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第427話 『真のリーダー』




 ――――翌朝、ガラハッド王よりラウンジに行って朝食を食べる様にと言われた。それから、玉座の間に来てくれとのこと。


 まずは、その城内にあるラウンジに行って見た。すると、そこはお酒が飲めてお茶や食事もできるお洒落な酒場のような空間になっていた。


 私とルシエルとルキア、それにマリンとカルビはそこで食事をさせてもらった。


 朝食と言う事で、私とルキアはパンとサラダ、それにハムエッグを注文した。カルビは、鶏肉の入ったボリューミーなサンドイッチ。そして、ルシエルとマリンは朝っぱらからステーキとライスを注文して、もりもりと食べていた。なんとも凄まじい食欲。


 食事が終わると、玉座の間に向かった。


 玉座の間に入る手前の扉で、既にドワーフ兵が待っており私達を中へと案内した。玉座の間には既に、何人かが集まっていた。


 ドワーフの国の重臣、そしてミューリにファム。戦士長ギリムと、ドゥエルガルも何人かいた。そのドゥエルガル達を見てルキアが驚きの声をあげる。



「ボ、ボーグルさん! それでにブラワー!」


「よう、ルキア。俺らも王様に呼ばれたんや! やった事の責任はとらなあかんからな」


「ルキア、無事で良かった」



 ボーグルは、ドゥエルガルのリーダー。あらかじめ、ルキアから話は聞いていたので一目でそれが解った。そして、その傍らにいる少年がルキアと喧嘩したっていう、ボーグルの弟のブラワー。彼のルキアを見る目は、物凄く穏やかで優しいものに見えた。



「静粛に。それでは、これよりここに集まった者達へガラハッド陛下より、申し伝える事がある。しかと聞くが良い」



 重臣の一人がそう告げると、この場にいる者全員がガラハッド・カザドノルズへ跪いた。



「まずは、皆の者に伝える。これより我が国は、帝国及び公国との関係を解消する。ガラードが余に隠れ、こそこそと進めておった事は全て、平和に反するもの。全ては泡と化した。しかしながら、そうするとこれから先の我が国は、帝国や公国の侵略を受ける可能性もある。しかも、そこにおるマリン・レイノルズの話では、魔物も最近はその活動を活性化させており、何か良からぬ事態が起きる事も予測し備えねばなんじゃろう。そうじゃな、マリン・レイノルズ」


「ええ。そうです、陛下。ボクはこの王国へ向かう途中、あの伝説級冒険者ヘリオス・フリートに会いました。そして、彼からその事をききました。リザードマンの侵攻や、グレイドラゴンの出現もそう言った事の前触れかもしれません」



 ガラハッド王と、マリンの言葉に重臣達がざわつく。他のドワーフ兵達もだった。



「それで、余はこの国を守る為に色々と備えをする事にした。まずは、この場におるクラインベルト王国第二王女アテナ・クラインベルトの力を借りる。これよりアテナは、自分の国へ一度戻ると言うが、その時にセシル王に同盟の話を持ち掛けてもらう。それで、ドワーフの王国とクラインベルトの両国が手を取り合えれば、これから何がおこるにせよ、ともに助け合い立ち向かう事ができるという訳だ」



 おおーーっと声をあげる者達。この反応を見ると、意外と皆受け入れてもらえそうな感じがした。


 私は、ガラハッド王の目を見た。



「陛下、よろしいでしょうか?」


「申せ、アテナよ」


「他国へ領土を広げようと軍事侵攻しようとしているドルガンド帝国や、今もなお活発化する魔物達に対抗する為の私達の同盟ですが、もしかしたらガンロック王国も加わってくれるかもしれません。ガンロック王国の王女達と私達……ここにいるルシエルやルキアもそうですが友達なんです。話せばきっと、ガンロック王国も平和の為に、私達と手を取り合ってくれるはずです」


「ほう、それが本当だとすればなんとも心強い。どうだ、皆の者。我が国は、帝国や公国と暗く危うい関係を持たずしても、クラインベルトやガンロックと共に一丸となりて、未来ある平和な世の中を作りあげる事ができる。それでも尚、ガラードのような愚かな考えを持つ者はまだおるか?」



 ガラハッド王の言葉に全員が、頷いていた。これでようやく、この国は本来の姿へ戻った。



「そう言う事じゃ。それでは、皆の者も異論はないという事じゃな。ドゥエルガルのリーダー、ボーグルよ」


「はっ!」



 ガラハッド王に名を呼ばれたボーグルは、慌てて返事をする。



「そち達ドゥエルガルの犯した罪は重い。いくら、我らドワーフとドゥエルガルの間に過去に確執があり、お互いに反感を持っていたとしても、リザードマンの襲撃に乗じてこの王国を襲い、民間人をも戦いに巻き込んだ罪は重罪じゃ。お前は、この犯した罪について、どうするつもりじゃ」



 ボーグルは、一度視線を地面に落とした後、周囲にいる仲間に目を向けた。そしてガラハッド王に再び答えた。



「許されるんでしたら、俺のみの処刑で勘弁してもらいたいですわ。他のドゥエルガルは、なんも知らんと俺に従っただけですから」


「あ、兄貴!! それなら、俺も……」


「うっさい! だーっとれ、ブラワー!! お前はリーダーちゃうやろ!! それに、陛下は俺に聞かれとんねん!! 遮んなや! 無礼や、しばくど!!」



 激しく弟を怒るボーグルを見て少し微笑むガラハッド王。



「それでは、お前がドゥエルガル全てが行った罪を背負い、刑を受けるというのだな?」


「は、はい!」


「お前は、戦争にはあまり乗り気ではなかったと聞いた。ここには呼んでおらぬが、ダグベッドやアビーという者が、好戦派のドゥエルガルを煽っていたと聞いたぞ。リザードマンの襲撃の報を聞いて、それに乗じるよう策を弄したのもダグベッドだと聞く。それに、我が警備兵からの話でも、ダグベッドやアビーと言ったドゥエルガルは、たびたびこの街で問題を起こしていた」


「いえ、全ての責任は俺が追います。俺はドゥエルガルのリーダーなのですから。ここは、俺の首一つで勘弁してもらえますでしょうか? 実は、そこにいる冒険者ルキアのお陰で俺達の住処の近くで金鉱が見つかりました。陛下と是非、取引をさせてもらえればドゥエルガルの生活は潤います。そうなればもう二度と、このドワーフの王国へ攻め込むなどという愚行は犯しません。ど、どうか! どうか俺の首一つで!!」



 ボーグルは床に頭をこすりつける様にして、陛下に懇願した。


 プライドの高そうな彼が、一族の為にこうして頭を床にこすりつけ、ひたすら懇願する姿は、少なくとも私の目には真のリーダーに見えた。

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