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第423話 『観念しなさい!』



「《爆炎放射(フレイムバースト)》!!」



 ミューリの火属性魔法。こちらへ翳した掌から爆炎さながらの火炎が放たれる。見るからに、高温度で燃え盛る激しい炎は、メロディ・アルジェントという女性から受け取った薬を飲んだ事で、ミューリ本来の魔力が更に強化されている事がわかる。


 でもミューリは、ドワーフの街で戦っている以上、自分の本来よりも大きな魔力で誰かを巻き込んだり、何かに引火させてしまったりしないように、配慮しながらも戦っているのが見て取れた。



「いっくぜー!! これこそが、オレの奥の手だ!!」



 ルシエルは、矢を使わずに弓だけを宙に浮いているファムに向けて狙いを付けた。


 ファムは、空中浮遊(レビテーション)を使用して空中高くに浮かび上がりながらも、風の刃をルシエルに向かって放ち斬りつける。しかし彼女は、そんな攻撃はものともしないと華麗に避けてみせる。


 そして風の刃を完全に全て避けきったルシエルは、弓に手を添えた。すると矢を持つ方の手に、光の矢が現れる。


 話には聞いていたけど、このルシエルの技を初めて目にした私は驚いた。私がグレイドラゴンにとどめを刺した奥義【金剛斬(こんごうざん)】によく似ているとも思った。もしかしたら、同系統の技――


 ファムもルシエルの作り出した光の矢に驚きを隠せないでいる。



「な、なんだその技は!!」


「だから、奥の手だって言っただろ? ファムも空中浮遊(レビテーション)を見せてくれたからな。へへへ、オレも見せてやる」


「ま、まさか!? ひ、光の矢か!!」


「ご明察、行け!! シャイニングフェアリーアロー!!」



 ルシエルが放った光の矢が、遥か空中に浮いていたファムの身体を貫いた。避ける事の出来ない程の速度と貫通力のある矢。それをルシエルは見事に致命傷を避けて、ファムの右肩に狙いをつけて放ったのだ。


 光の矢は、ファムを貫くと消えてなくなり、貫かれたファムは驚いた表情のまま落下してきた。ルシエルは、身軽にファムが落ちてくる場所へさっと移動して彼女を受け止めた。



「ま、まいった……な。その弓がな、なければ……ファムが勝っていた……」


「アハハ。負け惜しみを言ってろ! とりあえず、温泉卓球の続きの結果はオレの勝ちだな」



 ファムがにこりと微笑むと、ルシエルは彼女を目の前にある建物の近くにそっと寝かせた。


 さあ、私もそろそろ決着をつけないと!!


 ミューリも同じ事を思っている。彼女から同じ意志が伝わってくるのだ。


 ツインブレイド――二振りの剣を強く握り構えると、ミューリに向かって跳んだ。ミューリは、それを見て跳んだ私を狙い打ちにしようと魔法を詠唱し始める。



「アテナ!! 決着をつけよう! 僕はもう逃げない! だけど、アテナも宙で跳んだところからじゃ、自由に避ける事はできないよね!! これで、終わりだよ! 《火弾操作連弾(フレイムラッシュ)》!!」



 無数の火弾が飛んでくる。



「やあああああ!!」



 素早く二振りの剣を振るい、飛んで向かってくる火弾を全て着地するまでに斬り落とし、ミューリの目前に降りた。



「ミューリ!!」


「アテナ、君は本当に凄い冒険者だよ!! でもやっぱり、僕の方が一枚上手だったね。《炎爆起爆(ヒートボム)》!!」



 ミューリが腕を突き出し、目前の私に触れようとした。この手に触れられると大爆発し、私は燃え盛る炎に包まれるだろう。


 本来なら、全方位型魔法防壁(マジックシールド)で防いで反撃に転じる所だけど、ガラハッド王を早く助けなきゃだし、ミューリとはここで決着をつけておきたかった。


 私は、ミューリの突き出してくる手を素早く避けると、ミューリも反応できない位の速度で彼女の胴を剣で横薙ぎに払った。でも、打ち込む寸前にしっかりと剣を返している。――峰打ち。



「ド、ドーピングしているから魔力もあがっているに、まったく恐れないで突っ込んでくるなんて……どうかしている。しかも、最後の動き……ぼ、僕にはぜんぜん見えなかった……よ……」



 ミューリが前のめりに倒れそうになったところで、彼女をささえてゆっくりと地面に寝かせた。


 そして、振り返りガラハッド王を人質にしているガラードを睨みつけた。


 ルシエル、ルキア、カルビ、ゾーイは、ガラードの前に立ちふさがるギリム戦士長他、数十人のドワーフ兵と今も奮闘している。私は叫んだ。



「この辺で観念しなさい!! ガラード!! ミューリやファムには、通用するかもしれないけれど私には人質は通用しないわ!! もうこの辺で止めにして、自分の犯した罪を清算しなさい!!」


「うるさいうるさい!! カーーー、ペッ!! まったく、何がアース&ウインドファイアだ!! まったく、使えん奴らだった!! しかしな、人質は使える事は知っているぞ!! アテナ、お前の事は聞いた。随分と情け深いそうじゃないか。リザードマンとも仲良くなれる程にな!」



 ガラードにそう言われ、ギーの事を一瞬思い出してしまった。


 決着がつくまで、ギーの事を考えては駄目だと思ってそうしていたのに……急に、心臓を鷲掴みにされたかのように、痛くなる。


 ルシエルがそんな私の事を察したのか、群がるドワーフ兵の間をすり抜けて、ガラードに向けて矢を放った。


 ギィイイン!!


 しかし、咄嗟にガラードの前に立ちふさがった鉄塊に、矢を弾かれる。戦士長、ギリム。ルシエルが悔しそうな顔をする。



「ったく! あの塊、なんつー奴だよ!! あいつをなんとかしないと、ドワーフのおっさんを救いだせないぞ!!」


「ちょ、ちょっと! ルシエル!! 王様におっさんなんて、言っちゃだめですよ!!」



 ルキアが突っ込みを入れる。そんないつもの二人のやりとりを見て、胸の痛みがおさまった。しかし、ガラードは激昂する。



「えええい!! こうなったら……自分の父の命だろうが、このドワーフ王国の為ならなんでもできるという事を見せつけてやるわ!! 俺様の本気を見せれば、お前達も考えを改めるはずだ!!」



 ガラードは、自分の父ガラハッド王の左腕に剣を一度添えると、それを思い切り振り上げた。ガラードは、追い詰められて自分の父の左腕を斬り飛ばすつもりだと悟った。何とか、しないと!!



「……まったく、なんとも馬鹿な息子だ」


「うるさーーい!! 俺がこの国の王にふさわしいんだ!! だから人にはできない事も、平然としてやってのける事もできるんだあああ!!」



 ガラードが剣を振ろうとしたところで、私は魔法を詠唱した。同時に、ルシエルも弓矢で狙いをつけ、ゾーイが鉄球を放った。


 しかし、それよりも先に、何処からか放たれた水の散弾が、ガラハッド王ごとガラードとその周囲にいたドワーフ兵達を全てを撃ち抜いた。


 ――――魔法使いの少女。



「ふう……ぎりぎり間に合ったようだね。グレイドラゴン退治とリザードマン。それらの撃退までは間に合わなかったみたいだけど、代わりに王様は救う事ができたようで良かったよ」



 見ると、そこには銀髪の眼鏡をかけた少女が立っていた。髪は三つ編み。水色の三角帽子に同じく水色のローブ。先程の水属性魔法を放ったのは、この【ウィザード】の少女だった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇シャイニングフェアリーアロー 種別:弓術?

ルシエルが愛用のアルテミスの弓で放った光の矢。聖なる光の矢を作り出して、放つ大技。威力も絶大だがアンデッドや魔の力に対して凄まじい効果がある。


炎熱爆破(ヒートボム) 種別:黒魔法

中位の火属性魔法。掌に火属性の魔力を集めて、直接相手に触れて爆炎と衝撃を与える。威力はあるが、至近距離魔法なのでリスクがある。


全方位型魔法防壁(マジックシールド) 種別:防御系魔法

強力な防御系上位魔法。自分の周囲にドーム状(実は球体)の光の幕を張り、物理攻撃や炎や冷気などの攻撃も防ぐ。とても強固な防御魔法。


水玉散弾(ウォーターショット) 種別:魔法

下位の水属性魔法。小さな水の弾を無数に生成し、一斉に放って目標を撃ち抜く散弾魔法。ガラードとドワーフ兵を打ち抜いた魔法。それってもしかして……

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