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第381話 『危険な森の薪拾い その2』





 猿達は非常に凶悪な顔をしていた。


 気が付くと、すっかり私は木の上でその無数の猿達に囲まれている。ど、どうしよう……


 少し気を抜くと途端に猿達は、木の上から私に薪を投げつけてきた。そして次第に投げるものも、石やら尖った枝やらに変わってきている。どんどん凶悪になる顏。……なんだか、凄く嫌な予感がする。



「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!! お猿さん達、聞いてください! 私は敵じゃないです!!」



 本気で猿達にそう言ったが、まったく理解されていない。むしろ、縄張りを荒らした事で制裁を加えようとしているのか、ただ人間を見つけたのでいたぶろうとしているのか、はっきりとは解らないけれど何かそんな理由で襲ってきている感じがした。


 猿達が徐々に詰めてくる。木から降りようとしても、石や薪を投げてくる。その度に、なんとか回避をしてはいるものの、木の上で足場が不安定な上に、動きが制限されていて直撃を免れない場合もある。



「きゃあっ!!」



 木に巻き付いていた蔓をロープのように利用して、何処からかこっちへ飛び移ってきた猿が私のお尻を触ってまた何処かへ消えていった。慌てていると、今度は胸の方もやられた。


 こ、これは……襲ってきている猿の中にボーゲンみたいなのがいる。


 一瞬、そう思ったけれど、あとでそう思った事が何かしらで彼にバレたら、思いきりまた叩かれると思って、頭から振り払った。



「い、痛いっ!!」



 また石が飛んできた。油断すると、すぐ投げてくる。もうだめだ。木の上だとこの猿達相手には勝ち目がない。とりあえず、木を落りて地に足がついたら大急ぎで薪を背負って全力で逃げるしかない。そう思った。



「よ、よーし。こうなったら……」



 木の幹の方へ慎重に移動する。下に降りる為に、枝へ足をかけた。


 ウキキキキキーーー!!



「ヒイイイイイ!! いたたたた!!」



 枝を利用し、木の下へ降りようとした瞬間、無数の石礫が飛んできた。腕や足、背中だけでなく顔にも当たった。


 このままこの集中砲火を耐えていれば、そのうち攻撃は収まると思ってずっと耐えていたけど、猿達が投げ続ける石礫は止まらない。



「いたたたた!! 痛い!! もう駄目!!」



 木を掴んでいた手、その甲に石が直撃した。更に身体中にも――


 私はもう、とても木に掴まっていられなくなって、木から落ちた。



「ああああああ!!」



 少し落下した所で、石を受けた腕とは逆の方で枝を掴んで落下を止めた。でもこれは。木に片手てでぶら下がっている状態。まずい……このままじゃ、そのうち握力が尽きて地面に落下する……



「うっ……うう……」



 なんとか、もう片方の手で枝を握る。手の甲に石が直撃したから少し腫れて痺れているけど、我慢すれば力も入る。兎に角、なんとかもう一度木にしがみついて這い上がらないと。

 

 ウキキキキ!!


 木の枝を掴み、その上に登ろうと藻掻いていると猿達が私の近くまで集まってきた。嫌な予感……


 ウキーーー!!



「や、やめてえええ!!」



 私がなんとか必死で掴んでいる枝の上に何匹もの猿が移動してくると、そのうちの一匹が私に抱き着いてきた。それを皮切りに更に2匹3匹と、続けて抱き着きてくる。お、重い!!


 猿達は、悪魔のような形相で私の胸やお尻をまさぐってきた。私は猿をなんとか振り落とそうと、藻掻いたけれど……もうだめ……自分の体重に加えて計8匹もの猿の重さも加わり、もはや枝の上によじ登る腕の力も奪われていた。


 猿に身体中を触られ好き放題されていると、1匹の猿が私の顔に近づいてきた。



「ううう……や、やめてえええ!!」



 ウキ? ウキキキーー!


 一瞬可愛い顔をしたかと思うと悪魔の顔に豹変する。顔の近くまでよってきた猿は、尖って杭のようになった薪を私の喉元に当ててきた。その顔は、本当に悪魔そのもので「これからこれをオマエの喉に突き刺してやる」そう言っているようだった。


 このままじゃ、殺される!!


 すると、私の下半身の方に抱き付いたり、ぶら下がっている猿達にも変化が起きた。下半身のほうにいる猿の1匹が私の喉元に当てている杭のような先の尖った薪を手にしていた。そしてこれ見よがしにそれを見せると、私のお尻に突き刺そうとした。



「いやあああ!! やめてえええ!!!」



 流石にこれは耐えられない。私は、叫んで両手を離す。ドスーーンと言う大きな音とともに、地面へ落下した。



「う……うう……」



 う、動けない。落ちた衝撃と痛みで、動けない。


 ウーーーキッキッキッキーー


 地面に落下し、仰向けのまま今登っていた木の上の方を見る。すると、さっきまで襲い掛かってきていた猿達が大笑いしながら私を見下ろしているようだった。


 こ、こんな凶悪な魔物、あったことがない。な、なんて危険な森なのだろう。レティシアさんが危険と言った意味がようやく解ってきた。


 その時、何かが木の葉を起用に避けながらこちらに羽ばたいてくる。鳥?


 その鳥は、とてもカラフルな色をしていて、なんだかずんぐりとしたフォルムがとても可愛らしく思えた。


 ウキキキーー!!


 その鳥が仰向けになっている私のもとに羽ばたいてくると、猿達も興奮してその鳥を捕まえようとした。しかし、鳥は器用に猿達をかわしとても捕まえられない。


 でももし、あの猿達に捕まったらきっと酷い事をされる。なんとかしないと。立ち上がろうと身体に力を入れる。ううう……


 そうしていると、そのずんぐりしたカラフルな鳥は仰向けになっている私のもとへきて、胸に降りた。そして、そこから私にこう言った。



「はじめまして、レディー。僕はボタンインコのアローと申します。差し出がましいとは思いますが、見ていられませんでした。とても、お困りのようですが大丈夫ですか?」



 流暢に喋るその言葉……私は、まだ木から落ちた衝撃で、幻でも見ているのかと思った。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇アロー 種別:ボタンインコ

喋る事のできるボタンインコ。カラフルな色に、流暢に喋る。単なる鳥か、魔物か?

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