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第460話 『こねくりまわせっ!』




「ミャオ、今日もしこの教会で一泊するんだったら、アタシは一度エスカルテの街に戻ろうと思う。まだ陽が昇っているうちに行って、また戻ってくる」


「つまりそれは……どういう事ニャ?」


「この教会の事を冒険者ギルドへ行ってギルマス、バーンさんへ報告してくる。ギルマスならきっとなんとかしてくれるし、この教会を魔物や賊から今後、襲われないように見回りの冒険者を手配してくれるから」


「ニャるほど。そうしてもらえると嬉しいニャー。ニャーの荷馬車を引いている馬を、1頭外して使えばいいニャ。どちらにしても、ここに暫くいるニャらその方がいいニャ」



 シェリーは頷くと、早速馬車に繋いでいる馬を1頭外して連れてきた。



「じゃあ行ってくる。夕方までにはまた戻ってくるから」


「シェリーの分も、晩御飯用意してるニャから、よろしく頼むニャ。気をつけて行ってくるニャ」



 シェリーは馬に跨ると、颯爽とエスカルテの街の方へ駆けて行った。あっという間に、見えなくなる。


 護衛のシェリーがいなくなってしまったのは少し心細いけど、夜までには戻って来るし、盗賊が出たらニャーが相手してやる。ニャーだってやる時はやる。


 会話を聞いていたシスターケイトとアンナが、戸惑っていた。



「え? そんなこと、いいのでしょうか? きっと冒険者ギルドの方々にご迷惑を、おかけしてしまうのではないでしょうか?」


「大丈夫ニャ、大丈夫ニャ。これも冒険者ギルドの仕事ニャンニャ。全て上手くいくニャ。とりあえず、この場所の治安の事は冒険者に任せてニャー達は、ニャー達の仕事にかかるニャ」



 そうシスター達に言うと、早速荷馬車からおろした小麦粉と塩、更に水等を準備し調理台の方へ運ぶ。そして、子供達を集めて指示をした。



「それじゃあ、これから皆に働いてもらうニャ。林檎も食べたし、もう問題なく働けるニャンニャ。働かニャるもの、食うニャからずって言葉があるからしっかりと働くニャ」



 すると、シスターたちが質問する前に子供達の一人が手をあげた。



「ニャ?」


「お仕事をするってこれから、何をすればいいんですか?」


「いい質問ニャ。まずはこれから君達には、今晩自分達が食べるものを作ってもらうニャ」



 子供達がざわつく。不安な表情をしている子もいる。だけど、それは直ぐに笑顔に変わるはずだと言っておこう。



「簡単ニャ。真面目にしっかりやれば、美味しいものが食べられるニャ。それじゃ、皆にこれから小麦粉とそれを固める粉、塩と水を配るからそれをこれから説明する通りに調整して、調理台の上でコネコネするニャ。こねくりまわすニャ。それじゃあ、開始! やってみるニャ」



 子供達は更にざわついた。でも説明したように、小麦粉に適量のさっき指示した物を加え、こね始めると直ぐに楽し気に作業をし始めた。


 あちらこちらから、ちらほらと笑い声も聞こえる。クウとルンも作業に加わって子供達と一緒にはしゃいでいるのも目に入った。



「いいかニャ。食べ物ニャから、ふざけてやるのはダメニャ。でも楽しんで和気藹々と作業するのは、とてもいい事ニャ。しっかりと美味しくなるように心を込めて、こねくり回すんニャよ」



 いよいよ、作業開始。最初子供達に会った時は、皆怯えていて表情も沈んでいた。でも今は、笑って楽しんで作業をしている。二人のシスターは、ニャーの所へきてまた深々と頭をさげてお礼を言った。



「本当になんとお礼を申し上げればいいのでしょうか。ミャオさんは、わたくし達の天使です。この御恩は一生忘れません」


「ニャーー。ニャーは天使じゃないニャ。商人ニャ。儲けにならない事はしニャいから、ちゃんと返してもらうニャよ」


「わたくし達にできる事であれば、なんなりとお申し付けください。それでも、感謝し足りないでしょうが誠心誠意をもって、お礼ができればと思います」


「そうかニャ。それニャら、早速お願いニャ。全員分のスープを作るから、うんと大きな鍋が欲しいんニャけど、あるかニャ」


「それなら、教会にあります。早速準備します」



 シスターケイトはそう言うと、アンナと共に教会の中へ入っていき、少しして大きな寸胴鍋を持ち出してきた。おお、これなら十分。


 ニャーは、シスターケイトとアンナと共にスープ作りを始める事にした。


 薪を用意し、焚火をおこす。大きな寸胴鍋に水を張って火にかける。


 そのものものしい光景に、何をやっているのかと目を輝かせて子供達が集まってきたので、「もっと小麦粉をねってねってねりまくっていい感じにするニャ」と言って追い払った。子供達は笑いながらワーーっと逃げていき、再び作業を始めた。


 今度は、店から売り物として持ってきていた干しキノコと鶏ガラ、シスターアンナが必死に集めて回った野草の中から、いい出汁になるものを選んで寸胴鍋に放り込む。そこへ塩や醤油などの調味料も投入し、煮詰める。



「さあこれで、もう少し煮込めばスープの出来上がりニャ」



 シスターケイトとアンナにそう告げると、今度は荷馬車に積んでいる武器、短剣や斧を降ろしてシスターに手渡す。今度は、そこらに生えている木の枝を斬り落として皮を向き、麺棒を作る様に指示した。


 麺棒と聞いて、シスターケイトははっとする。そして、子供達が捏ねている粘土のようになったそれを見てニャーの顔を驚いたままの表情で見つめた。



「も、もしかしてミャオさんが作ろうとしているものって……」


「そういう事ニャ。今、子供達が頑張ってこねくりまわしている物は、十分な感じになったら今度は少し寝かさないといけないニャ。だからその間に、麺棒とお箸を作ってしまうニャ。そうそう、全員分の器もいるニャ」



 そう、ニャー達が作っているものは、かつてアテナが作ってくれた東方の国で流行っているという料理、『うどん』だった。

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