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第403話 『ドワーフ王国での乱戦』




 真っ赤な顔で苦悶に顔を引きつらせながらも、両手で私の腕を掴むミューリ。でも、ここまで決まれば絶対に外す気はない。一度噛みついたスッポンのように、このまま気絶するまで締め上げる。


 これで終わりと思った次の瞬間、誰かに背中を蹴られた。ミューリに馬乗りになっている状態からだったので、派手に前方へ転んだ。



「くっ!」



 だけど転んだ勢いで一回転し、そのまま立ち上がる。振り向くと、私に蹴りを放ったのはノエルだった。



「やってくれんなー! 何者なんだ、おまえ? クラインベルトの今日日の冒険者は、あんな奇妙な投げ技を使うのか?」


「ううん。私と、私の姉。あと、師匠とか……数人程度しか使えるものを知らないわ」


「ゴホッゴホッゴホッ……ア、アテナちゃん……まさか、こんな技を持っているなんて……本当にとんでもない冒険者だね……それに、とても王女様とは思えないような絞め技……ゴホッ」



 ミューリが復活してしまった。


 ギブンも、ミューリが立ち上がり回復するのを待ちながらも、私が地面に突き立てた剣を奪おうと近づいてきている。タイミング的には、私が剣を取った瞬間を狙うつもりなのだろうけど……流石、老練冒険者のギブン。


 ギャッギャーーーー!!


 仕切り直しと思った所で、また横槍が入る。街の至る所で暴れていたリザードマン達が、こちらに気づいて襲い掛かってきた。ミューリ達も注意を一旦リザードマンに向ける。



「ええい、こんな時に邪魔だよ!! ≪火炎砲撃(フレイムキャノン)≫!!」



 ミューリの火属性魔法。激しい炎が、襲い掛かってくるリザードマン達を焼いた。


 それでも抜けてきたリザードマンをノエルが戦斧で斬り上げ、ギブンが斬り落とした。そのどさくさに紛れて二振りの剣を手にした私も、左右から襲い掛かってきたリザードマン2匹をそれぞれに斬り倒す。


 ミューリがそれを見て、声をあげる。



「ノエル!! ギブン!! 同時にアテナにかかって!! 二人の攻撃を回避されても、そこで僕が終わらせる!」


「気合入ってなんなミューリ! よし解った、あたしに任せとけ!」


「うむ。しかし、できる事ならこれで儂が捕らえてやるわい!」



 マズイなと思った。ただでさえ、1対3の不利な状況なうえにその3のほうは、かつての息ぴったりの凄腕仲良し冒険者パーティー。連携もこの上なくとれている。


 だけど……やるしかない。


 ギャオオオオオス!!


 ノエルとギブンが同時に動くと思って、構えた。そこで、また新たなリザードマン達が襲い掛かってきた。そのうちの1匹はかなり強そうな感じ。


 さっきのオモドと名乗ったリザードマンと同じく指揮官クラスだと思った。でも、これは利用できる。このどさくさに紛れてミューリ達を撒けば――



「ギャハハハ! オレハ、ザーシャテイコクサイキョウノセンシ!! ギャオスダ!! モノドモ、ヒュームト、ドワーフヲ、ミナゴロシニシロ!!」



 本当に強そうなリザードマン。身体中には無数の傷跡があり、この戦いにおいてもいくつか傷を負っているようだったがものともしていない様子。


 たまたま近くにいたノエルと、ギブン相手に早速剣を交えている。


 ミューリの方は……と見てみると、そちらも何十匹ものリザードマンに囲まれていた。まあ、ミューリなら大丈夫だろう。


 よし、これならまた逃げれる!


 私はこの隙をついて、再び吊り橋の方へ向かった。



「あっ! 待ってアテナちゃん!」


「嫌! 待たない!」



 グオオオオオオオオンン



 吊り橋が近くなってくると、それに伴って吊り橋を渡ろうとしているドラゴンの声も大きくはっきりと聞こえ始めた。


 それにしてもドラゴンという位だから、翼はあるはず。地竜を見たことはないので、本当の所はどうかは解らないけれど、もしかしたら地竜には翼がないかもしれない!?


 そうでも考えないと、翼でひとっ飛びにドワーフ王国に降り立てるドラゴンが、未だに吊り橋で足止めされている理由が思いつかなかった。


 ドラゴンなんだから、ちょっと腕に自信のあるドワーフ兵が束になった所で、足止めできる訳がない。それに、ドラゴンにはリザードマンの軍団がついている。



「うーん、とりあえず、現場に行ってみるまでは、あれこれ考えても仕方がない。急ごう!」



 そう思い直し、駆けた。――ひたすらに駆けた。


 駆けながらも、住人たちを襲っているリザードマンとすれ違っては斬った。リザードマン達の叫び声。そして血飛沫。


 吊り橋のある、大きな街の出入口門が見えてきた。よし、もう少しで辿り着く。


 後方から、何かが凄まじい勢いで私に向けて飛んでくる。投げ槍。それをかわすと同時に振り向いて、槍が飛んできた方へ向けて火球魔法(ファイアボール)を放った。

 

 火球が着弾し、爆炎が広がる。


 しかし追ってくる全員を倒せなかったようだ。爆炎の中から、先程の傷だらけの強そうなリザードマンが何人もの部下を引き連れて飛び出してきた。


 ギャオスと名乗っていた司令官クラスのリザードマン。完全にロックオンされている。



「キサマガ、アテナダナ!! カミノイロ、ソノミノコナシ、カンゼンニアテナダ!! ハナシトイッチスル!! アテナハ、オレガコロシテクイタイ!!」



 私を喰うって、何処か言われたセリフ。そんな事を思っていると、ギャオスはこちらに一直線に向かってきながらも、再び槍を投げてきた。


 風を斬るような音と共に、槍が飛んでくる。それをかわすとギャオスはまた次の槍を準備し投げてきた。



「こ、これはここで倒しておかないと、とても吊り橋まで辿り着けそうにないわね」



 そう呟いた所で、吊り橋の方からも別のリザードマンの部隊がこちらに向かって来ていた。挟撃されている。


 前後から何十人ものリザードマン。再び襲い掛かられる。


 多人数を相手にする時は、兎に角動きを止めてはならない。攻撃を受け止めたとしても動きが止まり、そうなると忽ち四方八方から容赦ない攻撃が降り注ぐ。


 私は二振りの剣で、襲い掛かってくるリザードマンと一切打ち合わないように回避に徹しながらも、1匹2匹と斬り倒していった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


高熱圧縮放射(フレイムキャノン) 種別:黒魔法

中位の、火属性魔法。熱と炎を圧縮して、放つ魔法。さながらビームのようで、この魔法で打ち抜かれた対象は、燃えて焦げる。

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