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第407話 『ドワーフ王国出入口門到着』



 ――――吊り橋手前の巨大な門。


 そこでドゥエルガル共と戦っていたドワーフ兵に加勢し、その悉くを打ち倒す。離れた敵も弓矢で射抜いて倒した。


 門の前の敵は、残り一人。そのドゥエルガルは、手に鉄球武器を持ち、それで向かってくるドワーフ兵達を次々に殴りつけて倒していた。あのメイスに鉄球が装着されているような武器は知っている――モーニングスター。



「全員でかかれー!! こいつを倒さなければ、吊り橋でドラゴンと戦っている仲間の救援にはいけない! こいつを倒して応援に駆けつけるんだ!!」


「いけえええ!!」



 14人のドワーフ兵が、一斉にそのドゥエルガルに襲い掛かった。しかし、ドゥエルガルは余裕の笑みを浮かべると巧みにモーニングスターを扱って全員を殴り潰した。


 オレは矢を弓に添えると、モーニングスターを持つドゥエルガルに狙いをつけて射った。すると、ドゥエルガルは飛んでくる矢をモーニングスターで打ち落とし、叫びながらオレの方へ向かってきた。



「グラッハッハッハ!! まさか、こんな所であの時の借りを返す事ができるだなんて、夢にも思わなかったぜえ!! ハイエルフの姉ちゃんよ!!」



 ん? こいつ、オレを知っている。……いや、よく見れば、オレもこのドゥエルガルを知っていた。


 ――モーニングスターの重い一撃。避ける。動作と共に、また矢を打ち込んだが同じく弾かれた。



「お前、あの時の当たり屋か!!」


「ドゥエルガルの偉大なる戦士、ダグベッドだ!! あの喧嘩の続きをできるなんて、嬉しい限りだぜ! だが、今度は拳でなく武器での勝負、それも殺し合いだ!! ちょっと腕が立つからと言っても、お前みたいな細腕の女は殺し合いもした事がないだろう!! 恐怖でどうしようもなくなる前に、俺に命乞いをしろおお!! 必死で地面に額を擦り付ければ、ひょっとすれば俺の気が変わるかもしれねーぞ」



 そうだ。ダグベッド。ダグベッドと、アビー。


 ドワーフ王国入国時に、一日それぞれ別行動してみようってなってアテナ達と別れた後、メール達と偶然会って一緒にこの街を歩いていた。その時に、絡んで来て喧嘩になったドゥエルガル共。その時の事を思い出した。あの時の喧嘩は、こいつらの反則負け。


 でも、言われてみればオレ的にもあの時の決着は、ついちゃいないと思っている。しかも、あの思い切り殴られた腹の痛みも、まだ返してなかったっけな。


 ダグベッドの振り回すモーニングスターをかわしながらも、矢を続けて射るがダグベッドには通じていない。矢で攻撃されることに慣れているのか、器用に弾き飛ばす。



「グラーーッハッハッハ!! 武器での勝負となれば、ハイエルフのお前に勝ち目はない!! そうなれば、精霊魔法を使用するしかないな。それでやっと、この俺と吊り合いがとれる。だが使う前に、叩き潰してやる!!」



 オレは、ニヤリと笑う。



「何がおかしい!! これでも、喰らえ!!」



 ダグベッドは、モーニングスターをぐるぐると頭上で振り回して、勢いをつけた。大きな一撃がくる。だが――



「逆さ。精霊魔法を使わなくたってオレと武器勝負になった時点で、お前に勝ち目はないな! これがオレの弓術だ! ――鵙落とし(もずおとし)!!」



 思い切り矢を引き絞り、空に向けて放った。狙いはほぼ真上。そして直ぐに弓矢から太刀『土風(つちかぜ)』に持ち替えて、ダグベッド目掛けて突っ込んだ。


 ダグベッドは、慌てて向かってくるオレの方へモーニングスターを打ち込もうとしたが、少し遅かった。先程、上空へ向けて放った矢が落下してきてダグベッドの腕に突き刺さった。モーニングスターを握っている方の腕。



「ぎゃああああ!!」


「急いでいるんでな、時間がある時にまた稽古をつけてやるよ!」



 ――――横一線!


 オレは、苦悶に顔を歪めるダグベッドとすれ違うように太刀を走らせて打ち込んだ。ダグベッドは、白目を向いて前のめりに倒れた。



「よし、決着ついた。急いで、吊り橋に向かわないとな」



 大きな門をくぐり、吊り橋に移動――


 すると、そこには今までに見た事もない程の巨大で恐ろしい姿をした魔物が、ドワーフ兵達を踏みつぶし薙ぎ払い暴れていた。門の扉は、既に破壊されている。あれが、地竜――グレイドラゴン。


 グレイドラゴンは、吊り橋を渡りきっていて門の前でそこを飛び越え街へ侵入しようとしているが、防壁に残った僅かなドワーフ兵達が弓矢や投石、手斧や投げ槍を投げたりと必死の抵抗をしてなんとか喰いとめている。だがもう、もたないだろう。


 グレイドラゴンの後続、吊り橋にも100匹程のリザードマン。グレイドラゴンが門を通過し、街中に侵入したら一斉に突撃する気だ。


 オレは門をくぐると一旦防壁の方に振り返り、しゃがみ込んで両手を地にべったりと付けた。――風属性の魔法を詠唱。



「風よ! ≪突風魔法(ウインドショット)≫!!」



 両手に風が集まり、放たれる。それが地面を打ってオレの身体を宙高くに押し上げた。まさに噴射。


 その勢いを利用して、オレは僅かに残るドワーフ守備兵の残る防壁の上に舞い降りた。ドワーフ兵達は、その何処からか不意に現れたオレの姿を見て、声を上げた。



「ハイエルフ⁉ あ、あんた何処から⁉」


「そんなのは後々。オレは助けに来たんだよ。何はともあれ、まずはあのグレイドラゴンをなんとかしないとな」


「いや、もうここは駄目だ。あんたも早く逃げた方がいい!」



 心配をしてくれるドワーフ。見ると、リザードマンやグレイドラゴンとの苛烈な戦闘でボロボロになった防具や武器。斧を握る、血まみれの手。



「まあ、見てなって。オレはBランク冒険者だ。そして、ガンロック王国では、チャンピオンとして知られている! つまり、あのドラゴンはオレに任せろって事だ! なんとかしてやる!」


「な、なんとかしてやるって……」



 グオオオオオオオオオオン!!



 グレイドラゴンが防壁の上にいるオレに気づいた。だがオレはというと、そんな恐ろしいとされているドラゴンを目の前にしても表情には、笑みすら浮かべていた。


 さあ来い、さあ来い! やってやるぜーー!!







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ダグベッド 種別:ドゥエルガル

ドワーフの王国に入ったアテナ一行がそれぞれ別行動をした時に、ルシエルが喧嘩した相手。あの時は素手での喧嘩でルシエルとノエルの勝利だったが、今度はモーニングスターを手に現れた。その本気になった強さは、ドゥエルガルのリーダー、ボーグルに次ぐ。


〇グレイドラゴン 種別:魔物

竜種。別名、地竜。巨大で、岩石のような皮膚と身体を持っている。その爪は、岩石を砕く事ができ口から強力な破壊光線を発射できる。炎は、吐かない。他にも火竜や水竜等存在する。


〇モーニングスター 種別:武器

メイスに鎖と棘鉄球が装着された武器。振り回して遠心力を付けた所から繰り出される一撃は、フルプレートアーマーも破壊する。ただ重量のある武器なので、腕力が無いと使いこなせない。


鵙落とし(もずおとし) 種別:弓術

空に向かって矢を放ち、狙った位置へ時間差で矢を落下させる技。

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