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第380話 『危険な森の薪拾い その1』




「いってらっしゃーーい」



 レティシアさんがそう言って手を振ると、早速薪拾いにキャンプを出た。


 森は結構深く、鬱蒼としていた。その中を私は、武器も無しに薪拾いに歩いていた。何処からともなく、不気味な鳴き声。



 キキキキキキキ……



「ヒ、ヒイィィ!!」



 森の奥から、木の上から――そして草の茂みから得たいの知れない不気味な鳴き声がきこえる。何かの気配。私は何かあった時に、すぐに身を守れるように武器に代わる物がないか辺りを見回した。



「な、何もない……」



 近くに漬物石位の大きさの石があったので、それを持ちあげると別の石に向かって投げ落とした。石が割れる。私は這いつくばって砕けた石の中から、ナイフの代わりになりそうな形のものを探した。


 子供の頃に私はフォクス村付近で、虫や動物とよく一人で戯れて遊んでいた。


 私は九尾として不完全だった為、妹のように可愛がられてもいなかったので常に一人だった。妹は可愛がられ、たまに両親にお小遣いを貰っているのを見たけど、私は一度ももらったことがなかった。


 代わりに両親や同じ村の人達には、偽物とか出来損ないとか言われ続けた。


 だから何をするにしても自分一人で考えて行動し、欲しい物があれば、それがどうすれば手に入るかと、子供ながらに発想と工夫で手に入れる為に努力していた。


 フォクス村の近くには、川があり森もあった。森に入るには、ナイフが必要になったりする。それで、どうすれば自分のナイフが手に入るか色々考えて試行錯誤していた時に、たまたま村の近くで出会った旅人にこの石のナイフの作り方を教えてもらったのだ。


 それで私は、お手製のナイフとそのナイフを作る為の知識を手に入れた。



「あった! これなら、使える!」



 砕け散った石の破片から、丁度ナイフの形状に似た形の大きな破片を見つけた。


 更にその辺で、石のナイフを研ぐのに適した石をみつけて、それが欠けないように大事に研ぐ。刃がいい感じにできあがったら、草むらから植物の蔓を見つけて石のナイフの片側に巻き付けてグリップを作って完成。石のナイフのできあがり。


 それを早速使用して、近くに生えている木から枝を折り、枝の所々に生える小さな枝を落として棒を作った。


 生木に火を点けようとしてもなかなか点かないし、点いたとしても煙が大量に発生して大変な事になる。だから、この棒は薪として使用する為のものではなかった。


 私はその棒をぐるぐると左右へ振り回すと、横や縦に振って突いてみた。剣はあまり得意ではないけど、槍や棒などの長柄武器は得意とする所。いい戦棍が手に入ったと思った。


 レティシアさんには、武器を全て取り上げられちゃったけど、これでナイフと棒は手に入った。魔物が現れたとしても戦える。



「さてと……それじゃあ薪を集めないと駄目ですね」



 薪になる木は、先に思った通り生木じゃ駄目だ。枯れ落ちた木が一番適しているので、それと火種になるよく燃えそうな枯葉も必要。


 それらを探していると、いい枯れ木が落ちている場所を見つけた。森の中なのに、ちょっと拓けている。私は、そこでやったとばかりに枯れ木を拾い集めた。



「良かった。十分な量の薪が見つかった。これだけあれば、おそらく明日の朝までは焚火をもたせられそう」



 にっこり笑い、鼻をすすると集めた沢山の薪を草の蔓で縛る。その束を3つ作り、重ねた後に背負えるようにした。



「これで、よしっと……あいたっ!」



 背中に何かが飛んできた。かなり硬い物で、痛かった。見ると、私が集めているような薪……それが飛んできていた。


 私は棒を手にとり構えると周囲を見回して警戒する。すると、また何処からか薪が飛んでくる。



「ええいっ!」



 私目掛けて飛んでくる薪を棒で叩き落とす。すると、今度は四方八方から薪が飛んできた。慌てて叩き落とそうと棒を振り回したが、いくつかは当たってしまった。



「いたたたたたっ!! いっっったーーーい!! ちょ、ちょっと!! だ、誰ですか!!」



 飛んでくる薪の一つが頭に当たった。これは、本当に痛い。


 何者かが複数で私を取り囲んで薪を投げてきている。まずはそれが何者なのかという事を、見定めないと。


 一旦集めた薪はその場に置いて、そのまま全力で駆ける。再び四方から薪が飛んできたけど、その一方に狙いを定めると草場の中へ飛び込んだ。


 隣には大きな木。上を見る。薪は、この木の上から飛んできていた。つまり、私に薪を投げつけてきている何かは木の上にいるという事だ。


 ――暫く、じっとする。すると、木の上で何かが動いた。


 私は棒を手に持ちながらも、その大きな木をよじ登ってみた。建物の3階位の高さまで昇ると、それは目の前にいた。



「クッチャクッチャクッチャ……」



 猿だった。やや黄色がかった毛並みの猿。それが私の目の前で、くっちゃくっちゃと果実を食べながらこちらの方を睨むように見ていた。目には明らかに敵意の色が浮かび上がっている。


 それを見て、薪を投げてきていたのは、この猿なのかもしれないと思った。よく見ると果実を持つ手とは逆の手に、薪を持っている。



「ちょっと、なぜ私に向かって薪を投げてくるの? 私は、薪拾いに来ただけなんですけど」



 ビュンッ!!



「あ、危ない!」



 言った瞬間、猿は薪を投げてきた。咄嗟に避ける。


 どうしてこの猿達は、私にこんな事をするのだろうかと考えた。すると、レティシアさんの言葉を思い出す。そう言えばここは危険な森って言っていた。


 ……つまり、この猿は魔物……そう考えると、猿達が私をむやみやたらに襲って来る理由もなんとなく理解ができる。


 私はどうしようかと考えながらも、不安定な木の上で目の前の猿に対して棒を握り構える。


 キキキキー!!


 すると、猿が叫んだ。ガサガサッと周囲の木から葉の擦れる音がすると、私はあっという間に無数の猿達に囲まれてしまった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇猿 種別:?

めっさ悪い顔をしている。危険な奴ら。


〇フォクス村 種別:ロケーション

テトラの生まれ育った村。獣人達が住む村で九尾の末裔がいる。

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