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第370話 『頂きのガルーダ その1』




 モロロント山の山頂。その上空には、大きな鳥の魔物が待っていた。


 レティシアさんは、その鳥を指してあれがガルーダだと言った。


 ――ガルーダ。確か、鳥系の魔物で生息地は、こういう岩肌の目立つ山だったりするけど、荒野でも出現したとの目撃情報も多い。


 その性格は、獰猛で基本的には自分の縄張りに侵入する者にしか敵意を見せないが、一度敵と認識すると徹底的に攻撃を仕掛けてくるという。


 私が生まれ育ったフォクス村も、その付近にはこのモロロント山のような岩山がいくつもあり、山が連なっていたりする場所もあったので、ガルーダを見る事はあった。


 ガルーダを見かけたら、身を潜め隠れる。そしてやり過ごす。それがこの鳥の魔物の対処法だった。


 もしも、私達の生活しているエリアにテリトリーを作られたら、用心してもうそこには近づかないか、冒険者ギルドに依頼を出して討伐してもらう。それ程、ガルーダと言う魔物は凶暴で恐れられていた。


 私も遠目には見た事があるけれど、そのガルーダが今は私達の頭上を飛び回っている。


 私はコルネウス執政官のもとに駆け付けると、彼に向かって話しかけた。



「あなたが、コルネウス執政官ですが?」


「ああ、そうだが。君は誰だ?」


「私はクラインベルト王国の王宮メイドです。テトラ・テインテールと申します。このメルクト共和国が巨大犯罪組織『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』に乗っ取られたと、この国を拠点にしている冒険者のメイベル・ストーリから救助要請を受けて、他の冒険者達と共にあなたの助けに駆け付けました」


「そうかメイベルが。……テトラありがとう。だが、一つだけ言っておきたい。この国は、まだ『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』には乗っ取られていない。乗っ取られかけてはいるがな。だから、力を貸してくれ。私がこの国を立て直して奴らを追っ払ってやる」


「はい! お手伝いします! ですが、その前にこのモロロント山を下山しないと」



 コルネウス執政官は、顔を顰めた。



「しかしな。空にはガルーダがいて、私達を喰おうと今にも襲ってこようとしている。そして、なんとかこの危機を脱してモロロント山を下山できても、トリケット村には盗賊達が集まっている。奴らは手ごわいし、そこへ降りて行っても怪物の口に飛び込むようなものだ」


「そんな事はないでやすよ、コルネウス執政官」


「誰だっ!!」



 振り向く。すると、そこには、噂をすればなんとやら……メイベル、それにボーゲンとミリスがいた。私の後を追って来てくれたのだ。3人の顔を見ると、まだ危機を脱していないというのになんだか安心感に満たされた。


 状況を理解したレティシアさんは、目を細めてにっこりと笑う。ミリスがコルネウス執政官の前に進み出た。



「トリケット村はすでに、盗賊達の手から取り戻しました。今はビルグリーノさんが、取り返した村を守りながら、あなたがいらっしゃるのを待っています」


「そうか。皆、助けに来てくれたのだな。ありがとう。だが、まだ危機に直面している。あれから、どうにかして逃げないと」



 コルネウス執政官はそう言って、大空を舞うガルーダを見つめた。するとガルーダは空で、ピタリと止まりそこで羽ばたきながらこちらを睨んだ。


 ボーゲンが、私の方を見るついでに、レティシアさんの事もチラッと見た。



「どうやら、大丈夫だったようだな?」


「え? ええ、なんとか大丈夫でした。コルネウス執政官を攫った盗賊達の中にかなり強い人達がいて、結構危なかったんですが、こちらの冒険者の方が助けてくれました」


「へえ、良かったじゃなねえか」


「どうも初めまして、私は冒険者レティシア。あのガルーダの討伐依頼を冒険者ギルドで受注した者よ。だから、生息地であるこのモロロント山に登っていた所だったのだけど、その途中でテトラちゃんと知り合ったの」


「そうかい。それじゃ、レティシアさんよ。手柄は、あんたに譲ってやるから隠れてじっとしててくれるか?」



 目を細めて、微笑むレティシアさん。ボーゲンは、レティシアさんの強さを知らない。



「ボーゲン、レティシアさんはね。こう見えて……」


「テトラ!! そのレティシアさんってのとコルネウス執政官を守れ。来るぞ!!」



 ボーゲンがそう言うと、空でこちらを見ながら羽ばたいていたガルーダは、こちらへ向かって急降下した。襲い掛かってくる。



 ピイイイイィィィ!!



 ミリスが杖を掲げて補助魔法を唱えた。



「聖なる力よ。我らに俊敏なる力を与えよ!! 《敏捷性向上術(アジリティアップ)》!!」



 白く眩い光が、周囲を照らす。私を含め、全員の敏捷性がミリスの魔法で一時的に向上した。



「メイベル!!」


「あいよっ!!」



 ボーゲンとメイベルが、ガルーダに向かって駆けた。二人の身体は、ミリスの魔法で光を放ち、走るスピードも速くなっていた。


 急降下するガルーダ。そのガルーダに向かって、ボーゲンとメイベルが武器を抜いて向かい打った。



 ピイイイイィィ!!



 メイベルは、マンゴーシュを手に横へ飛ぶ。するとボーゲンは愛用の剣で、襲い掛かってくるガルーダへ向かって振り下ろした。



 ピギャアアアアアア!!



 縦一閃! ガルーダの胸に赤い線が浮き上がり、そこから出血した。ボーゲンの振り下ろした剣の痕。



「流石ボーゲンでやんすね! とどめはあっしが、かっこよく決めるでやんすよ!!」



 メイベルがマンゴーシュをガルーダに突き立てようとした。だが、ガルーダはメイベルが近づいた所で羽を大きく羽ばたかせ、再び空へ逃げる。



 ピイイイイィィ!!



 今ので、ガルーダを完全に怒らせた。ここから、何か大きな攻撃が来る。直感で、そう思った私はコルネウス執政官の前に立ち、彼を守る為に槍を構えた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


敏捷性向上術(アジリティアップ) 種別:支援系魔法

魔法の力によって、自分自身や対象の敏捷性を向上させる。複数にかける事はそれ程難しくないので、パーティーにこの魔法の使いえる者がいると重宝される。

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