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第417話 『最強コンビVS最強コンビ その1』




 まさに乱戦だった。戦いは、吊り橋の上にまで及んだ。


 でも、襲い掛かってくるリザードマン達をギーやゾーイ、ジボールやキョウシロウが押さえてくれていたので私達は、ミューリ達との戦いに集中することができた。


 自分の小さな身体には、とても不釣り合いな大きな戦斧を巧みに使うノエル。その彼女を巨大化したカルビに跨るルキアが抑え込んでいる。ノエルの破壊力のありそうな攻撃をカルビが前足の爪で弾いて防ぐ。飛びかかろうとしても、騎乗しているルキアが太刀を振るい、ノエルを牽制していた。


 なんて可愛らしくも、頼もしいコンビだろうと思った。緊迫したシチュエーションなのに、口元が緩む。


 私はルシエルと二人並んで、ミューリとファム――『ウインドファイア』と呼ばれる姉妹と向き合っていた。


 挨拶する間も無く、ミューリが火属性魔法を放ち、ファムが風の剣を魔法で作り出して襲い掛かってきた。私とルシエルは、一緒にその攻撃をかわして弾く。



「ミューリ、ファム! どうしても、もうあなた達との戦いは避けられないのね!」



 ミューリは、意を決した表情で続けて火属性魔法を放ってくる。大小さまざまな火球。



「そうだね! これも陛下の為……とはもう言わないよ! 僕らはもともと戦う運命にあったのだと思う事にした! だけど、もうこんな事をいっても信じてもらえないかもしれないけれどそれでも僕とファムは、アテナやルシエル、それにルキアの事を親友だと思っているよ!! ロックブレイクから一緒に冒険した日々は本物だった!」



 ファムが風の剣で斬り込んでくる。それをルシエルは、太刀『土風(つちかぜ)』で弾き返した。



「だったら、ヴァルターなんていけすかねえ帝国軍人よりも、オレ達を信じろよ!! アテナを信じろよ!! 知ってんだろ、オレ達の強さを!!」


「ファム達は、もうそうする事が最良だと決めたんだ。だから、悪に徹する! これは言い訳だけど、事が済めばファム達の全てを差し出しても、アテナ達を救い出して全てを尽くして詫びる!!」


「ミューリ、ファム……」



 牢から脱出する時にゾルバに無理を言ったとしても、あの時にガラハッド王を助け出しておけば……そうすれば、あとはリザードマン達をどうにかしてガラードを取り押さえれば、ミューリやファムと対決する事はなかったのかもしれない。


 あの時にこうしておけばという後悔の念が心に渦巻く。そんな私に気づいてかルシエルが笑いかけてきた。



「おい、アテナ。もうミューリとファムは、決心してるみたいだな! なら、いいじゃん!! もういい! オレも割り切る、どうしてもオレ達と戦いたいっつーなら、それに応えてやろうぜ。それにホント言うとオレはこういう熱い展開大好きだぜ!」


「ルシエル……」


「この際、ドワーフ王がどうとかドワーフ王子がどうとか、リザードマンやドゥエルガルが、公国が帝国がってどうでもいいよ!! めんどくせー。オレ達は、今互いに戦っていてもどんな理由があるにせよ、ミューリとファムの事をいい友人だと思っているよ!! な、アテナ!」



 ルシエルのその言葉に二人の攻撃の手が止まる。


 確かに、どんな理由があるにせよ友達は友達。互いに譲れない事があったり、立場が違ったりする事もあるけれど、それでもミューリやファムは大切な友人に変わりはない。


 二人がもしも良ければ、この先……ノクタームエルドを旅立つ時に一緒に仲間として迎え入れて冒険を続けたい。それが、私の本音。


 だから、ルシエルがいうようにこの際、今は理由なんて関係ないのかもしれない。私達は私達で、このドワーフの王国を救う為に戦う。ミューリ達も、自分の信じる戦い、納得のできる戦いを貫けばいいと思った。私達は、私達の力を二人に今一度証明して信じてもらえればいい。



「わかったわ。ミューリとファムの気持ちは、もう全て理解したよ。だから、私達を捕らえようとしても恨まないよ。でも、私達はそれが嫌だし他の方法があると思うから、精一杯抵抗する。だから、ここからは全力で戦おう!」



 ルシエルも私がそういうのを待っていたかのように笑った。



「ウハハハ。そういや、お前達姉妹とは、温泉卓球の決着がまだついてなかったな。ここでケリをつけようぜ!!」



 ミューリとファム。二人の思い詰めた顔が、少し晴れたように見えた。少し笑っている。すると、二人は同時に魔法を詠唱し始めた。



「ありがとう、アテナ。それにルシエル。それじゃ、ここからはもうアテナの言うように全力で戦う事にするよ。本気でかからないと、アテナやルシエルを捕らえるなんて到底無理だと思う。だから少々傷つけてもしょうがないと思っていくからね」


「ファムも、もう遠慮しない。どちらにせよ、ルシエルはファムには勝てない。でも、ここからは確実に勝つつもりでいく。温泉卓球の続きは、ファム達ウインドファイアの勝ちで終わる!!」



 あれだけこの姉妹と戦う事は、苦しくて嫌だった。でも、戦うと決断し正面からこの事態に向き合ってからは、この強くも勇ましい姉妹と戦える事が楽しくなってきていた。


 この王国がリザードマン達に攻め込まれ、ガラハッド王も実の息子ガラードに幽閉されているこの状況下でそんな事を考えるのは、不謹慎極まりないかもしれない。だけど、ミューリとファムと一緒に冒険し彼女達を知って行く中で、一度手を合わせてみたいと思った事があるのも事実だし、気持ちをあげていかないと私達が負けるという可能性も否定できないと思った。それほどに、この姉妹は強い冒険者なのだ。


 こちら側の防壁門側や吊り橋の方で、ギーやジボール達がリザードマンを相手に戦っている。


 ルキアとカルビの悲鳴。その剛腕で巨体になったカルビを投げ飛ばし、闘志満々の表情でこちらに向かって来るノエル。



「いくよ! ルシエル!! これで、決着をつける!!」


「おう! 任せろ! ただ、これだけは言っておくぞ」


「なに?」


「あのベップの宿での温泉卓球な。あのままベップさんが間に入って止めなかったとしたら、勝っていたのは絶対にオレ達だったなってな」


「うん、そうだね。それなら間違いないね!」



 私達は、この姉妹にも負けることの無い最強のコンビ――――


 ルシエルにそう笑って返事をすると、それを合図にミューリが全身に炎を纏い、ファムが風を纏い始めた。私とルシエルは、ノクタームエルド最強の姉妹と一直線に突撃してくるノエルを睨み付けた。



 さあ、来なさい!! アース&ウインドファイア!!

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[気になる点] さあ、来なさい!! アース&ウインドファイア!! [一言] 熱い展開の筈なのに脳内BGMでセプテンバーが鳴り止まないんですが
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