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第424話 『ドワーフ王国に平和を!』



 小柄な身体の銀髪の少女に、この場にいる全員が注目した。


 少女は、聞き取れない程の小さな声で何かを呟き、再び水属性魔法を放った。狙いはガラード達の少し後方。



「《貫通水圧射撃(アクアレーザー)》!」



 少女の指先から、ワイヤーのような細く鋭い水の線が迸る。そしてそれは、ガラード達のもとに忍び寄ってきていた影を撃ち抜いた。


 2匹のリザードマン。そのうちの1匹を仕留めるがもう1匹は、寸での所で避けていた。


 仲間がやられると、残りの1匹が隠れた物陰から再び身を乗り出し、その姿を見せた。



「モウスコシデ、オウモ、オウジモシトメルコトガデキタノニ!! ヤッテクレタナ、ウィザード!! ニンゲンノメス!!」


「雌って言えば雌だけど、どうせなら折角名前があるから、それで呼んで欲しいものだね。ボクの名前は、マリン。マリン・レイノルズ」


「マリン……ドチラニシテモ、オマエハココデシヌ。コノ、ザーシャテイコクヨンショウグンガヒトリ、カメオンニウタレテナ!!」



 カメオン! このドワーフの王国に攻め込んできた司令官クラスのリザードマン。四将軍と言ったけど、最初に倒したオモド、それにリザードマン最強を名乗るギャオスとそれに続くギーで3人。


 つまり、このカメオンが最後の一人って事。そして魔法使いの少女――マリン・レイノルズ。レイノルズって名前、何処かで聞いた事があるような気がするけど……


 カメオンは、両手でしっかりと握る槍をマリンに十分に印象付けると左右に振って意識をその槍に向けさせると、いきなり口を大きく開いた。カメオンの舌が物凄いスピードでマリンを襲う。



「え? なんだ!? うっ!」



 カメオンの舌は、マリンの首に巻き付き彼女を絞めあげた。まずい、このままじゃ窒息するというよりも、首の骨を折られる!!



「そうはさせない! カメオン、あなたの相手は私よ!!」


「アオイカミト、メヲモツメス! オマエガ、アテナカ!! ギャギャッ!!」



 私は、カメオンの舌を剣で斬り落とし、マリンと言う名の【ウィザード】の少女を救おうと動いた。しかし、マリンは片手を私の方へ突き出して、手を出さなくていいと合図をしてきた。


 いったいどういう事? このままじゃ、確実にマリンは殺される。やっぱり、助けに入らないと!!



「ソウハ、サセン! ウィザードノメスハ、コノママコロス!!」



 ボキィイッ!!



 そ、そんな……


 舌を斬り落とされまいと思ったカメオンが、慌ててマリンの首をへし折った。そして、拘束を解く。


 カメオンはニヤリと笑みを浮かべると、今度は私の方へ向けて槍を構えた。動揺している暇はない。今度は、私を狙って舌攻撃か槍がくる。いつものように、落ち着いて冷静に戦えば勝てる相手だと思った。


 しかし次の瞬間カメオンは、前のめりに倒れた。線状に迸る水に胸を貫かれて――


 何があったのか? その方を見ると、そこには先程首の骨を折られたマリンが平然と立っていた。カメオンを貫いたのは、マリンがさっき見せた水属性魔法の貫通水圧射撃(アクアレーザー)


 確かにマリンは、カメオンによって首の骨を折られたはず。確かにボキっと折れる音も聞こえた。ルシエルやルキアは、その目を疑うような光景に驚いている。ドワーフ兵達や他の者も同じだった。



「マ、マリン? あなたは、今確かに首の骨を折られて死んだはず……いえ、それよりも私達の敵なの?」



 得体の知れない【ウィザード】。もしも敵なら、ガラードよりも先に決着をつけないといけない。それ程に、何か恐ろしい力を彼女に感じた。



「質問を質問で返して申し訳ないが、その青い髪と二刀流。君がアテナかい?」


「そうよ」



 即答すると、マリンは頷き今度はルキアの方を見て言った。



「すると、この猫の獣人の子がリアのお姉さんのルキアかい?」



 以外すぎる言葉。突如、目の前に現れた得体の知れない銀髪の可愛らしい少女。彼女は、私の事を知っているような発言をしたが、それよりも驚く名前を言って見せた。彼女の口から出たリアと言う言葉に、ルキアは目を丸くしその小さな身体を震わせて途轍もなく驚いていた。



「あなた……何者?」


「ボクは普通の冒険者だよ。とりあえず、君がアテナでそっちの子がルキアと言う事であれば大丈夫だ。それが明らかになったのなら、答えるのも簡単だ。端的に言うと、ボクは君たちの味方だ。そしてルキアには、吉報を持ってきたんだよ」



 既にルキアは何かを察したようで、その目からは涙が零れ落ちていた。


 そんな空気を全く読めないガラードが怒鳴った。



「ええい!! こうなったら、全員で一気に全員取り押さえろ!! 抵抗するならアテナ以外は殺せ!! 殺して構わん!!」


「もうよせ、ガラード!! いい加減にせんか!」


「うるさいうるさい!! 親父がそんなうつつを抜かしているから、この国は帝国や公国にも追い抜かれるんだ! そして、そのうちこの国はそのどちらかの国に、攻め滅ぼされる!! だから負けない軍事力が必要なんだ!!」


「ガラード! お前は何も解っておらん!」



 ガラードが実の父、ガラハッド王の胸倉を掴み上げた。



「何が何も解っていないだ!! 親父こそ解っていない!!」


「ガラード!! そこまでだ!!」



 唐突な声と、石礫。何処からか飛んできた石がガラードの頭に見事に命中し、ガラードはその場に転がった。


 石礫を放ったのは、ノエルだった。ノエルは、そのままガラード目掛けて一直線に走るとそのまま馬乗りになって何度もガラードを殴りつけた。


 ガラードが気を失って動かなくなると、ノエルはガラハッド王の近くにいたドワーフ兵を殴り倒し、王の拘束を解いて助け出した。


 ガラハッド王は、自由になり立ち上がるとここにいる全員を見回し言った。



「しずまれい!! もはや、リザードマンは全員退けた。ドゥエルガルもだ。これにて、ドワーフ王国の平和は保たれた!! だが我が息子、ガラードの行った事は国王に対する謀反だ。謀反は重罪。後に、何かしらの然るべき罰を与えねばならん! お前達は、我が馬鹿息子に加担したとはいえ、それぞれ思う事も会った事じゃろ。何か申し開きがあれば、この場で聞こう! もちろん、このまま反乱を続けるというのならば斬って捨てる!」



 ノエルは、ガラハッド王の傍らに侍りしっかりと彼を守る。すると暫くして、街中でリザードマン達から身を隠していたドワーフ達が次々にその姿を現して国王の周りに集まった。


 そして、ガラードに付き従っていたドワーフ重歩兵隊は、武装を解いて跪いた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇マリン・レイノルズ 種別:ヒューム

Cランク冒険者で水属性魔法のエキスパート。テトラやセシリアと一緒に行動していたが、テトラの代わりにリアが生きている事を姉のルキアに伝える為、ノクタームエルドまで探しにやってきた。なぜそこまでするのか……それはマリンガ何より友情を大切にしているからかもしれない。


貫通水圧射撃(アクアレーザー) 種別:黒魔法

上位の、水属性魔法。指先から光線のように細い水を放水する。しかし、高圧力で発射されている水で、岩をも貫通する威力。触れたとしても、切断されるという恐ろしく殺傷能力にずば抜けた水属性魔法。


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