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第400話 『それぞれが思う正義』




 吊り橋を目指して、街中をひたすらに駆ける。


 途中、街の住人であるドワーフ達が、リザードマン達に襲われている所に遭遇し、リザードマン達を倒して住人を救った。


 そういう場面が幾度もあり、何人ものドワーフ達が襲われていて、その度に助けながら突き進む。すると、いつしか私達はこのドワーフの王国内で暴れまわっているリザードマン達の標的になってしまっている事に気づいた。


 とうせんぼと言わんばかりに、正面に現れたリザードマン達を剣で斬りつけ、突き刺して蹴飛ばす。そして、更に斬り捨てる。



「うわああああああんん!!」



 子供の泣き叫ぶ声。


 見ると、リザードマン2匹がドワーフの幼い女の子に、跳びかかっていた。



「ゾルバ!!」


「御意!! このゾルバめにお任せを!!」



 ゾルバの放った鎖鉄球が、ドワーフの女の子に跳びかかるリザードマンの身体を、あわやという所で打ち抜いた。私はすぐさま、女の子を抱きあげると抱えて駆ける。


 近くの家に避難していたドワーフを見つけたので、その人達に女の子を預けた。



「もう大丈夫。ここで、少しの間隠れていて」


「うん。ありがとう、お姉ちゃん……でも、この国はどうなっちゃうの?」


「それも大丈夫。何とかして見せるから。王様も、今何とかしようとしてくれているし、我慢してもう少し頑張って!」



 そう言って女の子に微笑みかえると、私はまた吊り橋の方へ急ぐことにした。しかし、ゾルバは不服そうな顔をする。



「どうしたの、ゾルバ?」


「ドラゴンを倒すのでしょう? このまま逃げ遅れたドワーフ共を助けながら向かっていては、ドラゴンに吊り橋を渡られ、この王国へ侵入されますぞ」


「でも、放ってはおけないでしょ」


「殿下は目的を見失っておりますゆえ、お聞きくだされ! 大きなものの為、小さな犠牲を払うのも至極当然の事。小事に目を奪われていては、正義を果たせませんぞ」


「そんな正義、聞いたことがないわ! 泣いている女の子がいるのに、助けないなんてそれこそ正義じゃないわ。それに、こんな所で問答している暇はないでしょ。こんな事で、あーだこーだ言い合うなら急ごう!」


「…………」


「ぎゃああああ!!」



 ――悲鳴。振り向くと、鉄球騎士団の騎士たちが、赤い髪と緑色の髪の女の子に倒されていた。見覚えのありまくるマッシュルームカットの可愛らしい女の子に。



「ミューリ!! ファム!!」



 二人は既に魔法詠唱を始めていて、ミューリは両手に炎、ファムは全身に風を纏っていた。



「申し訳ない、アテナちゃん。僕は君達の友達として相応しくない。これから、アテナちゃんに酷いことをする事になる」


「なんだと!? 小娘共が、今なんとほざいた!! この無礼者めが!! このお方をどなたと心得る!! このお方は我がクラインベルト王国、第二王……」


「うるさい!!」



 ファムはそう言うと、風魔法でゾルバを吹き飛ばした。ゾルバの大きく肥えた身体が風船のように宙に浮いて、遥か彼方へ飛ばされていった。



「うぎゃあああああ!!」



 仲間が飛ばされてしまったのに、私はゾルバのその悔しそうな顔と、悲鳴を聞いてちょっとほっこりしてしまった。「ナイス、ファム」と呟き、こっそりと親指を立てる。……ってそんな状況じゃないか。


 ミューリとファムと再び対峙する。


 鎖鉄球騎士団副長のガイやゾーイは、タイミング悪くリザードマン達が襲い掛かってきいて、そちらにかかりっきりなって乱戦になっていた。とても今は、私の方へ助けにこれない状況。


 私はマッシュルームカットの可愛らしい二人の目を見つめると、ニヤリと余裕の笑みを見せた。


 逆に思い詰めた顔をしている二人には、それが衝撃的だったようで、一瞬びっくりした表情を見せる。



「残念だけど、私はヴァルターと帝国に行くなんて、死んでも嫌。だけど、ミューリやファムが苦渋の選択で、この国の人達を……ガラハッド王を助ける為に私を拘束し、帝国へ引き渡す決断をしたという事は十分に理解している」


「そうなんだ。それじゃあ、僕達に捕まってほしいアテナちゃん。この埋め合わせは必ずする。アテナちゃんがそのヴァルター将軍に、恨みを持っているのなら、僕達姉妹はその復讐に全面的に協力する。だけど、このドワーフの王国の平和が約束されてからだ」


「ファムもそう。今更、もう決断してしまった後じゃ、もうアテナ達にどう謝っても到底つくろえない。それでも、ガラハッド王だけは何に変えても守りたいんだ。ファム達の父親みたいな人だから」



 ガラハッド王とミューリとファムの間で、物凄く強い結びつきがあるのだと思った。それこそ、本当の親子の関係。ガラードみたいな馬鹿息子よりも、この子達の方がよっぽどガラハッド王の娘にふさわしいと思った。



「私達は冒険者でしょ? 目的の為に、時にはぶつかり合う事もある。例えば、別々の依頼者から同じ物の捜索を頼まれれば、それを巡って奪い合う場合もある。それは冒険者としての(つね)。だから、それでいいよ」


「え? それってどういうこと?」



 ファムが答えた。



「ミューリもファムも、正しいと思う事をすればいい。私もそうするから。だから、二人が私を拘束して帝国に突き出したいというのなら、仕方がない。この国の平和とガラハッド王の為にというのなら、私は二人に対して何も恨まないよ」


「アテナちゃん……」


「アテナ……」


「……だけど、そう上手くはいかないよ。こっちだって信じる正義がある以上、思いきり抵抗はするからね。私はヴァルターに捕まるのも、この国が滅ぶのも嫌!! どちらも絶対に防いでみせる!! だから二人も、冒険者なら冒険者の流儀に従えばいいんじゃないかな」



 そう言い切った。すると、二人の顔つきが変わった。今までは、思い詰めたような苦しい表情をしていたのに、急に冒険者そのものの顔になった。


 そう、それこそドラゴンとか……ダンジョンでお宝を守っているドラゴンを目にして、自分自身の可能性に挑もうとしている時の顔。冒険者そのもの。


 二人共、そういう顔をしていた。


 私自身も、ノクタームエルドで最強姉妹とうたわれている冒険者ユニット『ウインドファイア』と面と向かって戦う事になるなんて夢にも思わなかった。


 国が魔物に攻められている事態――不謹慎かもしれないけれど、ミューリやファムと戦わなければならない事に、内心は凄く高揚している。


 フフフ……この気性はきっと、お母様と師匠のせいだな。そんなことを思った。


読者 様


当作品を読んで頂きましてありがとうございます。

ブクマ・評価・イイね等下さいました方には、重ねてお礼を申し上げます。

いつも、ありがとうございます(*´Д`)本当に作品を書いていると、物凄い活力となります!うれしいです!


気づけばいつの間にか、当作品も400話目になってしまいました。自分自身びっくり驚いております。

3章は特に長くなってしまいましたが、いよいよ大詰めにも差し掛かっておりますので続けて読んで頂ければ嬉しいです。


完璧には程遠い作品かもしれませんが、日々もっといい作品が作れるよう引き続き頑張っていきますので、応援して頂ければ嬉しいです。

アテナさん達の冒険は、まだまだ続きますので、よろしければ見守ってやってください。

(; ・`д・´)お、押忍!


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