第461話 『儲けてなんぼ』
子供達が小麦粉などを混ぜ合わせ、頑張ってこねて作り上げたタネ。それを十分に寝かせたら、できあがり。
今度はそのタネを、手製の麺棒で伸ばして生地を作る。そしたらその生地を上手に重ねて、今度は大きな包丁でスライスして麺を作っていく。
麺ができたら、もう一つ寸胴鍋を用意し水を沸騰させてお湯を作り、そこへ投入。いい感じに麺が茹ったら器に盛って、別で作っていた自慢のスープを入れてできあがり。
「さあ、それじゃあ皆さん、ミャオさんとクウさんとルンさんとシェリーさんに感謝して、頂きますと言いましょう。それができたら、ミャオさん達と私達をめぐり合わせてくださった神にも感謝して、このうどんを召し上がりましょう」
『はーーい!! 感謝します!! 頂きまーーす!!』
シスターアンナがそう言うと、子供達全員とシスター二人が揃って、ニャー達に感謝の言葉を言って祈ってくれた。流石にちょっと照れ臭い。クウ達を見ると、クウとルンも感謝された事に対して嬉しくも照れている。
「おいしいー!! このうどんっていう食べ物初めて食べたけど、美味しい!!」
「なにこれ、なにこれ! スープパスタみたいだけど、食べてみるとぜんぜん違う食べ物だ!」
「良かったニャ。皆、ゆっくり味わって食べるニャ。小麦粉は全てここに置いていくから、明日からも皆頑張ってまたうどんを作るニャ。そしたら、また何度もうどんが食べられるニャ」
「えええええ!!」
「これからずっと、うどんが食べられるのー⁉」
感動。そしてずるずると麺をすする音と共に、子供達の驚きの声があちらこちらから聞こえてくる。しかしニャーの言葉に、シスター達は流石に動揺を隠せなかったようだ。
「ちょっと、待ってください、ミャオさん! この大量にある小麦粉全部置いて行くって……そこまでしてもらって、私達ミャオさんにお礼をするにも、見合うものを返せません!!」
「いいニャ、いいニャ。先に言ったはずニャ。ニャーは、商人ニャ。全ては利益の為の事ニャ。ニャけど、どうするかは、シスターと子供達次第ニャ」
そう言うと、シスターケイトとアンナは顔を見合わせる。
「な、何か私達にできる事があるという事ですか?」
「ニャニャ。そういう事ニャ。でもとりあえずは、折角美味しくできたうどんを味わうのニャ。皆、食べ終わったら話すんニャ」
シスターケイトとアンナは、頷くと子供達と一緒にうどんを美味しそうに食べ始めた。そして、皆の食事が終わった所で、シェリーが戻ってきた。他にエスカルテの街から連れてきたと思われる5人の冒険者を引きつれている。
「おかえりニャ、シェリー」
「ああ、ただいま。この教会の事はギルマスに話した。それで早速冒険者を5人派遣してくれたが、これから毎日エスカルテの冒険者ギルドから、誰かしらがここを訪ね、様子を見に来てくれるそうだ。あとその際についでに、この周辺を異常がないか巡回してくれるとの事だ。それでいいか? シスター」
「そ、そんなにまでして頂いて……あ、ありがとうございます!! シェリーさん!!」
「シェリーさんや、冒険者ギルドの方々にもなんとお礼を言えばいいか……」
シェリーの言葉を聞いて安心。バーンさんなら、きっと何とかしてくれると思っていたけど、やっぱりそうだった。
しかも子供好きのバーンさんなら、こんな所に孤児が20人以上もいると解っていたら、きっと放っておかないだろうとは確信していた。
シェリーについてきた5人の冒険者はうどんを食べ終わり幸せそうにしている子供達を見て、微笑んでいる。そして早速この周辺に異常がないか、巡回しに行こうとしたので声をかけた。
「うどんはまだ残っているニャ。シェリーと一緒に、冒険者の人達も食べていくといいニャ」
「え? いいのか?」
「もちろんニャ。食べていくニャーー!」
シェリーと5人の冒険者にうどんを配ると、ニャーは考えていた事を皆に伝えた。
「シスターケイトとシスターアンナ。そして、子供達。これはニャーからの提案ニャ。もしよければ、明日からでも皆をニャーが雇うニャ」
また驚きの声。子供達よりも大きな声をあげたのは、二人のシスターだった。クウとルンは成り行きを見守っている。
「まずはうどんを作るんニャ。自分達の食べる分もそうニャけど、これだけ小麦粉など材料があれば大量にできるニャ。それをエスカルテの街や近くの村で売るニャ。あと荷馬車には、色々な作物の種も乗っているから、それも置いて行くニャ。それを使ってここで作物を作るんニャ。そうすれば、自給自足の足しになるしお金にもなるニャ」
シスターアンナが言った。
「その申し出は大変嬉しいのですが、そんな事……本当にできるのでしょうか?」
「アンニャ達にやる気があればできるニャ。作ったうどんや作物は、ニャーが手配した者が受け取りにくるようにするし、売ったりするのもニャー達がするニャ。だからアンニャ達は、よりいいものをここで作ってくれればいいニャ。それで出た儲けから、報酬もきちんと支払うニャ。やるかどうかは、自由ニャがやるかニャ」
いきなりの予想だにしなかったニャーの申し出に戸惑うシスター達は、子供達がどうしたいのか伺う。すると子供達は、皆やりたい、自分で畑を作ってみたい、もっとうどんを作ってみたいと言った。
「決まったようニャ。林檎や馬鈴薯も置いて行くから、食糧にしてもいいし売り物にしてもいいし、自由にすればいいニャ。畑ができれば、どの程度収穫できるかも決まって来るから、そうしたら色々また取り決めるニャ」
そう言うと二人のシスターは目に涙を溜めてまた頭をさげようとしたので、ニャーは「商談成立ニャ」と言って二人と強く握手した。
商売は自分の店だけで手いっぱいだけど、シスターケイトやアンナもいるし、今は傍でクウやルンも手伝ってくれている。だから、自分の商売をもう一段階レベルアップして手広くやってみるのも面白いかもしれないと思った。
なんせ、ニャーは商人だから。儲けてなんぼなのだ。




