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第355話 『トロッコで脱出せよ!! その1 (▼アテナpart)』




 脱出を考えて、咄嗟にトロッコに乗ってしまった。


 そして今、私達の乗るトロッコは、グライエント坑道の採掘場ど真ん中にルシエルを残して猛加速で外へ向かっている。車輪の音。



 ゴゴゴゴゴゴゴ……



「アテナ……ルシエル達は大丈夫でしょうか?」


「……うん、きっと大丈夫だよ。ルキアも、大丈夫?」


「それならいいんですけど……で、でもこの状況……こ、怖いです、アテナ!! これどうやって止まるんですかあ!!」



 トロッコの底でカルビを抱きしめて蹲るルキア。私は、トロッコの脇についているレバーを指して見せた。



「これを引けば止まるわ」


「じゃ、じゃあ引いて一旦トロッコを止めましょう! きっとルシエルが直ぐに追い掛けてくるはずですよ」



 あの場所は、ミューリ達が仕掛けたダイナマイトでもう落盤して埋まってしまう。


 ルシエルだけじゃなく、シャルロッテやキョウシロウもまだそこにいるけど、あそこがもう危険だという事は皆知っているはず。



「ルシエルは、絶対大丈夫だから。他の皆もね。だから、私達は今はトロッコを止めずにこのまま進もう」



 シャルロッテ達がいたあの採掘場からどんどん離れている。だけど、今いる辺りまで震動が伝わってきている。グライエント坑道を破壊するためのダイナマイトの威力が、予想よりも大きいと感じだ。


 つまり、もっと離れないと安全とは言えない。



「でも、ルシエルにもしもの事があったら……シャルロッテさんや、キョウシロウさん、ミューリやファムにギブンさん達も……私、やっぱり心配ですよ」


「大丈夫だってば。ルシエルのしぶとさは知っているでしょ。シャルロッテ達もそうよ。こんな所で鉱石を採掘作業しているんだから、常に落盤とかの事故には万全の備えをしているに決まっている。ギブンは、作業員達を扇動してすぐにあの場を離れていっているし、ミューリ達もそれについていっているはず。ノクタームエルドの事は彼女達の方が詳しいよ。皆を信じよう」


「……うーん。は、はい。そうですよね……」



 それでも、心配そうな顔をするルキア。ルシエルはもう私達の大切な仲間であり、まるで姉妹のようにも思える存在。


 私だって、助けには行きたい……だけど……



「ルキア! 気を付けて、何かが私達の後を追って来るわ!」


「え?」



 ゴゴゴゴゴゴゴ……



 洞窟内の天井や壁に僅かに散らばっているライティングストーンと、線路脇にたまに設置されているカンテラ。それで薄暗くとも仄かに見える洞窟内部。


 線路上を猛進する私達のトロッコを追いかける様に、後方から猛烈なスピードで何かが確かに迫ってきていた。


 もしかしたら、ルシエルかもしれない!! ルキアはそう思ったのだろう。抱きしめているカルビと共に、トロッコからひょこっと顔を出してみる。



「ト、トロッコ? トロッコが追いかけてきてますよ!! もしかして、ルシエルが追い掛けてきたんじゃないですか!!」


「うーーん。残念だけど、違うみたい。気を付けてルキア」



 3台のトロッコが追いかけてきていた。それぞれ中には、ドワーフ兵が武器を握りしめて乗り込んでいる。


 シャルロッテかドルフスか、それともちょび髭ポールか……どちらにしても、しつこい!


 追って来る3台のトロッコはどんどん加速して、私達の乗るトロッコへ接近してきた。もう真後ろまできている。


 するとドワーフ兵は、トロッコの上に立ち上がり、膝を竦めて武器を構えた。これは、まずいかも。


 私も、後方にいるドワーフと同じように向き合う形でトロッコの上に立ち、剣を抜いた。



「ななな、何をしているんですかアテナ!! そんな所に立っちゃ危ないですよ!!」


「私達を追って来ているドワーフ兵、こっちへ飛び移ってくるつもりよ。応戦しないと。ルキアはカルビをしっかりと抱いて姿勢を低くしてて!!」


「で、でもいくらアテナでも危ないですよ!」


「大丈夫だから。それよりも、喰いとめて逃げ切らないとね」


「待て女ども!! 逃がさんぞ!! はああっ!!」



 そう言って、すぐ後方まで迫ってきていたトロッコからドワーフ兵が飛び移ってきた。メイスを振ってきたけど、ここじゃ避けることも至難なので剣で受け止める。


 すると、私とドワーフ兵の真下で蹲っているルキアが悲鳴を上げた。



 ギイインッ!!


 

 剣とメイスが交差する。その後ろから、別のドワーフ兵が続けてこちらに飛び乗ろうとタイミングをうかがっている。



「ふん! ふん! ふん! いくら剣の使い手でも、こんだけ密着した戦いならどうにもならんだろ!! 腕力なら、俺のが分がある!!」



 何度も力任せにメイスを振って、打ち込んでくる。足場は、今も洞窟内を走り続けるトロッコの上。避ける事もできず、ドワーフ兵の腕力に頼った強烈な攻撃を剣で受け続ける。だけど、気づかれないように僅かに受け流すように芯を外して攻撃を受けていた。


 このドワーフ兵は、腕力勝負なら自分の方が何倍も上だと思っているはず。だけど実際には、攻撃をいなしているので、本来の一撃の1割程の衝撃しか受け止めていなかった。



「ぐぬうううう!! なんだこいつ!! こんなほそっこい身体の何処に俺の攻撃を何度も受け止められる膂力があるんだ!!」


「早くやれ!! そんな棒みてーに細い女一人相手に何を手間取ってるんだ!!」



 ぼ、棒って……言い方!!



「うるせーー!! なんだかわかんねーけどよ、いくら打ち込んでも、いつものような手ごたえがねえんだよおおお!!」



 そりゃそうだ。全てをいなしている。例えるなら、暖簾に腕押し。



「うがああ!! こうなったら!!」


「やめろ!! 捕まえろと言われている!!」


「うるせーー!! こんだけ強いんだ!! 蹴落としたって大丈夫さ!! うらあああ!!」



 加速し走り続けるトロッコから私を蹴飛ばそうとして、ドワーフ兵の蹴りがお腹目掛けて飛んできた。



「危ない!!」



 ルキアの悲鳴。だけど、私はそのドワーフ兵の蹴りこんできた足を掬い上げるように掴むと、捻った。ドワーフ兵は、大きな悲鳴をあげて私達の乗るトロッコから落下していった。


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