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第356話 『トロッコで脱出せよ!! その2』




 ――――トロッコは、坑道を延々と走り続ける。


 私達のすぐ後方に迫ってくるトロッコから、二人目のドワーフ兵がこちらのトロッコに飛び移ろうとしていた。他に1名。更に後続に敵のトロッコが2台続く。



「いけーー!! 飛び移れーー!! お前がしとめろーー!!」



 飛び移ろうとしているドワーフ兵。その後ろにいるもう一人のドワーフの方が偉そうだった。その偉そうなドワーフに、叱咤激励されてまた一人飛び移ってくる。今度の武器は棍棒。


 ブンブンと振って来るけど、攻撃自体は最初のと同じく力任せで単調なもの。私は、剣で棍棒を弾き上げると相手の股間に右足を滑り込ませる。それで、ドワーフ兵の体勢が崩れる。同時に片側の肩から身体を預けるように密着させると相手の身体を弾いた。



「う、うわあああああ!!」



 ドワーフ兵はバランスを崩し、手に持っていた棍棒を放り上げると共にトロッコから落下していった。



「す、すごいです! こんな所でも圧勝するなんてアテナって本当に凄いです!!」


「え、そう? 相手の身体の崩し方は前にルキアにも教えたでしょ? 練習すればルキアもこの位できるようになるよ」



 ルキアにそう答えて足元を見る。するとトロッコの底でカルビを抱きながら、潤んだ瞳で私を見つめるルキアの姿があった。


 以前、ルキアに教えた技だけれど、相手の重心を崩す方法。いくら、タフで力が強くてもバランスを崩されれば、派手に倒れる。



「ルキアは、もう少しそこで我慢していてね。この調子で全部、私がやっつけるから」


「は、はい!」



 ルキアにそう言って、安心させる。後方のトロッコから大声が聞こえた。あの偉そうなドワーフ兵。



「ウワーーーッハッハッハ!! 少しはやるようだな!! 女と思って舐めてたら、えらいことになるわ!!」


「じゃあ、もう放っておいてくれる?」


「それはできん!! ガラード殿下の妨げとなるお前らをそのまま放置はできん!! グライエント坑道も破壊してくれたしな!! せめてお前らを捕えなきゃ、俺達の首が飛ぶわ!!」


「それなら大丈夫だとおもうけれど」


「ああ? なぜそんな事が言える!!」


「え? だって、悪者はこの際全部やっつけるつもりなんだもん。ガラード殿下は、戦争を起こすつもりなんでしょ? ガラハッド王はそれを嘆いている。だから、目を覚ましてもらう為に少しお灸をすえなきゃだからね!」


「お灸だとおお!? ガラード殿下に対して無礼千万!! やはり、お前こそ多少痛い思いをして反省した方が良さそうだな!!」


「いいよ、じゃあかかってくる?」


「女の身で、男に戦いで勝るとでも思っておるのか!! しかも、その相手は屈強なドワーフだぞ!! 身の程を知れい!!」


「え? もう屈強なドワーフなら二人倒したけど」 


「ぐぬぬぬうう!! 口の減らない奴!! ならば、その身体を持って解らせてやるしかあるまい!! ドワーフ王国の次期戦士長と噂されるこのパドンと刃を交わせる事を、ありがたく思え!!」



 そう言うとパドンは、手に持っていた大きな戦斧を勢いよく振り回し始めた。こっちへ飛んでくる!!



「ウハハハハ!! いくらお前がすばしっこく、器用な技が使えても、限られた足場で尚且つバランスも保ったまま俺の攻撃はかわせまい!! いくぞおおお!!」



 パドンが乗り込んでくる。私は、足元のルキアに目を向ける。



「ルキアはもう私がびっくりする位に強くなった。だから、勇気を出して」


「え? それって、どういう……」


「ルキア、絶対無事に脱出しよう! だから、こっちのトロッコは任せたわよ」


「えええ!? そ、そんあああ!!」



 驚きの声をあげたルキアは、ようやくトロッコから顔を出して周囲をキョロキョロとみて状況を確認した。



「いくよ!! パドン!!」



 跳躍。それに合わせてパドンが戦斧を振ってきたが、宙で一回転してかわし、パドンの乗るトロッコへと着地。パドンの後ろを取った。



「やるではないかあああ!! しかし、まさかこっちのトロッコに乗り込んでくるとはな!! ガラード殿下には、勢い余って申し訳ござらん事をしてしまいましたと謝らねばな!! 女、これで終わりだ!!」



 ブウウン!!



 パドンは私の方を振り返ると、顔を狙ってパンチを繰り出してきた。それを避ける。するとパドンは、続けて戦斧を両手で握り高く掲げた。



「これで勝負はついた!! 必殺!! 唐竹割り(からたけわり)だああああ!!」



 戦斧が勢い良く、縦に振り下ろされる。だけど、私は左右どちらかには逃げず、戦斧が振り下ろされる真下にしゃがみこんだ。


 次の瞬間、振り下ろされるはずだったパドンの大きな戦斧は線路上の何かに引っかかり、パドンごとトロッコから消え去った。


 ここは、坑道。落盤防止の為にそこいら中に坑木が使用されている。つまりパドンは戦斧を振り上げた時に、坑道内の梁にタイミングよく当ててしまって身体ごと持って行かれてしまったのである。



「うわあああ!! なんだとおおお!!」


「フフフ、バイバーイ」



 これで、こちらは私が奪ったトロッコとルキアが乗っているトロッコの計2台。後方に残っているドワーフ兵が乗るトロッコも2台となった。

 

 私は前方を走るトロッコに向けて叫んだ。



「とりあえず、ルキアとカルビはそのままそっちにいて!!」


「わかりました!! ちょっと怖いですけど、カルビがいるし頑張ります!!」


「うん、頑張ってね!」



 後方からまたドワーフ兵の乗るトロッコが近づいてくる。まあ、ルキアとカルビが乗っているトロッコに飛び移ろうとしても、私の乗るトロッコを間に挟んでいるからね。まずは、私が敵を喰いとめる事ができる。



「アテナーー!!」



 唐突のルキアの声。振り返った刹那、私達の乗っているトロッコは狭い坑道を走り抜けて広い場所に走り出た。


 そこには、いくつものトロッコ用の線路が張り巡らされ並んでいる。


 別の方からも、トロッコ音が聞こえたので音の下隣の線路側を見ると、私達のトロッコに並ぶようにドワーフ兵の乗る別のトロッコが4台新たに追ってきた。


 これは、結構な状態。


 だけど、もう外が近い気がする。だからこのまま走り去るのみ。


 気がつけば私とルキアの乗るトロッコ2台は、ドワーフ兵の乗る計6台のトロッコに追いかけられていた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇パドン 種別:ドワーフ

ドワーフ王国の兵士。王国の次期戦士長と噂されている……らしい。確かに頑丈さとその持ち前の腕力は他のドワーフ兵に比べて圧倒的なものをもっているが、それでも戦士長ギリムには遠く及ばない。好きなものは、肉が多めの鍋料理。ドワーフの城のラウンジで、プリンアラモードを美味しそうに食べている姿も同僚に目撃されている。


唐竹割り(からたけわり) 種別:剣術・戦斧術

高く掲げた所から、真っすぐに真下へ切り落とす技。技以外に背筋力も重要。

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