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第346話 『押される前に、押し返せ!!』




 ギブンの身体が大きく後方へ飛んだ。――ノックバックだ。


 私はギブンより前に出ると、魔法を詠唱しディグモールの突進と攻撃を引き受けた。



「光よ!! 私達を守って!! ≪全方位型魔法防壁(マジックシールド)≫!!」



 ギャウウウウウウ!!



 太い腕。全方位型魔法防壁(マジックシールド)の上から、鋭い爪が降り注ぐ。なんとか、その攻撃を堪えていると、ディグモールは再び突進を仕掛けてきた。



「きゃああ!! ちょ、ちょっと待って!!」



 ズン!! ズズズズズズ……



 地中を掘り進むというだけあって、物凄い馬力だった。ディグモールの突進は、圧倒的な防御力を誇る全方位型魔法防壁(マジックシールド)の光の膜に直撃した。その内側にいる私ごと、ノックバックする。



「う、うわ!! な、なんとも……す、凄まじいパワーね」



 そのまま更に押される。ギブンは、すぐさま私の隣に並んでミスリル製の大盾を突き出すと、私の発動させている全方位型魔法防壁(マジックシールド)と共に、押し返そうとした。

 

 ギャアアアウウ!!


 私とギブン二人がかりでも、徐々に押し返される。このままじゃ、この横穴に入った空洞まで押し戻される。あの穴から大量に逃げ出してきたジャイアントアント達のように。



「こ、これは凄い力じゃ。流石の儂もたまらんわい!! どうする、アテナ。一度空洞まで下がって、広い場所で叩くかの?」



 進んできた横穴を、ディグモールの攻撃に晒されながらも押し戻されるとなると、かなり危険かもしれない。


 私一人なら、それをやってのける自信はあるけれど、今はパーティー行動だし……事故が起きる可能性も低くはない。



「こうなったら! アテナちゃん、ギブン! そこどいて!! ボクがやっつけるよ。炎よ――」


「やめて、ミューリ!! この横穴での火属性魔法は危険だわ!!」


「うっ、駄目……?」



 何かしらの強力な火属性魔法を放とうとしたミューリは、慌てて発動しかけた火の魔法をかき消した。その横を今度はファムが駆け抜けていく。



「それなら、これでどうかな? アテナ、ギブン! 後ろへさがって!!」



 なるほど、ファムの風魔法ならまさに今の状況に打ってつけ。私とギブンはファムと入れ替わる様に後方へ退く。


 その隙をついて、突進するディグモールに向かってファムは両手を突き出し魔法詠唱した。



「風よ!! 我らに迫るこの猛獣を吹き飛ばせ!! 風破(エアショット)!!」



 強烈な衝撃波のような風が、迫ってくるディグモールを押し返した。



 ギャオオオオオ!!



「このまま穴の外まで、吹き飛べええええ!!」



 ファムの風魔法は、想像よりも強力だった。


 なんとか、飛ばされまいと食い下がっていたディグモール。その巨体をついに穴の向こうへ吹き飛ばした。


 ルキアが声を張り上げる。



「やりましたね、ファム! この隙に、横穴を走って駆け抜ければ一気に外まで出られるかもしれませんよ。そしたらもう、グライエント坑道ですね!」


「でもこの位じゃディグモールはきっと戻ってくる。吹き飛ばしただけだからね。だから急いだ方がいいよ」



 ファムがそう言った刹那、ディグモールを吹き飛ばした穴の先から雄叫びが聞こえた。



 ギャオオオオオオオオオ!!



 びっくりして、身を竦めるルキア。再びファムが前に出て、風破(エアショット)の魔法詠唱をし始めた。



「来るよ!!」



 ドドドドドド!!



 地鳴りのような音と共に、横穴の先の方から凄い勢いでディグモールが再び迫ってきた。怒りで目は血走り、体毛も若干逆立っている。


 私は再び全方位型魔法防壁(マジックシールド)を詠唱する準備をすると、ファムに視線を送った。



「ファム!」


「任せて! また押し出す。そしたら、今度は吹き飛ばしたら直ぐに前に進もう」


「うん! お願い!」



 ディグモールが迫る。一番前衛にいるファム目掛けてその大きな腕を振り上げた。そこで、ファムの風魔法が放たれた。



「吹き飛べ!! ≪風破(エアショット)≫!!」



 衝撃波のような風が、ディグモールに直撃する。しかし、今度は違った。ディグモールはその場に伏せる体勢をとると、ファムの放つ風を真正面から浴びながらも、こちらに向かって前進してくる。



「うおおおおお!! いい加減に、吹き飛べえええ!! ≪風破(エアショット)≫!!」



 ギャオオオオオ!!



「どういうことでしょうか? ファムの風魔法を喰らってここまで耐える事ができるなんて……さっきは耐えられなかったのに……これって、どういう事なんでしょう?」


「ルキア、よく見て。ディグモールが伏せているでしょ? あれなら、向かって来る風の抵抗を減らせる。ファムの放っている風破(エアショット)の威力は、完全に半減されているわ」


「す、すごいですね。しかもあの大きな爪を地面に喰い込ませて、より飛ばされないようにしてますね」


「とりあえず、このままじゃどんどん迫ってくるわ。ファムで駄目なら、また入れ替わって私とギブンで押し返すから、ルキアはミューリと一緒に後衛にいて」


「は、はい! 気を付けてください」



 ルキアにそう言った直後、ファムの全力の風破(エアショット)はディグモールに破られ、目の前にまで接近されていた。大きな攻撃がくる。


 ファムは、所持していた槍を両手に持つとディグモールの攻撃を受け止める為に構えた。



「ファム!! それじゃ、受け切れないかもしれない!! 下がって!! 私とギブンが受け止めるから!」



 そう言ってファムと入れ替わろうとした刹那、後方から突風が駆け抜ける。


 それは、黄金の輝きを帯びた突風だった。


 ――ルシエル。ディグモールに体当たりされて遥か後方まで吹き飛ばされたルシエルがこの場まで戻ってきたのだった。



「ルシエル!!」


「この土竜めええ!! このオレに恥かかせやがってえええ!! 遥か向こうまで飛ばされちまったぜ! 今度はこっちの番だ!! 吹き飛ばしてやる!! ≪突風魔法(ウインドショット)≫!!」



 ファム目掛けて腕を振ろうとしていたディグモールに、ルシエルの風魔法が直撃。ディグモールは、また遥か後方へ吹き飛ばされた。



「よっしゃ行くぞ、ファム!! 駄目押しだあああ!!」


「解った。ファムに任せて、ルシエル」

 


 吹き飛ばされていったディグモールの後を疾風の如く追い掛けるルシエルとファム。そして二人は、横穴の向こうまで届かせるつもりで、同時に風魔法を最大出力で発射した。


 風魔法のスペシャリスト二人の同時攻撃を真面に浴びたディグモールは、間違いなく横穴の外まで吹っ飛んで行っただろうと全員が思った。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


全方位型魔法防壁(マジックシールド) 種別:防御系魔法

強力な防御系上位魔法。自分の周囲にドーム状(実は球体)の光の幕を張り、物理攻撃や炎や冷気などの攻撃も防ぐ。とても強固な防御魔法。


強風撃(エアショット) 種別:黒魔法

下位の風属性魔法。精霊魔法の突風魔法(ウインドショット)によく似た魔法。対象を吹き飛ばす位の強風を、手の平から放つ魔法。


突風魔法(ウインドショット) 種別:精霊魔法

風の下位精霊魔法。衝撃波の如き風を、手の平から瞬発的に放つ魔法。本来は対象物や攻撃対象を吹き飛ばす魔法なのだが、ルシエルはそれを地面に向かって放ち宙へ飛んだりとユニークな使い方をする。ルシエルは、いくつか使える精霊魔法の中でも特に風魔法を得意としている。

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