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第347話 『グライエント坑道及び、採掘場 その1』




 ――――グライエント坑道。



 私達はそこへ、巨大土竜の魔物――ディグモールが掘って作った横穴を使って想定していたよりもかなり早く辿り着くことができた。


 横穴を移動途中、狭く歪な穴の中でディグモールに襲われ戦闘になってしまったけど、なんとか押し合いにも戦闘にも勝利する事ができた。


 体当たりで遥か後方まで飛ばされていったルシエルが怒りの形相で、ファムと一緒に力を合わせて風魔法でディグモールを横穴の外まで吹き飛ばしたのだ。


 ディグモールの作った横穴の外は、丁度大きな崖になっており、穴の外まで吹き飛ばされたディグモールはそこへ落ちて行った。


 それを見て、私達はなんだかディグモールが可哀そうに思えた。でももしかしたら、あれだけの爪と腕力があるんだから、落下途中に何処かにその爪をひっかけて生き延びているかもしれない。


 もしそういう事になっていて、また遭遇するような事があれば戦う事になるだろうし……なんだか複雑な気分だなと思った。


 ミューリが私の肩を叩く。



「ほら、アテナ。あそこ見て見て。沢山人がいるよ」


「本当だ。けっこういるわね」



 見ると、沢山のドワーフがツルハシやハンマーを振るい、三輪車を押して鉱石の採掘作業をしていた。皆、ガラード王子の配下なのだろうか?



「本当ね。でも、どういう作戦でこのグライエント坑道を破壊するの? ダイナマイトを設置して爆発させて坑道や採掘場を破壊するにしても、それだと作業をしているドワーフ達も生き埋めになっちゃうかもしれない」


「うーーん。それについては、もうここは爆発するって呼びかけて逃がすしかない。このもっと奥に、既に採掘の終えた場所がある。そこをまず最初に爆破すればいいかなって。もうそこは鉱石も取り終えているし、人もいないから爆破しても大丈夫だし、その爆発に気づけば作業をしている皆は、坑道から逃げ出すんじゃないかな? どうかな、僕の作戦」



 なるほど。確かにそれなら、いいかも。だけど、何かが足りないような気もする。


 ルシエルが言った。



「坑道全域を吹き飛ばすんだろ? ダイナマイトで爆破するっていうのは、聞いたけどどうやってやるんだ。まさか、この広い坑道を端からダイナマイトを一つずつ設置して、起爆していくのか?」



 ミューリは笑いながらも頷く。



「そう。それはそうだけど、僕にかかればもっと簡単に済むと思うよ。ダイナマイトは僕とファムで、より坑道を破壊するのに効果的な場所に設置して回るつもりだからね」


「でも、それじゃ設置は兎も角、起爆する時に大変じゃないか? 設置し終えたらいちいちそこまで行って、導火線引っ張ってみたいな作業になるんだろ? 坑道には作業員の他に見張りの兵士もいるから、そいつらからも避けなきゃならんだろうし」


「あはは。それがね、僕らにはできるんだよね。ファムの探知魔法『風の探知魔法(ウインドサーチ)』と僕の火属性魔法があれば可能なんだ。ファムの探知魔法は、ご存じ坑道を巡回している兵士のいる位置も手に取る様に解るし、僕の魔法『遠隔火花操作魔法(スパークチェイス)』を使用すれば、設置し終えたダイナマイトを遠隔から起爆もできるからね」



 魔法で起爆!? 予想外のミューリの作戦に、ルキアがぱちぱちと瞬きする。



遠隔火花操作魔法(スパークチェイス)っていうその魔法で、遠隔から起爆できるんですか? す、凄いですね。どういう仕組みになっているんですか?」


「あはは。遠隔火花操作魔法(スパークチェイス)って言う魔法は、火球魔法(ファイアボール)のように、火球を生成し発射する魔法なんだ。だけど、火球魔法(ファイアボール)程も大きくもないし、威力も小さいんだよ。でも、その魔法は特殊なんだ。火球から常に火花が出ているし、自在にその火球を操る事もできるから、発火能力に特化しているんだよ。しかも、同時に複数作り操ることもできる。魔力でダイナマイトに印をつけておけば、遠隔火花操作魔法(スパークチェイス)を放ったと同時に、火花を放つ火球はそのダイナマイトへ障害物を避け自動で向かっていって発火し、起爆させる事ができると言う訳なんだ」


「へえー! そんな事ができるなんて……それって、物凄い魔法ですね」


「なんせ、文字どおり魔法だからね。そういう事だってできるんだよ」



 ルキアのその言葉にミューリが得意げな顔をして見せた。


 『遠隔火花操作魔法(スパークチェイス)』という魔法は、私は使用できないけど確か昔、爺に見せてもらった事があるのを思い出した。爪位の大きさの小さな火球で、火花がバチバチと散っていた記憶がある。


 威力で言えば一般的な黒魔法の火球魔法(ファイアボール)には遥かに劣るけど、魔法事態の習得の難しさや、今私達がやろうとしているような遠隔からの起爆や発火に優れている為、上級魔法の扱いだった。


 爺がその魔法を私に見せてくれて教えてくれたけど、結局私はその魔法を習得する事はできなかったのだ。


 私は本来魔法が得意な方ではないのだけれど……とても習得するのに難しい、火属性魔法。それをミューリは使用できるのだという。



「ダイナマイトの設置と起爆。坑道を破壊する方法は解ってけど、でもそれだけじゃまだ足りない気がする」



 ファムが真剣な眼差しで聞いた。



「足りないと言うのは?」


「まずもう採掘がし終わって無人の採掘場を爆破し、それを警告にして作業員を退避させてから、順に坑道を爆破していくというのは、解ったんだけど……それでももう一押ししておきたいの。できるなら、やっておくべきでしょ」



 それを聞いて、ミューリやファム。それにギブンも考え込んだ。


 皆が眉間に皺を寄せている中、意外な事にルシエルが何か良い手を思いついたようで、ポンと手を叩いた。



「ダイナマイト設置をミューリとファムがするだろ。じゃあギブンは先に作業員のドワーフ達に紛れておいて、最初の警告の爆破をしたら、逃げろおお!! 落盤するぞおお!! って騒いで作業員を外へ誘導して逃がせばいいんじゃないか。その方がより効果的に作業員を逃がせれるだろ。そしてオレやアテナ、ルキアはミューリ達が仕事をしやすいように、兵士たちの気を引きつければいいんじゃないか? ここって価値のある鉱石や宝石なんかも採れるんだろ? じゃあ、不審な奴なんて見たらきっと一斉に追って来るんじゃないか?」



 うーん、確かに。ルシエルの作戦は、意外と妙案だと思った。


 よし! この作戦で行ってみよう。私達は、全員で手を合わせて気合を入れると作戦を開始した。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


風の探知魔法(ウインドサーチ) 種別:黒魔法

風属性の中位黒魔法。掌に風でできた球を発動する。それを見る事によって、近くにあるお宝や敵の場所の索敵、ダンジョン内でのマッピング等々できる、冒険者なら是非使えるようになりたい魔法。


火球魔法(ファイアボール) 種別:黒魔法

火属性の中位黒魔法。殺傷力も高く強力な破壊力のある攻撃魔法だが、中級魔法の中では、まず覚える一般的な魔法。


遠隔火花操作魔法(スパークチェイス) 種別:黒魔法

上位の、火属性魔法。遠隔操作できる火花を放つ火の玉を作り出せる魔法。破壊力や殺傷能力はないが、着火や爆弾などの起爆にも使える。慣れれば同時にいくつも発射し扱えるが、結構習得に難しい魔法で上位扱いされている。

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