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第454話 『ニャー達のちょっとした旅』



 クウとルンも一緒に、ニャーの商売につれていく事になった。バーンさんは、荷馬車を用意してくれた。この人は見かけによらず、本当に過保護だなと思う。


 そしてクウとルンと一緒に、荷車から馬車へリッチーから買い取った例の品物を積み替えた。馬も荷馬車へと繋ぐ。


 そして、テントなど必要なものなども馬車に全て乗せ終わると、ついでにクウとルンにお金を持たせて、ニャーのお気に入りのお店へサンドイッチを買いに行かせた。二人とも凄く喜んで、ルンにいたっては跳び跳ねていた。


 あのお店のサンドイッチは絶品。使用している具材に関しては、もはや言うまでも無い事かもしれないけれど、その具材を挟むのに使用しているパンも物凄く美味しい。


 しかも今日みたいに朝一で購入しに行くと、パンはどれも焼き上げたばかりで、まるで空に浮かぶ雲のようにふわっとしていてモチモチっとしている。あ、ダメ。考えるだけでもよだれが垂れる。


 ニャーは、淑女なので誰かさんみたいによだれは垂らさない。……誰かっていうのは、言うまでも無い事だけど、あえて言ってしまえばアテナとルシエルの事である。あの食いしん坊シスターズの、はしたなさと言えばもう……プププププ。



「ミャオ! サンドイッチ買ってきましたー!!」


「ちゃんと、5人分買ってきたよーー!!」


「クウもルンも、ご苦労様ニャー。それじゃあそろそろ、出発するニャー!! 店の戸締りは、きっちりやったかニャ?」


「はいっ! しました」


「しましたーー」


「じゃあ、二人とも馬車に乗り込むニャよ。ニャー達の冒険が今、幕をあけるのんニャー!!」



 嬉しそうに、はしゃぎまわる二人。そう言えば、常日頃からお使いなどはしてもらっていたが、このエスカルテの街にやってきてから、ミラールやロンやリアと一緒に2度程カルミア村に行った程度で、ろくに街の外へ出ていない。


 いくら外の世界は、魔物や盗賊が出没するからと言っても、いつかは出ておかないといざ何かあった時に何もできないし、知らない事ばかりになってしまう。知ることは、力でもある。

 

 ダダをコーネコネされて、勢いで商売に連れていく事になってしまったけど、これはこれで良かったのかもしれない。いいタイミング。


 クウとルンが馬車に乗り込んだのを確認し、出発した。早速、二人はニャーがいる前の御者が座る席に割り込んできて座ると、周囲をキョロキョロと眺め楽しそうにした。


 いつも眺めている街。だけど今は、これから街を出る為に馬車に乗り込み大通りを走っている。その馬車からの風景は、いつも目にしている街でもかなり違って見えるのだろうと思った。


 蹄の音。馬車に揺られながら、街の出入口の門までやってくると、そこにバーンさんともう一人――冒険者風の女性が待っていた。



「ニャーンさん。ルン、ニャーンさんにあれを渡して」


「うん。はい、バーンさんどうぞ」


「おっ! なんだこりゃ! まさか、俺に朝食か!?」


「そうだよ! ルンがバーンさんに選んで買ったんだよ!」



 にっと白い歯を見せて無邪気に笑うルン。バーンさんは、ルンから受け取ったサンドイッチの入っている包みを受け取るとルンの頭を撫でた。



「そうかー、ありがとうなールン。それにクウとミャオも。しかし、まいったなー。こんな事なら俺も一緒に同行したかったぜ」


「それならついてくればいいニャ」


「そうしたいのは山々なんだが、生憎仕事が山積みでな。それで、代わりにこのレディーがお前らのボディーガードをしてくれるって訳だ」


「だれが、レディーだ! 調子のいい事ばかり言いやがって!!」



 見ると、確かに強そうな如何にも女剣士って感じの冒険者。腰に吊っている剣も立派なロングソード。



「ミャオ・シルバーバインニャ。商いの道中の警護、よろしく頼むニャ」


「私はミャオのお店の住み込み見習いをしている、クウ・ウルペースです」


「ルン・タッソだよ。ルンもミャオのお手伝いしているの」


「そうか、承知した。アタシは、シェリー・ステラだ。Cランク冒険者だが、剣の腕と腕力には自信がある。先に言っておくがアタシは、はっきり言って子供は嫌いだ。だが、馬車に積んでいる商品を取引し終えるまでの護衛という短い期間の依頼と、他ではないギルマスの頼みと言う事で引き受けた。よろしく頼む」


「よ、よろしくニャー」



 会うなり、はっきりと子供が嫌いと言い放つシェリー。その言葉に流石のルンもクウも表情が固まった。バーンさんがフォローする。



「ま、まあこんな奴だけどよ。Cランクだしあれだけどシェリーは、ちゃんと頼りになる奴だ。それに俺はこう見えても、一応こんなでかい街のギルドマスターをやっているからな。人選だって、自信がある訳だ。だから、まあ4人で仲良く旅を楽しんでくればいい」



 うーーん。確かにまあ、バーンさんの人選なら間違いはないと思う。だけど、子供嫌いと公言する人にクウとルンの護衛が務まるのだろうかと思った。


 シェリーも荷馬車に乗り込む。



「それじゃ、行ってきまーーす!」


「気を付けて行って来いよ。何か助けが必要になれば、冒険者を見つけて俺の名前を出せ。そして助けを求めろ。解ったな」


『はーーい』



 ルンとクウは頷いて、バーンさんに手を振った。バーンさんも手を振り返す。そして、ありがとうとばかりにサンドイッチの入った包みも振って、これ見よがしにルンとクウに見せびらかした。


 門をくぐり抜け、街の外へ出る。


 ルンとクウは目を輝かせて、外の世界を遥か向こうまで眺める様に見まわした。

 

 こうして、ニャー達のちょっとした旅が始まった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇シェリー・ステラ 種別:ヒューム

女剣士。エスカルテの街を中心に活動している、Cランク冒険者でクラスは【ソードマン】。本人は子供嫌いとはっきりと言っているが……

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