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第410話 『激闘! アース&ウインドファイア』




 ファムが使用した風属性魔法『風撃大噴火(ブローアップショック)』。その魔法は、このノクタームエルドに入国したばかりの頃、最初に立ち寄った冒険者達の拠点、ロックブレイクで一度見た事があった。


 その時、ロックブレイクには大量のアシッドスライムが雪崩れ込んできて、オレ達はその魔物達を殲滅した。


 アシッドスライムは3つのルートからロックブレイクに雪崩れ込んできて、オレ達もそれぞれに別れて対処した。


 オレは、ファムと組んでアシッドスライムの群れと戦ったのだが、アシッドスライムを倒しているうちに同じ風属性魔法の使い手として、いつしか敵を倒すのにオレ達二人は競い始めていた。そしてその時、ファムが見せたのがこの風属性魔法『風撃大噴火(ブローアップショック)』だった。


風撃大噴火(ブローアップショック)』は、範囲魔法で狙いをつけた場所に大きく魔法陣を展開させる。すると、その魔法陣から強烈な突風が発生し、まるで大空に思い切り吸引されているかのように、対象を一瞬にして空へ巻き上げられるのだ。


 大空のある外での戦闘でその魔法を使用すれば、敵は忽ち大空へ巻き上げられる。その敵が空を浮遊する事ができなければ、そのまま落下し即死する事もあるだろう。


 そして、こんな洞窟内で使用した場合は、敵はたちまち上昇させられ、洞窟内部の硬い岩でできた天井へ勢いよく叩きつけられるという訳だ。


 現にあの時にこの魔法を喰らったアシッドスライム共は、天井に叩きつけられ潰されて、よりゲル状になり引きちぎれて落ちてきた。


 オレの得意とする魔法は、黒魔法ではなく精霊魔法なので詳しくはないけど、恐らく『風撃大噴火(ブローアップショック)』は、上位黒魔法。


 しかもそこから更に魔力を高めて発動させ、無理やりにグレイドラゴンを巻き上げて、このノクタームエルド大洞窟の強固な岩の天井に思い切り叩きつけたのだ。


 だがグレイトドラゴンは巨体で、その身体はまるで岩のよう……


 重量感のあるシルエットからは、ぱっと見るだけでもとんでもない重さがあると解る。それをファムは、自分の魔力を総動員して天井まで無理くりに強風で巻き上げて叩きつけるという大技を放ったのだ。


 ファムが急に鼻血を噴き出したのも、当然の結果だった。オレは、慌ててファムに駆け寄ろうとした。



「ファムー!! 大丈夫か!?」


「来るな、ルシエル! ファムは、ルシエルと決着をつける! ただでさえ2対1のこの状態。それに加えてそんな隙を見せるなんて、ファムにやられてくれって首を差し出すようなものだよ!」



 ファムはそう言って、片腕で鼻血を拭った。ノエルがそろりとオレの後ろへ回ろうと動く。


 確かにこのままじゃ、流石のオレもヤバいかもしれない。ファムほどの風属性の魔法使いと、剛腕ノエルの2人を同時に相手するのはかなりきつい。


 ……そう言えば、ノエルと出会ったのもロックブレイクで、アシッドスライム討伐の時だったかな。


 一瞬、そんな事を考えてしまった。躊躇していると、先にファムとノエルが動く。



「ここからは、本気でいく!! もういつまでも時間をかけていられない!! 風よ、我が手に集まりて剣となれ! ≪風の剣(エアブレード)≫!!」



 ファムの風属性魔法。魔力で風を集め、剣を作る。ファムは使用していた槍を地に刺すと、まるでアテナのように両手に風の剣を作り二刀流で構えた。ノエルも前に出る。



「正直、ドゥエルガルのダグベッドやアビーと喧嘩をした時に、お前との喧嘩はもういいと思った。その後、お前やメール達3人娘とラーメンを食いに行った後は、このままもしかしたらいい友達にもなれるかもなとも思った」



 ノエルの言葉を聞いて、彼女の目を見つめる。



「オレだって一緒だ。ファムやミューリとは、この先も一緒にパーティーを組んで冒険したい。アテナやルキアだって、オレと同じに思っているはずだ。ノエルだって、一緒だぜ」


「一緒ってなんだ!!」


「既にオレはお前とは、いい友達になれたと思っていたぞ!!」



 ノエルの表情が険しくなった。それは、オレの言葉に怒っているのかそれとも何か動揺しているのかよく解らない表情だった。


 刹那、後ろから新たな声がした。



「ファム、ノエル!! いつまで、時間をかけているんだよ? もう、そろそろけりをつけないと。その後はアテナちゃんとルキアちゃんを捕らえないとだし、街中のリザードマンとドゥエルガルも倒さないといけないんだよ! 早く済ませよう」


「ミューリ。解ってる。今からファムは、本気を出すところだった」


「あたしも同様だ!」



 振り返ると、そこには燃えるような赤い髪をしたミューリが立っていた。


 ま、まずいまずい!! これはまずいぞ!! 流石のオレも、この3人を同時に相手するのはちょっと勝つ自信がないかもしれないぞ! オレは訴えかける目でミューリに言った。



「ミュ、ミューリ! お前まで、どうしたんだよ!」


「ごめんよ、ルシエルちゃん。でも、やらなきゃ。ファムから聞いてると思うけど、この埋め合わせは僕らの全てを差し出してでも、後々必ずするからさ」


「な、なんだとーー」



 ミューリはそう言って2人に指示を出す。ファムとノエルが動いて、3人でオレを囲む形になった。く、くるぞ!!



「そんなら、仕方がない! 先手必勝!! ≪突風魔法(ウインドショット)≫!!」



 先制攻撃とばかりに風属性魔法を一番弱っていそうなファムに向けて放った。しかし、ファムはそれを風の剣で斬り払う。同時にミューリが火属性魔法をオレへ向けて放ってきた。避けると、目前にノエルの姿。戦斧を思い切り振りかぶっている。


 ノエルの一撃を弓で受けると、大きく後方へ弾き飛ばされた。ミューリが今まで見せた事もない、厳しい目でオレを睨む。



「僕ら3人は、このノクタームエルドではそれなりに名前がうれていてね。ギブンが入る前……当所は若い娘3人組だという事もあって、からかわれる事もあった。でも、直ぐにそんなのはいなくなって、僕達はこう呼ばれて恐れられた。アース&ウインドファイア」



 その名は、以前にも聞いた。ウインドファイアがミューリとファムだとすると、アースはノエルか。これは、本当にまずい事になったと思った。


 これは、本当に手強い相手かも。アテナ、早く来てくれ! いつになく、そう願った。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


風の剣(エアブレード) 種別:黒魔法

中位の風属性魔法。手に魔力を含んだ風を集めて、剣を生成する魔法。具現化するのに魔力と風が必要であり、使い続けるのは不可能。一時的な戦闘で使用するなどが基本。

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