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第353話 『土風 (▼ルシエルpart)』




 キョウシロウの剣は、とんでもなく早かった。それでも、その攻撃に加えてシャルロッテの鞭を同時に避けているオレは更に凄いと思った。自画自賛と言われても、それをやってのけるオレ。フヘヘ……


 ウハハハ! 二人がかりで、やっとこのオレの相手ができるってところだろう。アテナがキョウシロウの剣の腕を高くかっていたようだが、オレにしてみれば大したことはない。シャルロッテと二人で丁度いい練習になるな。


 そう思いつつもキョウシロウの連撃をかわした時だった。振ってばかりだった攻撃にいきなり突きが加わった。おっと危ない!! 咄嗟だったが、持ち前の動体視力で回避し、そのままバク転して距離をとる。


 どうだ!! キョウシロウ、それにシャルロッテ!! オレがこんなに強い冒険者だとは思わなかったろう? ん?


 今やオレもBランク冒険者だ。Bランクと言えば上位ランクと言われる冒険者。そして、かの気高き偉大なガンロック王国のカッサスで開催されたクルックピーレースのチャンピオンでもあるオレだ。


 力の差があって当然。


 余裕の笑みを浮かべて見せる。二人を挑発したその時だった。シャルロッテの鞭がオレの足に巻き付いた。


 そのまま勢いよく引っ張られ、オレは近くにあった岩にぶつけられた。うがっ!! が、顔面が痛い!



「オーーーーッホッホッホッホ!! ルシエル、ちょっとわたくし達をあまく見すぎているのではなくて。地底湖では、わたくしと一緒にサヒュアッグの巣に行っていないあなたが知らないのも無理はないのかもしれないけれど、わたくしの実力はこんなものじゃなくてよ! 油断していると、こうやって足元をすくわれますわよ!」



 シャルロッテはそう言って、容赦なくまた鞭を引っ張った。足に巻き付いた鞭を外そうとしていた矢先、また別の岩に打ち付けられる。うげっー!! い、痛い!


 おのれー、この金髪縦巻きロールめ!!少しは手加減しやがれってんだよ!



「シャ、シャルロッテ! お前、ちょっと手加減しやがれ! これ結構痛いぞ! それにその辺の岩にぶつけてくれてるけど、岩だから表面がゴツゴツしてたり尖っていたりで痛いんだぞ! もしも突き出た岩に刺さりでもしたらどうすんだ! 責任取ってくれるのか!」


「先程まで、やけにニヤついて余裕そうな表情をしていたから、少し本気を出しただけですわ。それとも、大人しく降参しますの? それならば友人として、あなたやアテナ達のここで起こした罪は、できる限りこのわたくしがもみ消してあげてもいいですわ」


「そりゃ、ありがとよ! でも降参はしないから、その申し出はいいや! ≪風の刃(ウインドカッター)≫!!」



 風の精霊魔法。真空の刃で足に巻き付いた鞭を絶ち斬ろうとした。しかし、それを察知したシャルロッテは、鞭をしならせオレの足に巻き付けた鞭を解いた。


 あの鬱陶しい鞭を破壊する事はできなかったが、結果拘束からは脱出する事ができた。


 今度はシャルロッテと立ち代わり、キョウシロウが突っ込んでくる。刀。


 ガキン!


 火花。アテナがオレの為にデルガルドという、めっさでかいドワーフに頼んで作ってくれた太刀。『土風(つちかぜ)』。それを抜いてキョウシロウの連撃を弾く。



「な、なんて使いやすい太刀だ……オレの専門は、弓か短剣なんけどな。昔から使っていたかのような愛用の剣のように手に馴染むし、軽くて使いやすい」


「だったらなんだ? いくら凄い剣を扱おうとも【アーチャー】では、【侍】相手に剣勝負にはならんぞ」



 キョウシロウが剣――いや、あれは当方の国の者達が愛用する【刀】という種類の武器。それを一度鞘にしまい、オレの方へ素早く踏み込んできた。


 なんだ? 体当たりか?


 そう思った刹那、キョウシロウの手が刀の柄に軽く触れているのが解った。


 知ってるぞ!! あ、あれを見たことがある!!



「すまんな、ルシエル! アテナ同様にお前とも戦いたくはないが、今は俺にも立場があり仕方がない。だから、お前を倒させてもらう。だが、手加減してお前に勝てはしないだろうな。……俺は、侍だ。斬るつもりで抜かせてもらう」


「ま、まさかその技は!!」



 ギィイイン!



 ――――閃光が横一線に迸るような一撃。金属音。気が付いた時にはもう、キョウシロウは刀を抜いて振っていた。なんとか、かわせたと思ったがオレは、キョウシロウの渾身の一撃で斬られていた。


 太刀『土風(つちかぜ)』がなければ完全に斬られていた。



「な、なにいい! この技を防いだのか? ルシエル」


「あ、あたぼーよ! だだだ、だから言ったろ? オレはめちゃくちゃ強いんだって!」



 あっぶねーー!! めちゃくちゃ危なかった! 避ける事だけに集中せず『土風(つちかぜ)』を咄嗟に盾代わりに前に出したのが吉だった。


 あのキョウシロウが放った技。あれは、アテナの【居合(いあい)】という技だ。一度、鞘に剣を収めた所から独自のタメと瞬発力、タイミングで相手を瞬時に両断する技。


 回避に徹していても、オレの持つ武器が並の剣だったとしても、ただでは済まなかっただろう。だが、運よくあの技は何度もアテナから見せてもらっていたし、剣だってキョウシロウの一撃を防ぐのに十分な剣をアテナにもらってた。


 ……あれ、オレ、アテナに助けらればかりじゃないか?


 そう思ってなんとなくチラっとアテナの方を見ると、アテナはルキアの方へ助けに走っていた。ルキアの方はルキアの方で、カルビと一緒にドワーフ兵やあのドルフス・ラングレンとかいう公国の奴と戦っている。


 これはまずいな! オレもさっさとルキアを助けてやんねーとな。いくら獣人の力に覚醒し始めて強くなり始めていると言っても、あいつはまだ子供だ。オレが行ってサポートしてやんねーと。



「さあ、そこをどけ!! 二人がかりでもオレには通用しない。それが十分に解っただろ?」



 大技を破られたキョウシロウは、明らかに動揺している。しかし、シャルロッテが再び鞭で地を叩き、キョウシロウの横に並んだ。


 参った、どうしてもこの二人を倒さねばならんかー。オレは太刀を再び、二人に向けて構えた。


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