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第399話 『突撃! アテナ鎖鉄球騎士団!!』



 ゾルバがニタニタと笑いながらも、近づいてくる。私は彼に剣を向ける。


 すぐ目の前まで近づいてきたゾルバは、その場で私の方へ向かって跪いた。



「アテナ殿下。我ら鉄球騎士団にご命令をお与えくださいませ。さすればリザードマンの駆逐であれば、直ちに一掃してごらんにいれまする」



 副官のガイもゾルバに従うと、他の部下達も私に跪いた。しかし、ゾーイは私の方を睨みつけるなり、面白くなさそうにそっぽを向いた。彼女とは、ガンロック王国でやり合った。だから、因縁のような印象を与えてしまっているのかもしれない。



「それじゃ、皆私の後に続いて! これより、この国に攻め寄せてきているリザードマン達を撃退してこの王国を救う」


『御意!』



 ゾルバ以下鎖鉄球騎士団が私に従った。


 皆を引きつれ城の外に出る。すると、ドワーフの王国全域は戦場と化していた。ドワーフ達が逃げまどい、ドワーフ兵がリザードマンやドゥエルガルと戦闘を繰り広げている。


 石造りの家に火を放たれるという事はないが、既に殺められたドワーフ達が辺り一面に倒れていた。



 グオオオオオオオオンン!!



 ドラゴンの咆哮。王国の出入口にある吊り橋の方から響いてくる。あのドルフス・ラングレンと戦った大きな金属製の吊り橋。


 皆の事が、急に心配になった。ルシエル達の事もそうだけど、ジボールやベップさん、ユフーインさんやデルガルドさん。メールにミリー、ユリリア。この王国で知り合った皆は、無事だろうか。ううん、きっと大丈夫。



「アテナ殿下!! 早速敵が迫って参りましたぞ! 迎撃のご命令を!!」



 ゾルバの声に振り返ると、大勢のドゥエルガルの戦士達が武器を振りかざしこちらに向かって来る。


 ドゥエルガルの敵は、ドワーフだって聞いていたけど……この王国にいる者は全て攻撃対象みたいね。



「ゾルバ! 剣を1本貸してくれる?」



 ゾルバは私が先程、ゾルバの部下から奪い取って既に右手に持っている剣に目を落とす。



「もう、持っておられますが?」


「もう一本頂戴って意味よ。私は二刀流なの」



 そう言うと、ゾルバは近くにいた自分の部下に詰め寄り、その者が帯刀している剣を抜いてこちらに放った。私は左手でそれを掴むと左手にも剣を持ち、こちらに向かって来るドゥエルガルへ向けて駆けた。二刀流。ゾルバの声が響く。



「全体進め!! まず目標は、目前のドゥエルガルからだ!! 敵軍を殲滅し、アテナ殿下を御守りしろ!! 決して容赦はするなよ、我々鎖鉄球騎士団の恐ろしさ、とくと刻み付けてやれい!!」


『はっ!!』



 ゾルバの兵が、後方から一斉に駆けてきて私の後についてくる。城の外に待機していた兵も合わせて全部で、200名以上はいる。


 私はまず、向かって来るドゥエルガルを数人倒すと、この隊を率いているリーダーを探した。軍団というのは、指揮している者がいてその者を倒してしまえば総崩れになるものだ。



「いた!! あれがリーダーね!!」



 一人、明らかに立派な武器を持っているので、直ぐに解った。



「かかってこいー!! ドワーフ共!! リザードマンもついでにオラが殲滅してやるぞお!! ウッヒャッヒャ」



 乱戦。ドゥエルガル兵が暴れまわる所に、ドワーフ兵やリザードマンも参戦してきた。そこに、私達鎖鉄球騎士団もいるので、本当にこのドワーフ城前は、物凄い乱戦と化していた。


 その他大勢の敵を、味方のドワーフ兵と鎖鉄球騎士団に任せる。お陰で私は、あの大声で吠えているドゥエルガルのもとへ容易に辿り着けた。



「なんだ!! 冒険者か!? さては、おめえも金でドワーフ王に雇われたな!! 冒険者を見ればあの男勝りなハイエルフを思い出して胸糞悪くなる! よって、冒険者もドワーフ同様に殲滅対象だあ!」 


「あっそう。じゃあ、敵って訳ね。そうと解ればつべこべ言わずにかかってきなさい!」


「口の減らねえ娘っ子だな! 本当にあのハイエルフを思い出す! 冒険者とは、みんなこんな奴らなのか? まあ、いいだろう。オラが相手だ!! このアビー様が相手をしてやる!!」



 アビーと名乗るドゥエルガルは、両手に軽量のハンマーを持っていた。私と同じ二刀流。



「どうりゃああああ!! うはははは!! オラのこの攻撃の速さ、決して見切れんだろう!!」



 アビーは目の前のドワーフ兵二人をはね除けると、打ち込んできた。アビーの連続して放たれるハンマーを剣で弾く。そこから距離を詰める。



「生意気な、女だ!! 潰してやる!! だりゃあああっ!!」



 懐に入ったところでアビーは両のハンマーを合わせて頭上から振り下ろしてきた。私は両手の剣を十字に重ねて構え、その2本のハンマーを受けると同時に流れるような動きで、剣の柄をアビーの鳩尾に押し込んだ。



「ごめんない。この状況を早く片付けるには、指揮官クラスに狙いを定めて早々に退場して頂く。それが一番早いから」


「あ、あへ? う、嘘だ?」



 アビーには、もう何も聞こえてなかった。二本のハンマーをポロリと地に落とすと白目を向いて前のめりに倒れた。


 よし! この調子で指揮官クラスを倒していけば、簡単に片は付く。



 グオオオオオオオオンン



 吊り橋の方で、再び巨大な魔物の雄叫びが聞こえる。……そうだった。あの、リザードマンの秘密兵器であるドラゴンもいるんだっけ? なんとかしないと、被害が拡大する。



「ゾルバ!! これより私は、このドワーフ王国の出入口である吊り橋へと向かうわ。ドラゴンを倒さないと、あれが街へ侵入してきたら今よりも沢山の被害がでる」


「お言葉ですが、街はもうリザードマンやらドゥエルガルやらで溢れかえっており、ドワーフ達を見つけては襲い掛かっているという地獄絵図のような有様です。そこを突破するには、危険極まりないかと思われますが」


「それなら、貴方達がしっかりと守って! 頼りにしているんだから! 強いんでしょ、鎖鉄球騎士団?」


「殿下……勝算はあるのですか?」


「あるわよ! なかったら、こんな事しないから!」



 その言葉に驚いた表情を見せるゾルバ。ここぞとばかりに、更に激を飛ばす。



「さあ、ついてきて!! 街中を突破してドラゴンを倒しに向かうわよ!!」


「御意!! アテナ殿下に降りかかる火の粉、このゾルバ率いる鎖鉄球騎士団が振り払ってご覧にいれましょうぞ」



 またニタニタと笑う、ゾルバ。自分的にかっこよく決めたつもりなのだろうか? まったく、エスメラルダ王妃に任された任務がようやく果たせそうだからかもしれないけど、調子がいい男だなと思った。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇アビー 種別:ドゥエルガル

武闘派の灰色ドワーフ。ルシエルがドワーフの王国で別行動をしていた時に、喧嘩をした相手。その時は素手で勝負をしていた。もちろんアビーは、アテナが憎きハイエルフことルシエルの相方だと気づいていない。武器は軽量ハンマーの二刀流。

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