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第431話 『ドワーフの王国、別れの時 その1』




 ミューリとファムは、私の差し出した手を掴んだ。それを見てルシエルとルキアは、飛び跳ねる。


 だけど、火と風使いの可愛い姉妹は悲し気な表情で、顔を横に振った。私は、それですべてを察した。……いや、それは違うかな。薄々はそうだろうなと感じ取っていたという方が正しいかもしれない。


 だけど、ミューリとファムとのノクタームエルドの冒険は、とても楽しかったしミューリは気遣いのできる優しい子で、ファムとルシエルのコンビは痛快だった。だから、望みを賭けて最後に仲間に誘ってみた。


 私は、二人の顔を見つめてもう一度気持ちを確かめる。



「ずっとじゃないし、ずっとでもいい。私やルシエルやルキアは、お互いに信頼し一緒にいて楽しいからパーティーを組んでいるの。だから、この先ずっととかそういうのは、自分で決めていい。ミューリとファムとの冒険は、凄く楽しかった。だから、もう少し一緒に冒険できたらなって思って」



 ルシエルとルキアも、続いて言った。



「こいよ! こっちこいよ! ファムには、あの空を飛行できる風魔法をまだ教えてもらってないしな。教えてくれよ。なあ、もっと一緒に冒険しようぜ」


「私もミューリやファムと、もっともっと一緒にいたいです! 別れたくないです!!」



 ミューリとファムは、にこりと微笑みながらも目に涙を溜めて言った。



「ファムも一緒にいたい。もっと皆と冒険をしたいし、ノクタームエルド以外の世界も見てみたい。だけど、ずっとミューリと考えて出した答えがこれなんだ。ファム達は、君達より陛下を選んだ。アテナや皆を、あのドルガンド帝国の反吐ができるような嫌な将軍に引き渡そうとした。今更……」



 ファムの言葉を途中でルキアが遮った。



「違います、それは物事を片方から見て言っているだけだと思います!! ファム達は、国を救おうとしたんです! 王様を救う事は、国を救うという事に繋がります。現に、王様を救い出してこの国はリザードマン達の侵攻から守られましたよ! だから、そんな事を言わないでください」


「ルキア……」



 ルシエルも、ルキアの言葉にうんうんと頷いている。



「ルキアの言う通りだな。まあ今だから言えることだけど、オレはミューリやファムとも戦えて逆に良かったと思っているぞ。凄い白熱したし、楽しかった! えっと……キノコ姉妹だっけ?」


『ウインドファイア!!』



 シリアスな空気を一気にルシエルが潰した。ミューリとファムが、同時に突っ込む。



「そうそう、ウインドファイア! ノクタームエルドで、その名が轟く冒険者姉妹と一緒に冒険出来て、しかも腕試しまでできたんだ。オレは、二人に感謝している。結果良ければ、難しい事なんて別にいいんじゃねえか。だから来いよ! 一緒にいこうぜ! なあ? こっち来いって!」



 手招きするルシエルに、ファムが後ずさりするとルシエルはファムに抱き着いた。ファムはやめろと暴れる。それを横目にミューリが俯いていた顔をあげた。



「本当にありがとう。でも、駄目なんだ。君達を陛下の為とは言え、最後の最後に裏切った事。それに、リザードマンのザーシャ帝国は、殲滅したけどまた別の魔物が攻めてくるかもしれないし、帝国や公国の動向も気になる。確実にこの王国が大丈夫だという所まで立て直すまで、僕やファムは陛下について、力にならないと」


「……うん、そこまで言うなら解った。でも、これで最後って訳じゃないでしょ? 私達はずっと友達だよね」


「もちろんだよ!」


「じゃあ、約束。ミューリとファムのやらなくてはならない事が終わって、気持ちに整理がついたらまた一緒に冒険やキャンプをしましょう! それ位、聞いてくれてもいいでしょ」


「ありがとう、アテナ。こんな僕らをまだ誘ってくれるんだね。そこまで言ってくれるなら……僕達も、そうしたい! また一緒にキャンプや冒険をしよう! 約束だよ」



 私はもう一度、強くミューリと握手をした。ルキアは、本当に悲しそうな顔でその次にミューリと握手した。だけど、ルキアの手は小さく震えていて顔は今にも泣きだしそうだった。ごめんね、ルキア。でも、ミューリやファムにだって、優先しなければならないやるべき事や道がある。


 ルシエルも別れをと思って、振り返るとルシエルはファムに組み付いていた。ファムの悲鳴。



「痛い痛い痛い!! やめてルシエル!! なんで、ファムのパンツを引っ張り上げるの!! 痛いからやめて!!」


「ウハハハハ!! やめてほしければ、一緒に冒険しようぜ! なあ、いいだろ、なあ? この、強情っぱりめが!! ウハウハ!! 痛いっ!!」



 私はファムのパンツが破れそうな位に、引っ張って勧誘しているルシエルの背中を軽く叩いてそれを止めさせた。そして、ファムに別れを言うとルシエルにもミューリとファムに別れの挨拶をするよう言った。

 

 だけど、ルシエルは最後まで不貞腐れているように口を尖らせていた。きっと、ルシエルも二人と別れるのが寂しくてたまらないのだと思た。


 ミューリとファムに別れを告げると、続いてメール、ミリー、ユリリアにも別れを言った。その3人娘の後ろには、ベップの宿の主人ベップさんと奥さんのユフーインさんも見送りに来てくれていた。



「私達はもう少しここに残って、復興のお手伝いをしようと思っています。今回の騒動については、陛下から直々に冒険者ギルドへ依頼を出した事にしてくださったので、報酬もでますし」


「解った。また魔物が現れるかもしれないから、3人ともくれぐれも無茶しないで気を付けてね。冒険者を続けていれば、また出会う事もある。また再会できる事を願っているわ」



 ルシエルとルキアも、3人に別れを言った。カルビについては、3人にそれぞれ抱き上げられて別れの挨拶としていっぱい触られていて大変な事になっていた。でも、我慢だよカルビ。もうこの3人にも暫くは会えないかもしれないから。



「ルキア!! もう行くのか!!」


「皆!! 皆も見送りに来てくれたんだね!!」


「もちろんだ!! 友達なんだから、当たり前だろ!!」



 ドゥエルガルの少年達。リーダー、ボーグルの顔は見当たらないけどゴーディ、テディ、ボーグルの弟のブラワーがルキアを見送りにやってきていた。


 3人は、ルキアと握手しハグをすると別れを惜しんだ。

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