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第412話 『老いた伏兵 その1』




 ボーグルさんとその他のドゥエルガルの人達は、このドワーフの王国内に侵入しているドゥエルガル達に対して、直ちにドワーフ達への攻撃を止めるよう説得する為に走ってくれた。その際に、ドワーフ達がリザードマンを倒す戦いに加勢してくれるという。


 ダグベッドやアビーという、ドワーフと戦いたがっている者達もドゥエルガルには多くいるというけれど、それはボーグルさんがなんとかすると言ってくれた。


 これで、この国に攻め込んで来たドゥエルガルはどうにかする事ができた。あとは、リザードマン達を追い出してこの国の王様を助けだし、ドラゴンを倒せば一件落着する。


 私は、ドゥエルガルの事を彼らのリーダーであるボーグルさんに任せ、今も吊り橋でグレイドラゴンと戦っているだろうルシエルの救援に向かう為に、吊り橋へと駆けていた。


 私の後ろには、カルビの他にゴーディ、テディ、ブラワーがついてきてくれていた。私はルシエルのもとへ駆けながらも振り返り心配そうに言った。



「皆は、ボーグルさんと行動した方がいいよ。吊り橋にはドラゴンがいるから、危険だよ」



 ゴーディは、笑う。



「ははは。じゃあ、尚更ついていく。ドラゴンなんて、危険な魔物がいる所へルキア一人向かわせる事なんてできないからな」



 テディも頷いていた。ブラワーは、その顔に笑みを浮かべていた。



「それなら、俺達が命をかけてもお前を守ってやる」



 今まで生きてきて、そんなセリフを一度も男の子に言われた事が無かったので、顔が赤くなってしまった。悟られないように、「どうなってもしらないから」と言って前を向く。


 もう少しでルシエルがドラゴンと戦っている吊り橋に辿り着く――という所で、また戦っている者達に遭遇した。


 リザードマン達をウォーハンマーで叩いて潰し、全てを倒し終えるとこちらを向いた。そして、まるで私がここへ来るのを待っていたかのように、こちらを見据えて立っているドワーフがいた。



「おや、やっと来よったか。ここで待っていれば、アテナかお主か会えるとふんでいたが」


「ギブンさん!!」



 ミューリやファムと、以前一緒にパーティーを組んでいたというドワーフのお爺さん。ロックブレイクで最初にミューリ達に出会い、キノコ採取の依頼を受けた時に出会った。キノコのモンスター、マイコニッドにルシエルと共に毒とキノコだらけにされていたのをアテナが助けた。グライエント坑道でも一緒に行動し、作戦を決行した。



「ルキア。それにドゥエルガルの小僧たちが儂の相手か。少年少女を相手にするというのは、あまり気が進まんが仕様が無いしのう」



 ギブンさんはそう言って、私達にウォーハンマーを向けて構えた。それで、私は悟った。この人は、いい人だけどミューリやファムの味方。実の息子に裏切られ、幽閉されているこの国の王様の為に、私達を捕えようとしている。


 ゴーディ達も武器を構える。



「ル、ルキア! このドワーフは敵か? どうすればいい?」



 説得……は、きっとできない。ボーグルさんのようにはいかないと思った。今のギブンさんの私を捉える目がそう物語っていた。あの、気さくなドワーフのお爺さんの目じゃない。――ベテラン冒険者の目。



「残念だけど、この人は倒さないと駄目みたい。きっとこのまま私を吊り橋へは行かせてくれない」


「ほう、解っとるか。それに最初出会った頃は、可愛らしいだけの獣人の娘さんじゃったか、今はそれにも増していい面構えになってきとる。あのアテナやルシエルとパーティーを組んで冒険しているだけの事はあるという事かの。ふぉっふぉ」



 ギブンさんは、長く白い髭をいじりながらそう言うとウォーハンマーを手にどっしりと構えながらもこちらに向かってきた。


 ブラワーが戦斧を大きく構えた。



「いいのか!! じゃあ、このドワーフのジジイをやっちまっていいんだな!!」


「うん! 倒さないと、前には進ませてもらえないから! でも、絶対に命を奪わないで」


「まったく、無理を言いやがってー!!」



 ブラワーが不満げな顔をしながら、こっちへ向かってくるギブンさんに飛び掛かった。戦斧を振る。金属音。すると、ギブンさんはそれを真正面からウォーハンマーで大きく受けると、そのまま力で圧倒しブラワーを地面に叩きつけた。



「ぐはあっ!!」


「ブラワー!!」



 ギブンさんは、横たわるブラワーの首にウォーハンマーを当てた。



「こうして人質とすれば、簡単にお主を拘束する事は簡単なんじゃがのう。冒険者しては、ちょっとあれじゃが年の功としてもらえればいいかの。ふぉっ」


「俺はいい!! いけ、ルキア!! 俺は俺でなんとかする!!」


「そ、そんな……ブラワーを見捨てられない」



 どうしよう。ここで捕まったらルシエルを助けにはいけない。でも、ブラワーは私の大切な友達。私はギブンさんに叫んだ。



「やめて、こんな事! 今、こうしている間にも吊り橋の方でルシエルがドラゴンを喰いとめているの!! こんな事をしている間にルシエルがやられちゃう! そしたら、この国へドラゴンが侵入してきて何もかも破壊しちゃう!!」


「ふぉっふぉ。それなら心配はいらん。グレイドラゴンなら、もうファムが倒しおった。流石はウインドファイアと言ったところじゃな。いや、メロの薬と言ったところかの。じゃから、もう心配はない。あとは、お前さん達を捕らえてこの国に入り込んだリザードマンとドゥエルガルを殲滅すれば全て丸く収まるわい」



 え? ファムがグレイドラゴンを⁉



「じゃあ、ルシエルは⁉」


「今の儂らと一緒じゃ。ルシエルは、今ミューリやファム、ノエルの三人を相手に戦っておるが……なんと言ってもアース&ウインドファイアじゃからのう。捕らえられるのも時間の問題じゃろう」


「そんな……それなら……グレイドラゴンをもう倒したのなら、私達が争う理由なんてないんじゃないですか!! リザードマン達だって倒せるんでしょ?」


「そうだとしても、我らが陛下はそのバカ息子に幽閉されておる。それに、リザードマン達を打ち払ったにせよ、また何か魔の者達がこの国に攻め込んでくるじゃろう。それ程、この国のバランスは現在不安定なものになっておるんじゃ。ドラゴンやリザードマンが、この国に攻め込んできているのがいい証拠じゃ。何か背後で暗闇の者達が動き出している気配がする。この国はその悪しき力に対抗する為に備えねばならん。その最初の一手が、まずは強大な帝国との同盟」


「そ、そんな……」



 どうすれば……何がどうすればいいか解らなくなった。だけど、その時ゴーディとテディが動いた。武器を持ちギブンに突っ込んでいく。



「いいのか!! この小僧の命は無いぞ! 降伏するんじゃ!!」



 しかし、ゴーディとテディは襲い掛かる。ブラワーが叫んだ。



「よっしゃ!! いけーー!! それでこそ、戦闘民族ドゥエルガルだ!! ワハハ、ザマーみさらせ!! 俺達に人質は通用しねえ!!」


「これは、想定外じゃ! やりおるわ!!」



 ギブンは人質にとっていたブラワーを蹴り飛ばすと、向かってくるゴーディとテディの2人と打ち合った。ゴーディとテディが雄叫びを上げるとともに、私に言った。



「ルキア!! 今だ、いっけー!! 俺達、5人でやっちまえばこんなジジイあっという間だぜ!! 小難しい話はどうでもいい! さっさとこのジジイを畳んでそのルシエルとかいう仲間のもとへ行こうぜ!!」


「そうだ!! 5人がかりなら余裕だ!!」


「ゴーディ、テディ……解った!! 私、もう決めた!!」



 一緒に行動した事もある。それに、ミューリやファムの仲間。だけど、ここでギブンさんをなんとかしないと何も解決しない。私はアテナやルシエル、それにゴーディやテディ、ブラワーを信じると決めた。


 カルビの方を振り向くと、目が合う。カルビも、行こうと言っている。



「いやあああああ!!」



 太刀『猫の爪(ねこのつめ)』を構えると、カルビと一緒にギブンさん目掛けて跳んだ。


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