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第456話 『シスターアンナ』



 逃げまどうシスター。ニャーはシェリーと一緒に、ウルフ達に向かって行く。武器を向け、振りまわして叫んで威嚇すると追い散らす事ができた。


 ウルフと言う魔物は、本来はもっと群れで行動し獲物を襲うので、シスターを追っていたのは3匹しかいなくて良かったと思った。


 安心したからか、逃げまどって疲れたのかは解らないけど、その場にへたり込むシスター。ニャーとシェリーは、そのシスターのもとに行き、彼女に声をかけた。


 顔をあげるシスター。逃げまどっている時についたのか、顔は泥で汚れていた。でも、シスターが若くて可愛い女の子というのは見て解る。



「怪我はないかニャ?」


「は、はい。わ、私はシスターアンナと申します。魔物に追われている所を、救って頂いてありがとうございます」


「ニャーは、エスカルテの街の商人、ミャオ・シルバーバインニャ。こっちは、護衛をしてくれている冒険者のシェリー・ステラニャ。怪我はないかニャー」


「はい。ミャオ様、シェリー様。お二人のお陰様で命を失わずにすみました。ありがとうございます」



 見た所、汚れてはいるが特に怪我はしていないようだった。だけど、この汚れが気になった。


 もちろんさっきのウルフに追いかけ回され、転んだりしてついた汚れもあるだろう。でもそれ以前について、取れなくなった汚れのようなものも、彼女がきている修道服にはあった。破れている個所も多々ある。


 そして、こう見えても商人であるニャーの嗅覚はごまかせない。失礼だけど、彼女はとてもお金を持っている風には見えなかった。



「つかぬことを聞くニャけど……シスターアンナは、どうしてこんな所でウルフに襲われて走りまわっていたんニャ?」


「私は食べられる野草が無いか、探しておりました。そしたら、いきなり現れたウルフに襲われて……」


「そういう事かニャ。それで、野草は集まったのかニャ」


「す、少しは採取できました。ですが、草原の向こうに置いてきてしまって……折角集めたものですが、ウルフに追い回された時に放り投げてしまったのです……ですから、これから回収しにいかないと」



 こんな魔物が出そうな所で一人、野草を集めて回らないでも、近くにエスカルテという大きな街があるのだから、そこか何処か近場の村で食べ物を購入すればいいのに。


 ――そう思ったけど、それは口にはしなかった。彼女はどう見ても貧しくて、きっとお金を持っていない。だからこの辺で見つけられる、何か食べ物を探していると察したからだ。



「それでは、もう行きます。助けて頂きましてありがとうございました。ミャオ様とシェリー様にも、神のご加護がありますように」



 シスターアンナはそう言って、集めた野草を回収しに立ち去ろうとした。刹那、シスターアンナの腹が、ぐーーーーっと大きく鳴った。


 顔を真っ赤にするシスター。ニャーは、大笑いした。



「ニャッハッハ!! もしかしてお腹ペコペコニャンニャ?」



 シスターアンナは、本当に恥ずかしそうにしてこたえた。



「……は、はい。もうかれこれ4日は、水だけで生き延びてまして……」



 冗談だと思った。だけど、確かに彼女の身体をよく見てみると、物凄い痩せ細っている。いったい何があったのだろうか? 


 修道女であれば教会に勤めているはず。教会に勤めていれば教徒からの献金とかあるだろうし、それで普通に生きていけるはず……別に教会に関しては詳しくはないけれど、そういうものだと思っていた。



「良かったらニャーの馬車に乗るニャ。集めた野草を置いてきた場所が草原地帯なら、馬車で行けばいいニャ。その方が安全ニャンニャよ」


「そ、そんな。そうして頂けるのならとても嬉しいですが……でも、もしかしたらさっきのウルフが更に仲間を連れて戻ってくるとも限りませんし」


「問題ない。そうなればあたしがこの剣でまた追い払ってやるよ! あたしは、冒険者だ。シスターと違って魔物退治は専門だ」



 シェリーが先にそう答えた。なら、何も問題はない。ニャーは、街道の脇にとめてある馬車の方を指さしてシスターに見せた。



「そういう事ニャ。あっちにニャーの馬車があるニャ。それと連れが他に2人いるけど、気にしなくていいニャ。ニャーの身内だニャ」


「ほ、本当によろしいのでしょうか?」


「よろしいニャ、よろしいニャ。困った時はお互い様ニャー!! ニャから、もしこの先ニャーがピンチになったら、今度はシスターがニャーを助けて欲しいニャ」


「そ、そんなの当然です。何もなくたって、私はミャオ様やシェリー様をお救いいたします」


「ニャンニャンニャー」



 首を傾げるシスターに、シェリーが「ウィンウィンだってさ」と、短く言った。


 シスターアンナを連れて馬車に戻ると、クウとルンが武器を構えて待っていた。シェリーが二人に近づくと、もういいから武器をしまえと伝える。



「もう危険はない! クウ、ルン! 二人とも武器をしまえ」


「え? あ、はい!」


「うん」



 二人はニャーに武器を返そうとしたので、それをそのまま持ってていいと言った。それで特に喜んだのはルン。



「え? 本当に持ってていいの?」


「いいニャ。護身用ニャ。でも、それは玩具じゃないニャ。使い方を誤れば、人を傷つける事だってあるニャ。ニャから、必要な時にだけ鞘から出して、十分に注意して使うニャよ」


「はーーーい」



 返事だけはいつも良いルン。クウの方は、いきなり何処かから拾ってきたシスターの事が気になっている様子。なので、説明した。



「初めまして、クウさん。ルンさん。私はシスターアンナです。魔物に襲われていた所を、ミャオ様とシェリー様に助けて頂きました」


「はい。アンナさんが集めた野草、置いてきただいたいの場所は覚えていますか?」


「ええ。あの草原のもう少し向こうです。そこまでは、案内できます」


「そうですか。ミャオ、じゃあ早速取りに戻ってあげませんか?」



 そう言ったクウに、ニャーはウインクして見せた。



「もちろんそのつもりニャー。それじゃ皆馬車に乗り込むニャ。行くニャよー」



 全員馬車に乗り込んだ。ニャーが御者の席に座ると隣にシスターアンナが、案内する為に座った。すると荷台の方からルンが顔を出して、そのまま無理やりにニャーとシスターアンナの間に割り込んで座った。


 ルンに「こら! 後ろにいってるニャ!」と注意しようとしたけど、シスターはそんなルンを見て笑っていたので言うのを止めた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇シスターアンナ 種別:ヒューム

聖職者。エスカルテの街近くにある森の中にある教会に住む、若いシスター。

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