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第405話 『VSザーシャ帝国四将軍』




 昔、まだ私がルーニ位に幼かった頃、姉のモニカと一緒に師匠に剣術や体術、色々な技を叩き込まれた。その時に師匠が見せてくれた技。


 そのうちの技のひとつが、【真剣白刃取り】。


 それを師匠は見せてくれたけど、その時は結構きつい修行の日々が続いていたから、師匠が私とモニカのご機嫌をとろうと見せてくれた宴会芸か何かだと思っていた。モニカも同様に思ったようで、師匠がそれを見せてくれた時に、手を叩いて喜んでそれで終わってしまった。


 だけど私は、その【真剣白刃取り】という芸が凄く面白かったので、是非それを覚えてお母様に見せてあげたいと思って練習を重ねた。


 そして、それを習得するとお母様の墓石の前で師匠に頼み、師匠の協力のもとにお母様に披露した。


 それから間もなくして、あれは宴会芸ではなく武術の技だったのだと悟った。


 …………いずれにしろ、【真剣白刃取り】。それを体得している私は、それを使う事ができる。だから今、目前でイグーナに振り下ろされている剣を、その技で掴んで止めるという事は可能なはず。


 一つ問題があるとすれば、実践で使用するのは、これが初めてという事だった。



「シネエエ!! アテナ!! オマエノゾウモツヲ、イタダクノガタノシミダ!!」


「臓物は、そんな簡単にはあげられないわね!! そいやあっ!!」



 イグーナの振り下ろされえる剣に合わせて両手を合掌する。やった! 剣を挟んだ!!


 そして、その剣を挟んだと同時に、イグーナを蹴り飛ばした。それを見た左右にいた新たに現れたリザードマン達が再び襲い掛かってきたが、イグーナの剣を奪い取ったのでそれで防いだ。


 ギイイイン!!



「ギャハハ!! コロセ!! コロセ!! ニンゲンヲコロセ!!」



 ギャオスの声。2匹のリザードマンと打ち合っていると、更に5匹のリザードマンが襲い掛かってきた。大勢で攻め込んで来ているのは、知っているけど全くきりがない……



「次から次へと! ちょ、ちょっといい加減に!!」



 愛刀『ツインブレイド』があれば……そう思った刹那、襲い掛かってリザードマンのうち、一番後ろにいた1匹が目の前にいた同族のリザードマンを持っていた剣で後ろから突き刺した。


 仲間が振り返る。しかし、その乱心したかのように思える行動をとったリザードマンは、ギャオスを除いた仲間のリザードマンを全て斬り伏せてしまった。イグーナも背中を斬られ前のめりに倒れた。



「ナ……ナゼダ……キガクルッタカ……」



 イグーナはそういうと完全に動かなくなった。


 まさか、同士討ちするなんて……そういう魔法や幻術もあるけれど、いったいこのリザードマンに誰がそんな術をかけたのか。そう思ってリザードマンを見る。

 


「アテナ、フタタビオマエニ、アイタカッタ」



 ま、まさか……



「ギー!! まさか、あなたがここへ現れるなんて!!」



 なんと、乱心したかに思えたリザードマンの正体は、彼だった。


 ドワーフ王国にやって来る前に地底湖でのキャンプで、サヒュアッグに攫われたメール達を救い出しに行った時に出会った、ちょっと変わったリザードマン。


 ギーに気づいたギャオスが吠える。



「ギー!! ナカマヲコロシタ!! ウラギッタ!! テイオウザーシャニ、エラバレシヨンショウグンノイッピキナノニ、ウラギッタ!! ウラギリモノニハ、シダ!! ギャハハ!!」



 ギャオスの言っている事は最もだった。ギーは、ザーシャ帝国の帝王がこの戦争で選んだ四将軍の一人なのだ。オモドと名乗ったリザードマンと、目前のギャオスもそうなのだろう。


 じゃあ、目の前に倒れているイグーナを入れてこの4匹で、リザードマン達の最高戦力。


 そんな私の思っている事を見透かしていたかのように、ギーが答える。



「イグーナハ、エラバレシ、ヨンショウグンデハナイ。ホカニモウイッピキ、カメオントイウ、センシガイル。ザーシャテイコクノ、シンコウヲトメタケレバ、テイオウザーシャト、グレイドラゴン、ソレニカメオント、ココニイルギャオスヲタオセバオワル」



 リザードマンの帝国ザーシャ、その帝王ザーシャと吊り橋に迫っているグレイドラゴン。そして、カメオンという将軍と目の前にいるギャオスを倒せば、リザードマンのこの侵攻軍は崩壊するとギーは教えてくれた。



「ギー。でもあたな、こんな事をしてもいいの? 助けてもらってあれだけど、あなた仲間を裏切っているのよ」


「ドウゾクハ、ナカマ! ダガ、オレニトッテ、アテナハモットタイセツニナッタ! モハヤオレハ、ザーシャニハモドレナイ。ダカラ、オマエノチカラニナロウ」



 ギーは、私の為に仲間を裏切った。だけど、今このドワーフの王国が攻められている状況下でギーが味方になってくれているのは、正直心強いと思った。



「フタリトモ、ニガサンゾ!! ギャハハハ!!」



 ギャオスは、仲間の死体から新たに槍を手に入れるとそれをこちらに向かって投げてこようとした。


 しかし、その槍を投げようとしたギャオスの腕に、鎖鉄球が巻き付いた。



「ギャギャ!?」


「誰!?」


「遅れて申し訳ない。クラインベルト王国、鎖鉄球騎士団ゾーイ・エル、参戦する。私が来たからには、吊り橋までの道のりをなんとしても切り開いてやる」


「ゾ、ゾーイ!!」



 クラインベルト王国、鎖鉄球騎士団ゾーイ・エル。彼女とは、ガンロック王国で戦った。彼女もまた巧みに鎖鉄球を使い、強敵だった。その彼女が今回は、ゾルバとの取引で私達の味方になっている。



「ニンゲンノメス!! コイツモウマソウダ!!」



 ゾーイは鎖を思いきり引いた。すると、鎖に腕を取られていたギャオスは地面に転ぶ。ゾーイはギャオスから鎖鉄球を外すと、頭上でフォンフォンという音をさせながら回転させ、勢いをつけてギャオスに投げつけた。


 ギャオスは起き上がると、太いその腕でゾーイの放った鉄球を弾いた。


 弾かれた鉄球は、ゾーイのもとに戻っていく。すると彼女は戻ってきた鉄球を再びギャオスに向かって思いきり蹴り飛ばした。鉄球は、加速し見事に命中。ギャオスの腹深くにめり込んだ。



「ギャハ……ナンダコノブキハ……ゲフ……」


「指揮官クラスのリザードマン、1匹排除完了。殿下、このまま突っ切るぞ」


「え? あ、うん」



 そう言えば、この黒髪前髪ぱっつん娘のゾーイは鎖鉄球を巧みに扱い、鉄球を投げるだけではなく蹴り飛ばして攻撃する技をもっていた事を思いだした。


 その名も、【レッキングボール】。それを思い出すと、なぜか私のお腹も微妙に痛くなった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇真剣白刃取り 種別:対剣術

相手の剣を合掌し、挟み取る技。挟んだ時に、前蹴りを入れて奪い取るやり方が基本だが、熟練すればそのまま剣を折る事もできる。遥か東方にある、侍のいる国で編み出された技。

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