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第343話 『弓と短剣の鑑定』




 とても立派な太刀を受け取ったあと、デルガルドさんとジボールにお礼と別れを言った私達は、なんだか新しい気持ちでグライエント坑道を目指した。


 これから、ガラード王子と公国に喧嘩をうりにいこうというのに、なんだか晴れ晴れした変な気分。


 ドワーフの王国へ入国した際に通過した吊り橋を渡り、北東へと大洞窟を進んで行く。ドルフス達と戦った吊り橋だ。


 ギブンが先導する方へ歩く事、3時間程――――



「かれこれ休憩も取らず歩いておるが、大丈夫かの?」


「へーき、へーき。オレ達こう見えても、ギブン達と同じくベテラン冒険者だからさ。キノコとかアシッドスライム戦で共闘したし、実力も知っているだろ?」



 笑顔のルシエル。ルキアもにっこにこで、あれから何度もデルガルドさんに作ってもらった腰に差している太刀『猫の爪(ねこのつめ)』を、ちらちら見ては触れている。


 こんなに喜んでくれるなんて、プレゼントした私も嬉しい。


 そう言えばお礼を言って別れると時、デルガルドさんに、ルシエルとルキアが呼び止められそれぞれ所持している武器を見せて欲しいと言ってそれらを眺めていた。


 それで二人の弓と短剣が、凄いものだと解った。っていうか、ルシエルの持つ弓は、私と出会った時から持っていた弓。それがとんでもない程、凄い価値のある弓って事は、ルシエル本人は一応知っていたようだ。


 旅で出会って友達になった【アーチャー】のヘルツ・グッソーも、立派な弓だとは言っていたけど、その名称は『アルテミスの弓』というそうで、どうやら私の所持する『ツインブレイド』と同レベル程か、それを凌ぐ価値のある武器らしい。


 デルガルドさんはそのルシエルの持つ『アルテミスの弓』を見て、懐かしいとも言っていた。そう言っても、デルガルドさんはルシエルとは、初対面だったし懐かしいっていうのはどういう事なのだろうか?


 一番考えられるのは、ルシエルの持つ弓の前の所有者に会ったことがあると、言うことかな。聞いたけど、それについてははぐらかされてしまった。


 そして、ルキアの所持する短剣もその正体が解った。


 エスカルテの街のギルドマスター、バーン・グラッドがルキアにプレゼントした短剣。見た目から言っても価値がありそうだし、戦闘でもルキアは何度も使用していたけれど、刃こぼれ一つまだ無い。


 『アルテミスの弓』程、特急品って事は無いだろうけど、これも凄い武器のはずだとは思っていた。


 だけど、ルキアにわざわざその短剣の正体を明かさなかったのは、バーンが出したルキアに対するいい冒険者になる為の宿題みたいなものだと思っていたからだ。


 ……だけどついにそれが、デルガルドさんによって明かされる事となった。


 『破邪の短剣(はじゃのたんけん)』というのだそうだ。もちろんレア武器で、希少価値は高い。


 そしてその気になる特製は、今までひとつも刃こぼれしないという程の耐久性を兼ね備えている事は言うまでもないけど、名前の通り破邪の力があるそうだ。


 【破邪特性】。アンデッドを倒す力があるそうだけど、デルガルドさん曰く、この短剣にはスケルトンやゾンビと言ったアンデッドだけでなくスペクターとか、物理攻撃が無効な霊体に対してもダメージを与えるのだそうだ。


 更にその刃は、魔族……つまり悪魔さえも貫き、斬り裂く事ができるそうだ。そう言えば、悪魔って霊体に近いから物理攻撃などはあまり有効ではないんだっけ。


 ふと帯刀する『ツインブレイド』を見る。この武器も実は、ルキアが持つ『破邪の短剣』ほどではないけれど【破邪特性】があるのだ。実際にレッサーデーモンなど、下級悪魔はこの剣で一刀のもとに斬り倒す事ができる。



「ちょっと喉が渇いたなー。水飲むから、ちょっと待ってよ」



 ミューリがギブンを止めた。それを見てファムも、ザックから水筒を取り出した。



「あともう少しで第一目的地へ到着するぞい。もう、少しなんじゃ。もう少し辛抱できんか」


「うーーん、解った。そういう事なら僕、頑張るよ」


「ファムも頑張る」


「オレはまだまだいけるぞ! はっはっはっは」


「もう、暗い洞窟であまりはしゃがないでください、ルシエル! 転んでも知りませんよ」



 マッシュルームの可愛い姉妹に、ご機嫌なエルフ、その後を猫耳娘がギブンの後を追っていく姿を遠目に見ていると、お爺ちゃんに可愛らしい4人の孫が文句言いながらもついて行っている感じがしてクスクスっと笑ってしまった。



「所で、ギブンっていくつ位なの? エルフもそうなんだけど、ドワーフってちょっと年齢が解らなくて」


「おう、そうか。確かにヒュームに比べて儂らは、実在の年齢よりも遥かに上に見られる事が多いの」



 ルシエルが、思いついたように言った。



「オレだってこう見えて114歳だからな。って事は意外とアテナよりも年下とか。例えばルキアとタメとか」



 ギ、ギブンがルキアと同い年!? ミューリとファムが、口を押えて笑いを堪える。



「おいおいおい。いくらなんでも、そりゃないぞい」


「そうですよ! 私と一緒っていうのなら、ギブンさん9歳になっちゃいますよ!!」

 


 そんなやり取りに、もうミューリとファムは笑いを我慢できず、笑い転げてしまっていた。



「ははは。そりゃ、流石に怖いわな。見た目てきには、お爺ちゃんだしな。筋骨隆々のお爺ちゃん」


「こら! ルシエル! 失礼でしょ」


「まあいいわい。確かにドワーフという種族は老けて見えるからの。今更、何と言われようともう、慣れたわい」


「それで、ギブンはいくつなの?」


「儂か? 儂は、73歳じゃ」



 ビビシィ!!



『って、お爺ちゃんじゃん!!!!』



 まんまとギブンのそのオチにやられてしまった。私とルシエルは、同時にそう言ってペシリとギブンの背中に手の甲で突っ込んだ。


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