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第357話 『トロッコで脱出せよ!! その3』




「これでも喰らいなさい! 《爆炎放射(フレイムバースト)》!!」


「うわああああ!!」



 ドワーフ兵の乗るトロッコに火炎魔法を放った。ドワーフ兵達は炎を浴びせられると、パニックになりその反動でトロッコは横転した。吹き飛ばされて転がっていくドワーフ兵達。


 魔法が苦手なドワーフ達には、ちょっとかわいそうだけど、この方法が手っ取り早い。狭い坑道を走っている時は危なくて使えない戦法だったけど、この広い坑道なら有効だ。


 それで、追って来ていた計6台のトロッコは全てやっつけた。


 それでも、私達のトロッコはそのまま走り続けている。



「アテナーー!! 大丈夫ですかーー!?」


「ルキア! 全部やっつけたから、今そっちへ移るね。ちょっと待って!!」



 ズズーーーン!!



 坑道。走っている少し前方の方で大きく土煙が舞った。地震!? 地中から何か大きな物が飛び出してきたのだ。ルキアがそれを見て、声をあげる。



「アテナ!! あれ見てください!! ディグモールですよ!! きっと、私達がグライエント坑道に向かう途中に戦ったディグモールですよ!!」



 一難去ってまた一難!! もう少しで坑道を脱出できると思ったんだけどな。最後に、大物が残っていた。


 ディグモールは私達を目で捕らえると、私達の乗るトロッコが進んでいる先の線路の上に、壁になるかのように移動した。待ち構えている。


 この状況、まさにこのまま直進してくにつれて、怪物の口の中へ飛び込むような心境。



「ルキア!! こっちへ!! 後ろを走っている、私の乗っているトロッコへ飛び移って!!」


「えええ!! そ、そんな!! こ、怖いですよ!」


「大丈夫、ルキアならできる!! 急いで!! このままじゃディグモールに衝突する!!」



 突き進む先にディグモール。私はルキアの方を向いて、両手を広げて見せた。



「さあ、早くこっちへ飛んで!! あなたならできる!!」


「は、はい!!」



 怯えていたルキアの顔は、覚悟を決めたものになっていた。背負っていたザックにカルビを入れると、走り続けるトロッコの上に立ち上がり、私の方へ思い切り跳んだ。



「ええええ⁉」



 獣人として覚醒しつつあるルキアの跳躍力は、想像を超えていた。っていうか、跳びすぎだ。思い切りジャンプしたルキアは、私の頭上を飛び越えて更に後ろへ落ちた。



「きゃあああ!! アテナーー!!」


「ルキア!!」



 トロッコから身を乗り出し、ルキアの腕を掴み思い切り引き込む。なんとか、ルキアを受け止める事ができた。


 すると、ルキアがいなくなった前方のトロッコは更に加速し、行く手を遮っているディグモールにぶつかった。ディグモールは、自分に衝突したトロッコを邪魔だとばかりに大きな爪の付いた腕で払う。破壊され粉々になるトロッコ。



「アテナ!! このまま直進したら、私達の乗っているこのトロッコもディグモールに壊されますよ!! 駄目!! もうぶつかる!!」



 ディグモールへ向かって行く私達の乗るトロッコ。大きく腕を振りかぶるディグモール。

 


「ルキア、伏せていて」


「な、なにをするんですか? アテナ!!」


「このまま突っ切る。ディグモールを斬ってね!」



 私は、帯刀している剣の柄に手を添えて、身を低くした。【居合(いあい)】。それで、一瞬にしてディグモールを斬り倒す。それしかない。


 その思った刹那、後方から矢が飛んできて目の前の線路脇にあるレバーを射当てた。レバーはガコンと音をたて倒れる。すると、私達の乗っているトロッコは、方向を変えた。待ち構えているディグモールを真正面にして急カーブ。上手にディグモールをかわして坑道の外へと向かった。



「ど、どうして?」



 振り向くと、私達の後方に1台のトロッコが追いかけてきた。そこには、見慣れた黄金の長い髪を靡かせながらも微笑むエルフの姿があった。



『ルシエルーー!!』



 ルキアと一緒に、叫ぶ。すると、ルシエルの乗っているトロッコはどんどんと私達の方へ近づいてきた。



「ふう、間一髪って所かな」


「無事だったんですね、ルシエル。私もアテナも心配していたんですよ!!」


「わりーわりー。トロッコに乗り込もうとした所でシャルロッテに捕まっちまってな」


「それで、シャルロッテやキョウシロウは⁉ ミューリ達には会った?」


「ミューリ達には会ってないが、多分大丈夫だろ? ダイナマイトを仕掛けた後にギブンの後を追いかけているはずだし。シャルロッテとキョウシロウもあの後、周辺の天井が崩れてきたから戦いどころじゃなくなってな。一旦休戦しようぜって言ったら、頷いて何処かへ走り去っていったよ。だから、きっと無事脱出していると思うぞ」



 それを聞いて内心ほっとした。


 ミューリ達はきっと上手くはやるとは思っていた。だけど、シャルロッテやキョウシロウの事は心配だった。でも、ちゃんと逃げたなら良かった。今は立場上、対立関係にあるけれど、友達である事には違いないのだから。


 ルシエルがこちらのトロッコに飛び移ってくると、後方に指をさして言った。



「おいおいおい、マジかよ。あいつ追ってくるぞ」



 後方へ振り返ると、なんと私達の走るトロッコのあとを、物凄い勢いでディグモールが追いかけてきていた。



「まだ、追ってくる。なんてしつこいの」


「こうなったら、オレ達で仕留めてやるしかないな」


「ええ? どうやって?」


「こんな坑道で立ち塞がられて襲ってこられると面倒だったけどよ、追ってくる奴を相手するなら、オレ達の方が圧倒的有利なんじゃないか?」


「ああ、なるほどね。確かにそうね」



 私とルシエルは、トロッコの上に立つと同時に攻撃魔法を詠唱し始めた。


 そして、ディグモール目掛けて火球と風の刃を放った。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


居合(いあい) 種別:剣術

アテナやヘリオス、キョウシロウの使用する技。剣を鞘に納めた所から瞬時に抜刀し、相手を一刀のもとに高速で両断する剣術。凄まじい抜刀術だが、発動するのにタメをつくらなければならない。

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