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第39話 『再会を祝して…… その4』

 


 



 オレ達と、ギルドの者達は、互いに突きつけ合っていた剣を下ろした。


 それを確認してから、アレアスは喋り始めた。



「説明するから、皆聞け。このウルフの生首の入った袋を見て解るように、俺達は今までウルフ狩りをしていた。このニガッタ村を、魔物ウルフから守る為だ。そして、その狩りの最中に、そこにいるハイエルフと出会って、一緒にその狩りを手伝ってもらっていた。理由は、わかるな?」



 エギーデは再び怪訝な顔をする。



「手伝ってもらった方が、ウルフを狩るのに効率がいいからだ。報酬もより稼げる。俺のパーティーは、俺も含め他の二人もちょっと訳アリで金が欲しいんだ。効率よく稼げるなら、誰だって当然そうするだろ?」


「だから、なんだというのだ? それと、このハイエルフがこの魔物を庇いだてする事と、なんの関係がある? おまえが言っている事が正しいと言うのであれば、今すぐこのウルフの首を落とせ。他のウルフと同じように」



 そう言われたアレアスは、面倒くさそうな態度をとった。



「だから、なぜそうなる? ピンとこいよ。あんた、この村の冒険者ギルドの責任者だろ? あの子ウルフは、このハイエルフ…………ルシエルの使い魔だ」


「ば…………バカな! 使い魔だと⁉」



 使い魔⁉ 使い魔ってなんだ? いや…………エルフの里時代に、なんか聞いたような気もするが。アテナに目をやると、アテナも驚いた表情をしている。



「使い魔だ。ウルフを討伐していた俺達は、途中ウルフを使い魔にするルシエルに出会った。それで、そのウルフを使えば他のウルフをおびき寄せたり、色々効率的な討伐が可能になると思い、ルシエルに協力を求めた。ルシエルは、快く引き受けてくれて、共に大量のウルフを上手く討伐できたよ。俺とダルカンとミリス、ルシエルとその使い魔の、子ウルフの…………」



 アレアスがそう言ってこちらを見る。わかっている。考えろ、オレ! すぐ答えなくては――――


 ――――思いついたっ!!



「カルビだ!! 使い魔のカルビ!!」



 言った途端、ミリスが吹き出し慌てて口を押える。 


 その名前にその場の張りつめたような空気は、一気に崩れた。エギーデを除く周りの者達も、その子ウルフの名前に笑いを堪えられず吹き出している。さっきまで、剣を突きつけてきていたギルドの者も爆笑していた。



「そう!! カルビだ! 使い魔のカルビを含める、皆のチームワークのお陰で、見事に大量のウルフを討伐できた」



 エギーデは、鼻で笑った。



「フンッ! その話が本当であっても、証明できなければ無駄だ。使い魔の証明である、魔装具も身に付けているようには見えんが。犬型であれば、首輪だろ? 首輪型の魔装具を身につけさせているはずだ」


「証明ならできるよ!!」



 アテナは、剣を鞘に納めるとそう言った。



「魔装具は、旅の途中魔物に襲われ破損したの。だから、これから買いなおすつもりだったのよ。そして、この子……カルビ…………ぷぷ。カルビだって。…………失礼。カルビが使い魔だっていう証明は、エスカルテの街のギルマス、バーン・グラッドに問い合わせてくれれば、きちんと証明してくれるわ」



 バーン・グラッド――――その名前を聞いて、エギーデの顔は青ざめた。



「バーン・グラッドだと⁉ 本当なのか? その話、本当だろうな?」


「本当よ。だから、問い合わせてみて。だけど、証明されたあと、あなたのやった事については……」


「まてまてまて!! わかった! もうわかった!! これは、誤解だったのだ! 許してくれ」



 いきなり態度がコロリと変わったエギーデを見て、アテナがクククと笑うと、オレに視線を向けた。どうする?って事だろうな。



「あんたも責任があるのは、解った。でも、もう誤解は解けたよな?」


「ああ! 勿論だ。おい! その使い魔を放せ!」



 エギーデが命じると、子ウルフ…………カルビは解放された。すると、カルビは一目散にオレ目がけてダッシュし飛びついてきた。ペロペロと顔を舐めるので、抑えようとしたがおさまらない。よだれが顔について、凄く犬臭いぞ!



 事が解決すると、成り行きを見守る周りにいた者達やギルド関係者は、立ち去っていった。


 すると、先ほど助けたエルフがかけよってきた。そして、なんとか加勢しないといけないのに、怖くて動けなくてごめんなさいという事と、助けてくれてありがとうという事を何度も言われた。



「あんたがエルフだったから、カルビは恐らく、オレと間違えたのかも。それか、オレと同じエルフだったから、その姿が重なってしまって助けたに入ったんだと思う。それでも、カルビが時間を稼いでなければ、あんたはあの男達に連れ去られていた。御礼なら、カルビに言ってあげてくれ」



 そう言うと、助けたエルフはカルビの頭を撫でてお礼を言った。カルビは、目を丸くしていた。


 そのあと、アテナやルキア、それにハルとアレアス達にもお礼を言った。


 ひと騒動あったがこれで村を出発して次の目的地へ向かう。


 皆との別れ際、アテナとルキアがハルと別れを惜しんでいる間、オレはアレアス、ダルカン、ミリスに別れを言った。



「またな! ダルカン!!」


「ああ。また会おう」


「アレアスも助けてくれてありがとう」


「ルシエルには借りがあったからな。助けるのは、当然だ」


「ミリス……」


「本当は、もしもう一度再会できたらルシエルをうちのパーティーへ、どうしても誘いたかったんだけど…………フフフ。どうやっても、無理みたい。素敵な仲間ね」


「そうなんだ。アテナもルキアもカルビも、オレの素敵な仲間なんだ」



 ミリスは、頷いてオレの両手をそっと握ると、また会いましょうと言った。


 いよいよ旅立つとハルとアレアス達は、オレ達が見えなくなるまで見送ってくれた。


 こうして、新しい仲間も加わりオレとアテナとルキアと……それにカルビ…………4人の旅が始まった。



「アテナ……ひとつ、聞いていいか?」


「うん? いいよ、なに?」


「カルビの事なんだけどさ。エギーデに、バーンの名前を出したろ? なんで、もうバーンがカルビの事を知ってて、使い魔の事を証明できるんだ?」



 アテナは、クスクスと笑った。



「え? そんな訳ないでしょ? そんなの嘘だよ。バーンは、お父様…………国王陛下から、直で指令を受けたりする位のギルドマスターだよ。きっと、そんな大物の名前を出せば、村のギルドの責任者クラスならビビるかなって思ってね。あはは、うまくいった」


「はったりか!! まいったなーー、アテナには。おかしいなとは思ったが、カルビが殺されそうになってて、そこまで考えていられなかった。それで、大丈夫なのか?」


「大丈夫。バーンには、ラスラ湖の件があるから…………もしもエギーデが問い合わせても、察して対応してくれるよ」


「なるほどな」



 アテナのその考えに、感心していたらルキアの悲鳴が聞こえて来た。



「わあああああ!! やめてーーーー!!」



 カルビがルキアの尻尾に噛みつこうと、追いかけまわしている。必死になって走って逃げまわる、ルキア。それを追いかけるカルビ。


 ルキアを追いかけ回して尻尾を、ガジガジと噛んでいるが……カルビにしてみれば、ちゃんと手加減もしているみたいだし、遊んでいるつもりのようだ。


 ルキアの方は、そんな感じじゃないようだけど。



 その光景に、オレとアテナは腹をかかえて笑い転げた。









――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ルシエル・アルディノア 種別:ハイエルフ

アテナのパーティーメンバー。Fランクの冒険者で、クラスは【アーチャー】。精霊魔法も得意。外見は長い髪の金髪美少女だが、黙っていればという条件付き。弓の名手でナイフも良く使う。ニガッタ村でアテナと合流、新たにルキアとカルビも仲間に迎えてまた新しい冒険に胸を躍らせる。無頓着な性格のような印象も人に与えるが、実は情に厚く優しい。たまに、アテナを小馬鹿にしては、大はしゃぎする。きっとそれは、大好きの裏返し。


〇アテナ・クラインベルト 種別:ヒューム

Dランク冒険者で、その正体はクラインベルト王国第二王女。趣味は、旅と食事とキャンプ。腰には二振りの『ツインブレイド』という剣を吊っていて、二刀流使いでもある。ニガッタ村で念願のライスを入手し、早速何か作ろうとトロフの森へ進行中。ルシエルと一旦別れ再開するときに、自分はルキアを仲間に迎え入れたが一方ルシエルはカルビを迎え入れた。その事をとても面白いと感じている。


〇ルキア 種別:獣人

Fランク冒険者。まだ僅か9歳だが、いつも一生懸命でとても賢く気遣いのできる優しい少女。エスカルテの街のギルマス、バーンからもらった大きなナイフを武器にする。アテナ、ルシエルと共に新たな冒険に出発するべくニガッタ村を出ようとしたが子ウルフの騒動に遭遇する。ルシエルの知り合いのアレアス達冒険者達にも救われカルビは事無きを得てルキア達の新しい仲間となった。だが早速ルキアの尻尾はカルビの餌食となった。耳も尻尾ももういっぱいいっぱいだった。


〇ハル 種別:ヒューム

Dランク冒険者。クラスは【シーフ】。気さくで優しい性格。最近はニガッタ村を拠点にして、周辺を荒らす魔物の討伐などを請け負っている。気ままな生活が好きで、1人で行動しているがアテナやルキアと知り合い、一時的に行動を共にする。子ウルフとエギーデの件がなんとか収まって一安心。トロフの森までついて行っても良かったが、アテナとルシエルの再会についてや、新しい仲間達との積もる話もあるだろうと気を利かし、ここで別れる。アテナ達が新しい冒険に身を投ずるように、ハルもあの林檎の実ったトレントを探して新たに冒険を再開する。


〇エギーデ・ロドヴィン 種別:ヒューム

ニガッタ村の冒険者ギルドの責任者でBランク冒険者。ニガッタ村の冒険者ギルドの責任者。好戦的という訳ではないが、友好的ではない。ハルとは見知った仲のようだが、仕事においては自分の考えを譲らない。魔物は悪しきものとした考えを前提として持っており、ニガッタ村周辺の魔物討伐に力を注いでいる。ルシエルの必死の抵抗と、アレアス達の言葉、更にアテナのバーン・グラッドという名で、今回の件は引き下がり子ウルフは許された。


〇ミリス 種別:ヒューム

Dランク冒険者。クラスは【プリースト】。リオリヨンの街で活動していたが、ウルフ討伐の噂を聞きつけニガッタ村へウルフ討伐にやってきた冒険者。アレアス、ダルカンとパーティーを組んでいるが、本作31話でルシエルを気に入り仲間にならないかと誘った。回復魔法が得意だが、実は補助魔法などバッファー的な役割も得意。


〇アレアス 種別:ヒューム

Dランク冒険者。クラスは【ソードマン】。リオリヨンの街で活動していたが、ウルフ討伐の噂を聞きつけニガッタ村へウルフ討伐にやってきた冒険者。ミリス、アレアスとパーティーを組んでいて、一応リーダー。チームでは盾役もこなす。本作31話に登場。子ウルフを助ける為、エギーデと論戦。本来、自分達はリオリヨンの街からウルフの群れの討伐をする為にやってきたのに、ここで子ウルフを救うために言葉を放ち、不思議な気分になっている。


〇ダルカン 種別:ヒューム

Dランク冒険者。クラスは【ウォーリアー】。リオリヨンの街で活動していたが、ウルフ討伐の噂を聞きつけニガッタ村へウルフ討伐にやってきた冒険者。ミリス、アレアスとパーティーを組んでいる。斧が得意なパワー型。本作31話に登場。言う時は言う性格。そして、見た目通り物怖じしない性格。


〇バーン・グラッド 種別:ヒューム

クラインベルト王国の王都を除いて二番目に大きな街エスカルテにある冒険者ギルドのギルドマスター。現在、クラインベルト王国中で奴隷売買などの犯罪を行う盗賊団が出没しており、国王からの命令と冒険者ギルドの責任者として、調査中。アテナがラスラ湖でキャンプをしていた際に、アテナの父である国王にその居場所を報告したのでアテナは、国王に連れ戻される結果となり機嫌を悪くした。その為、今回子ウルフの件でバーンの名を使った事をアテナはまったく悪びれていない。


〇子ウルフ 種別:魔物

狼の魔物。エスカルテの街からニガッタ村へ旅するルシエルと出会い、ついには懐いてしまった子ウルフ。最初は敵意剥き出しだったが、何度かルシエルとやり取りする間にルシエルの事が好きになった。それから、村の冒険者ギルドと騒動になり、責任者であるエギーデに殺傷されそうになるがルシエルやその仲間達皆が子ウルフを助けた。名前は、カルビと食いしん坊のルシエルが名付けた。


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