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第433話 『ハーフドワーフは、もじもじしている。』




 ――――ドワーフ王国で皆と別れた私達は、ゾルバ・ガゲーロが率いる鎖鉄球騎士団に守られながらもノクタームエルドからクラインベルト王国を目指していた。


 私達の行く手に立ち塞がり邪魔ばかりしてきた鎖鉄球騎士団が、今度は私達の警護をしてくれているというのが、なんだか不思議で面白く思えた。けれどゾーイや副長のガイは、かなりの手練れなので反面心強く思った。


 それが魔物達にも何かを感じさせたのか、道中何かが襲ってくるという事はなかった。


 もう少しでロックブレイク近くという所までくる。洞窟内の拓けた空洞に出たので、ここで少し休憩をとることになった。


 ゾルバの話では、ロックブレイクやロッキーズポイントにはもう寄らないという。さっさと、私をクラインベルト王国へ連れ帰りエスメラルダ王妃の前に連れ戻して任務を完了させたいのだろうと思った。


 確かに思えば、クラインベルトからガンロック王国、そしてノクタームエルドだもんね。私達が旅した距離をゾルバ達もしてきたということ。そう考えると、少しはゾルバの身にもなれた。



「ねえ、ゾルバ」


「はっ! いかがなされましたか、アテナ王女殿下?」


「ここで休憩するんだったら、私達だけで向こうで少し固まっていていい?」



 目を細めるゾルバ。



「心配しなくても、もう逃げないってば! 正直に言うとまた逃げるかもだけど、エスメラルダ王妃と会うまでは、ちゃんとあなたの顔を立てて逃げないから安心して。リザードマンがドワーフの王国を襲った時にあなたと私の間で約束したでしょ。ちゃんと、約束は守る」


「それでしたら、ご随意にどうぞ。ですが、魔物に遭遇するとも限りません。我々の目の届く範囲にいらしてください」


「はーーい、わかりましたー」



 返事をすると、私は仲間のもとに戻った。


 ここでは恐らく長くても1時間位しか休憩しないと思うけど、ルシエルとマリンはいそいそと焚火を作っていた。それをルキアとカルビは、呆れた顔で見ている。



「どうだ、マリン! こうやって火を熾して焚火をするんだぞ!」


「知っているよ、そんな事。ボクは料理はちょっと自信はないけれど、キャンプは何度かしてきたんだよ。火を熾すなんて朝飯前だよ」


「おいおい、そんなこと言って魔法で火を点けるんじゃないだろうな。もしそうならキャンパーとしてそれは、情緒がないと言わざるおえん事なんだぜ」


「こーーら、何をやってるの、二人とも」


「ああ。マリンがキャンプについて、偉そうなことを言ったので、ひとつこいつのキャンパーレベルを測定してやっていた所だ」


「こいつとか言わない。マリンって可愛い名前があるんだから、マリンって呼んであげなさい」


「か、可愛い……ボクの名前をそう思ってくれていたんだね。ありがとう、アテナ」


「オ、オレだってそうは思ってたぞ! ホントだぞ、マリン」



 マリンは自分の名前を可愛いと言われた事がよほど嬉しかったのか、眠たげな眼を可能な限り見開いて驚いていた。


 そんなやり取りをしていると、向こうのいくつかある岩の辺りから、何者かの気配がした。私とルシエルがその事にいち早く気づくと、ルキアとマリンにも小声で「そこに誰かいる」と教えた。


 鎖鉄球騎士団かとも思ったけれど、ゾルバの方を見ると彼らも固まっている。それに、気配。殺気のようなものは感じないけど、何か私達の事を観察している……というか、じとーーーっとした何かを感じる。


 ルシエルが言った。



「よし、オレに任せろ!! このままじゃ、ずっと気になるし、オレ達の後をつけてきている気もする。ここで、はっきりさせりゃあいいだろ!」


「そ、そうかな? じゃあ、お願い。殺気は感じないけど、それでも何者か解らないから十分に気を付けてね」



 ルシエルは、帯刀している太刀『土風(つちかぜ)』の柄に手を添えると、その気配のする岩の方へ忍び寄った。私とルキアとマリンは、そのまま気づかないふりをしている。カルビは、ルキアが抱きしめて騒ぎ出さないようにした。


 気配のする岩の手前。ルシエルがそこまで移動すると、さっとその前に躍り出て大声を放った。



「誰だ!! 出てこい!! もうお前がこっそりとつけてきているのは、バレているんだぞ!! バレバレだ、神妙にしやがれ!!」



 岩の裏側に飛び込む。隠れている者の正体を確認したルシエルが、驚きの声をあげた。そして直ぐに、岩陰からルシエルと共に一人の少女が姿を現した。


 私達の後をつけてきていたのは、髪の毛をサイドテールに結った褐色の肌をした可愛い女の子。背中には、その小さな身体に見合わない大きなバトルアックスを背負う。ハーフドワーフのノエル・ジュエルズだった。


 これには、一同驚いた。ノエルは、頭をポリポリと掻くと照れ臭そうに言った。



「ミューリとファムは、後始末などあって一緒には行けないが……あたしは行ける」


『は?』



 あまりの事態にルシエルと、ハモってしまった。



「だからーー、あたしならあんたらと一緒に冒険に出れるって言ってやってるんだよ」


「ええええーーー!!」



 ルキアが声を張り上げて驚くと、鎖鉄球騎士団がこちらにこようとした。なので、私は問題ないと手を振って騎士団に伝えた。



「それで、どういう事なのノエル? 行けるってどういう事? 私達と一緒にパーティーを組むって事?」


「だから行ってやってもいいと言っている」



 ノエルは私の質問にそう答えると、目線を斜め下に落とし顔を赤くした。それを見たルシエルが騒ぎ出した。



「はっはーーん!! さてはあれだな!! 自分の住んでいる国の王子を何度も意識がなくなるまでぶん殴ったもんで、国にいれなくなったな? 指名手配か? あん、指名手配なのか?」



 特に否定をせず、ルシエルの質問に押し黙るノエル。そして、私の顔を伺った。



「……なるほどね。いいわ、それじゃ一緒に旅をしましょうか」



 私はそう言って、ノエルに手を差し出した。すると、ノエルはもじもじする仕草を見せつつも私のその手を握った。


 すると、ルシエルとルキアも続いてノエルと握手して彼女を歓迎した。


 こんな感じでクラインベルト王国に戻るまで、私達のパーティーに新しくマリンとノエル、そしてゾルバ率いる鎖鉄球騎士団が加わった。


 クラインベルト王国までは、結構まだ距離があるけれど、これだけ面白そうな仲間がそろっていると退屈する事は無いなと思った。

読者 様


当作品を読んで頂きましてありがとうございます。

また、ブクマ・評価・イイね・ご感想・誤字報告等して下さった読者様には、重ねてお礼申し上げます。

感謝感謝でございます(ノД`)・゜・。とんでもなく、励みになっております。


長かった第三章『闇世界の者達』もこのお話で、ようやく終わりになります。

本当に長かったですね(笑)

でも読者様が少しでも楽しんで頂けましたら、この上ない幸せでございます。


さて、物語にも出て参りましたがアテナはこの後、果たしてパスキア王国へ向かうのでしょうか。

そしてテトラは、メルクト共和国を救えるのかどうか後編に突入といった感じになります。


そんな訳で、まだまだアテナ達の旅は続きそうです。


私自身、この作品が初作品でありまして作品を投稿する上で至らない所も多々ありますが、これからも皆さんに読んで頂けたらいいなと粉骨砕身頑張っていこうと息巻いております。


これからもどうぞ、よろしくお願い致します。m( ˘ω˘)m


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