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第46話 『店番』 (▼ミャオpart)







 ――――エスカルテの街。


 珍しい事にアテナから、ニャーへ手紙が届いた。


 ラスラ湖で、アテナとローザが王国騎士団に連れ去られてから凄く心配していたが、どうやら今は楽しくやっているようだ。良かった良かった。


 ――――だけど。



「まさかあのアテニャが、実はこの国の王女様だったって言うのは、本当に驚いたニャ。でも、それニャら今度この店に来店したら、山程お買い物をしてもらえるニャ。そうなったら、ウハウハニャ! ニャハハ」



 手紙の発送元は、ニガッタ村となっている。…………ニガッタ村と言えば、ライスが特産品で結構商人で賑わっている村。ほほう。そんな所にアテナは、いるのか。


 ニガッタ村の、ライスは特に美味しいと聞く。…………ニャーも行けば良かったかもしれない。上質のライスを仕入れてエステカルテで売れば、きっと儲けになるはず…………ニヤリ。



 チリンチリン。



 店にお客さんが入ってきた。



「いらっニャ……いらっしゃい」


「ここは、ミャオの店かい?」


「そうニャ」


「武器は、置いてあるか?」



 剣士。冒険者のお客さんだ。武器をお求めに来たようだ。勿論、当店は武器も色々取り扱ってる。



「あるニャ、あるニャ。剣、槍、斧、棍棒、ニャイフ、なんでもあるニャ」


「うむ、見せてもらおう」


「こちらになるニャ」


「ほう。これはいい剣だ。じゃあ……これと、そっちのニャイフをもらおうか」


「この剣とニャイフニャね! ありがとうニャー。それだと、お支払い金額はこちらになるニャ」


「うむ。金を出すからちょっと待ってくれ。…………ん? この茶葉みたいなものは、なんだ? いい香りがするな」



 あっ。それは、アテナの持ってきた薬茶……………………前に沢山、買い取ったけど、なかなかの人気商品になりつつある。このお客さんも、興味津々だ。



「薬茶ニャ。それを飲めば、体力回復ニャ。色々な薬草をブレンドして、味も美味しいし、色々な方面で癒されるお茶ニャ」


「なるほど! 気に入った。これは、この小袋で販売しているのか。よし、この薬茶も3袋もらおう」


「お買い上げ、ありがとうニャーー」



 ……………………アテナの持ってきた薬茶がまた売れた。アテナが聞いたら喜ぶなあ。


 …………そういえば! アテナからの手紙が途中だった! お客さんも帰ったので、再びアテナからの手紙の続きを読み始めた。


 ――――ルキアっていう猫の獣人が新しくパーティーに入ったから、今度エスカルテの街によったら紹介するって書いてある。ルキアは、奴隷商に売り飛ばされそうになっていた所をアテナが助けたのか。


 何があったかも、手紙に書いてあるけど内容を読んでいると組織めいたものを感じるなあ。アテナも、相変わらず危険な事に首を突っ込む。大丈夫なのかな。


 そして、ニガッタ村で、ルシエルと合流して、今度はガンロック王国に向かうんだそうだ…………なんて、前のめりなんだろう。


 …………でもアテナは、この国のお姫様なんだから、勝手に旅して自由に歩き回ったり、別の国に入国してって…………大丈夫なんだろうか。心配になってきた。そんな事に思いを巡らせていると、再び店の扉が開いた。



 チリンチリン。



 新たにお客さんが店に入って来た。



「いらっニャ……いらっしゃい」


「わーーー!! 色々なものがあるー!!」


「すごーーい! こっち! 剣だってあるよ!!」



 子供が、4人も入って来た。4人とも獣人の子供だ。珍しいお客さん。誰かのおつかいかな。


 男の子が、店に置いてある商品の中から、剣を掴んだ。



「勝手に商品を触らないで欲しいニャ。剣も触っちゃダメニャ。危ないニャーー」


「ええーー。ちょっと位いいでしょ」


「いいじゃーーん」


「駄目だってお店のお姉さんが言っているでしょ。こら! ミラール! ロン!」



 ん? 何処かで聞いた名前…………さっき、何処かで…………



「ごめんなさい。すぐ、おとなしくさせますから」



 この女の子は、しっかりしている。一番お姉さんで、他の三人の面倒を見ているって感じかな。



「ニャーー。それで、ニャにかお探しかニャ?」


「ちょっと、天気がいい日に街の外で、薬草とかキノコとか採取に行こうと思って。水筒とか、ナイフとか、ザックが欲しくて」


「それだと、4人分かニャ。なかなかの金額になるニャ。お金はあるのかニャ?」


「ええ。バーンさんからちゃんと、預かってきて…………こら! ロン! 走り回らないで」


「クウ、おしっこ…………」


「ルウ。もうちょっと我慢してね」



 …………バーンさん? バーンさんって、あのバーンさんの事?



「一応、金貨3枚、預かってきましたので、これで足りると思うんですけど」


「ニャ!! ニャーンさんって、ギルマスのニャーンさんニャ?」


「ええ。 はい、そうですが」



 間違えない!! この子達は、あの子供達だ!



「君の名前は、もしかしてクウかニャ?」


「え? なんで知って…………」


「この小さい子がルンだニャ!  そこの走り回っているのが、ロンで、注意してもまるで剣を触る事をやめない子がミラールニャ!」



 そう言われたミラールは、一瞬ビクっとした。そして、剣をもとに戻した。


 思い出した! っていうか、さっきアテナから届いた手紙に書いてあった名前。奴隷商にひどい目にあわされて、売り飛ばされかけた所をアテナが助けた子供達。エスカルテの街で、バーンさんが面倒見ることになったから、ミャオもお願いって書いてあった。



「あの…………どうして、私たちの名前を知っているのでしょうか?」


「ニャニャー!! ニャーは、アテニャの友達ニャー」


「アテナさんの⁉ ほんとに?」


「そうニャ! アテニャの友達としても、同じ獣人としてもほっとけないニャ。これからは、なんでもニャーを頼るといいニャ。必要なものは、持っていくといいニャ。そこのちびっこは、奥にトイレがあるから、さっさと行ってくるニャ。万が一の事態でも、この店にはパンツも売ってるニャ。なんでもあるから、なんでも持っていくニャー」


「え?  でも、代金をお支払いしないと…………」



 クウは、そういってお金を取り出した。だけど、受け取らない。――受け取れない。



「ニャーンさんからもらったそのお金は、他の事に使うといいニャ。君たちが今日、うちで買い揃える物は、ニャーからのプレゼントニャ。遠慮せずにもっていくニャ」


「あ…………ありがとうございます」


「ニャニャ! ついでにこの薬茶も1袋づつ持っていくニャ。きっと飲んだら、とんでもなく美味しいと思うはずニャ。例えるなら、魔法の薬茶ニャ」



 ――アテナの特性の薬茶。


 子供たちは、何度もお礼を言って店を出て行った。別に、損はしていない。あの子たちは、これから絶対にビッグになるはずだから。解りやすく言うなら先行投資だ。



 チリンチリン



 またお客さん! 今日は、よくお客さんが来る日だ。



「いらっニャ……いらっしゃい」


「もう、いらっニャいで、いいんじゃねえか」



 店に入ってきたのは、この町のギルマスだった。



「あの子たちは、今回初めてのおつかいだったんでな。ちょっと心配になったんで、隠れて見ていたぜ。…………おまえ、いいところあるな」


「なに言ってるニャ。アテニャからの手紙にちゃんと書いてあったニャ。ニャーンさんと、エステカルテの冒険者ギルドが、あの子たちの面倒をみるって書いてあるニャ。だから、あの子たちの今日のお買い物は、後ほど全て冒険者ギルドの方へ請求させてもらうニャ」


「ええええー。マジかよーー!! 鬼だな」


「鬼じゃないニャ。猫ニャ」


「くーーーー。まいったなーー。じゃあよ、それでいいからよ。一つ、お願いがあるんだけど、いいかな?」



 バーンさんは、両手を合わせて祈るようにお願いしてきた。いったいなんだ? お願いって? 聞くだけ聞いてみることにした。



「なんニャ。いうだけ言ってみるニャ」


「いいのか! じゃあ…………これが何か、口に出して言ってみて。因みに、これは生だ」



 そういって、バーンさんは店のカウンターの上に持っていた卵を置いた。



「はい、言ってみて?」


「……………………ニャニャタニャゴ…………」



 バーンさんは、にっこりした。



「………………」



 ――――っは!! 


 まさかこの男…………店に来たのは、こっちが本命かニャ…………









――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ミャオ・シルバーバイン 種別:獣人

猫の獣人で、言葉の語尾などに「ニャ」ってつける。猫の獣人が全てニャンニャン言葉ではなく、ミャオはたまたまそういう種族というだけ。アテナとは同年代で16歳。16歳にして、商人でエスカルテの街で古道具屋を経営している。一応「ミャオの店」という名前があり、古道具屋っていうのはアテナがそう呼んでいる。金にがめつく、利益で動くが時には情でも動き、友情を大切にするなんだかにくめない少女。アテナと友人になった経緯は、謎。本作20話であるラスラ湖の一件で、友人の冒険者アテナがこのクラインベルト王国の第二王女であると知る。しかし、特にどうという事もなく友人である事も変わらず、王族であるのならもっと商品を購入してもらってお店に貢献してもらうと企んでいる。


〇お客さんの剣士

エスカルテの街を拠点としている冒険者のおじさん。回復アイテムや装備など必要なものがあれば、専門店を回る前にまずミャオの店に顔を出している。独身であるが、知り合い(※冒険者ではない)が結婚し娘ができたのでそれを見せられると、自分も家族を持つのもいいなと最近は思っている。ミャオを見て、こんな娘がいたら毎日が楽しいだろうと思っており、ミャオのお店を贔屓にしている。もちろんミャオはその事を知る由もない。


〇4人の子供

バンパ率いる賊に馬車に押し込められて、奴隷のように鎖で繋がれていた。7人中、レーニとモロという子供は馬車内の酷い環境で既に息絶えていてアテナは助ける事ができなかった。アテナについて行ったルキアを除いて4人は、バーン・グラッドの庇護を受けエスカルテの街で平和に暮らしている。一番の年長者は、ミラールだが皆のお姉さん役であるクウが物凄くしっかりしている。

ミラール = 狼の獣人の男の子

ロン   = 犬の獣人の男の子

クウ   = 狐の獣人の女の子

ルキア  = 猫の獣人の女の子

ルン   = 狸の獣人の女の子


〇バーン・グラッド 種別:ヒューム

クラインベルト王国、エスカルテの街の冒険者ギルドに勤める。ギルドマスターでこの周辺の冒険者ギルドでは最も権力のある人。ラスラ湖の一件で、アテナの居場所をアテナの父である国王に知らせた為、アテナに恨まれる。しかし、そのアテナの頼みでミラール達を保護したので多少は許されたと思っている。気さくで、実はアテナに負けない位の優しい人物。大剣を得意武器としていて、その強さはSランク冒険者。筋肉ムキムキ。


〇エスカルテの街 種別:ロケーション

クラインベルト王国にある、大きな街。王国内でも王都を除けば2番目に大きな街とされている。冒険者ギルドや宿屋。銀行に武器屋に防具屋。それにカフェなどあらゆるお店が揃っていて活気に溢れている。


〇ラスラ湖 種別:ロケーション

クラインベルト王国にある3本の指に入る程と言われている美しい湖。キャンパーや冒険者がそこで湖畔キャンプを楽しみ、王族や貴族がそこでお茶をしたりもするという。ミャオもアテナやルシエル、ローザと共にラスラ湖でキャンプやバーベキューをした。それは、騎士団の任務へ戻らなければならないローザへの送別会のつもりだったがアテナとも別れる結果となった。


〇ガンロック王国 種別:ロケーション

アテナ一行が現在いるだろうとされる、クラインベルト王国南東に位置する荒野が広がる国。ミャオは商売で一応その国の事を知っているので、アテナがそこにいてるとしても、それ程驚いていない。


〇薬茶 種別:アイテム

アテナが依然クラインベルト王国を中心に活動していた時に、薬草が自生している森を回って作ったお茶。身体を温めてくれて癒してくれる効果だけでなく、味も香ばしくて美味しい。ミャオのお店にアテナは自作の薬茶を納品しているが、その良さが口コミで広がりつつある。


〇アテナからの手紙 種別:アイテム

アテナがルシエルとニガッタ村で合流を果たした後、ラスラ湖のキャンプでの一件でミャオが心配しているかもしれないと思って彼女宛に手紙を書いた。その内容の中には、ルキアとの出会いや彼女がパーティーとして仲間に入った事など書かれている。あと、また一緒にキャンプしようねとも書かれていた。アテナの書いたミャオとルキアとルシエルの似顔絵入り手紙。


〇ニャイフ 種別:武器

ミャオが自分のお店で販売しているナイフ。お客さんの中には、ミャオのニャンニャン言葉に反応して、そのままニャイフと発音してくる者もいる。


〇ニャニャタニャゴ

バーンがミャオにずっと言わせたかったランキング1位の言葉。生卵の事。この件に発展させるために、バーンは自分の家から生卵を懐に入れてミャオのお店にまでやってきた。途中、誰かとぶつかったりして懐の生卵が割れるとか、そういう事にならないように十分に注意するほどの徹底ぶりだった。因みに、お店に来るまでに飲食店の生ごみを見つめ、ついでにニャニャゴミとも言わせてみたかったそうだが、生ごみを持ちたくない為、泣く泣く諦めたとか……


〇お金 種別:通貨

クラインベルト王国には紙幣は無く、下記6種類の硬貨が使用されている。他国も貿易などをより円滑に進める為に、ほとんどが同じ物を使用して通過を統一しているが、中にはそうでないその国独自の通貨を使用している国も存在する。


銅貨

大銅貨 = 銅貨10枚分

銀貨  = 大銅貨10枚分

大銀貨 = 銀貨10枚分

金貨  = 大銀貨10枚分

大金貨 = 金貨10枚分



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