?

ドルガンド帝国将軍。鋼鉄の狐という異名を持つ。


〇フランツ・フリューゲル 種別:?

ドルガンド帝国将軍。


〇アテーム・シュヴァイン 種別:?

ドルガンド帝国将軍。でっぷりと太った体系。意地悪く、冷酷残忍で欲深い事でも知られていて、クリスタフには豚野郎と罵られて嫌われている。敵対するものにも、その見た目と貪欲さからオークジェネラルと言われている。


〇ヴァルター・ケッペリン 種別:ヒューム

ドルガンド帝国将軍。過去にアテナとその母親ティアナを誘拐し、暴力を働いた事からクラインベルト王国と因縁がある。悪魔召喚の術を使う。


〇ジーク・フリート 種別:?

ドルガンド帝国将軍で将軍の中では一番の新参者。フルプレートで素顔は不明。竜を単身で討伐した事があり、竜殺しの異名を持つ。その腕を皇帝に買われた。


〇ノヴェム・ナインテール 種別:獣人

伝説の獣人九尾。フォクス村の出身で、帝国に村を襲われた際抵抗するが、その後降る。現在は、その一騎当千に値する九尾の力を持ってしてドルガンド帝国の将軍になっている。


〇メロデイ・アルジェント 種別:ヒューム

白衣を身に纏う科学者。ゾンビーストなどの人工モンスターを発明。軍事開発の分野で帝国に雇われている。


〇ギデオン 種別:?

得体の知れない巨躯の魔導士。以前、ノクタームエルドのリザードマン達の帝国、ザーシャ帝国を利用してドワーフの王国へ攻め込ませた。ドルガンドの人ではないが、皇帝はギデオンを侍らせている。


〇ジュノー・ヘラー 種別:ヒューム

ドルガンド帝国将軍で、漆黒の戦乙女と呼ばれている。並外れた武勇を持ち、並ぶものはいないと無双とも言われている。冷酷残忍で容赦がないとも言われているが、その容姿は天使のように美しい。ドルガンド帝国皇帝ジギベルのお気に入りでもある。


〇ドルガンド帝国 種別:ロケーション

世界征服を目論む軍事国家。クラインベルト王国にも攻め込んだ歴史があり、それからも冷戦が続いている。


〇ノイシュバーヴェンタイン城 種別:ロケーション

ドルガンド帝国のトップは皇帝だが、その皇帝の居城。

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