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第341話 『ガラハッド・カザドノルズ その2』




 ギブンから陛下の依頼内容を聞いた。


 陛下の息子であるガラード殿下は、このドワーフの王国を、帝国や公国にも負けない強国にする為、この国を軍事国家にしようとしている。だから、その暴走を止めて欲しいというものだった。


 そうすることで、帝国がこの国へ攻め込んでくるような事があっても、そのタイミングを遅らせる事ができる。更には軍事進行しか頭にない帝国に頼らなくても、ドワーフ王国とクラインベルト王国が手を取り合い、助け合えるのではないか。


 つまり、そう言う事だった。この国の王、ガラハッド王は心より平和で優しい世界を望んでいるという事が解った。



「解りました。この件が済んだら、思う所もあって丁度クラインベルト王都へ一度帰ろうとは思っていました。その際には、陛下と我が父セシル・クラインベルトが手を取り合えるように話をしましょう。きっとそうなれば、我がクラインベルトだけではなく、隣国のガンロック王国も力を貸してくれる事でしょう」


「おお、そうか。やはり余の判断は正しかった。ミューリとファムに、アテナを連れてきてもらって話ができて良かった」



 私の父セシル王は常日頃から国の事を思い、どうすれば国の平和を守れるのか、世界の調和を保てるのかといった事を考えて思いを巡らせている。


 見た目はヒュームとドワーフ、顔も姿も全く違うけれど、そういう国を憂う思いを浮かべる顔は、私の父と同じ表情をしているなと思った。



「それで早速、私達に依頼したいという内容について伺いたいのですが。我が国と、ドワーフ王国の両国の同盟の話だけではないと存じておりますが」


「ふむ、そう通りじゃ。まずは、平和の第一歩として馬鹿息子の暴走を止めねばならん。それを完全に止めねば、貴国との同盟も息子と公国に邪魔されるだろう。だから、手を打つ」



 陛下の言葉にギブンは頷き、話を続けた。私やルシエル、ルキアはその話に耳を傾ける。



「アテナ殿下……」


「殿下はやめて、アテナでいいわギブン。私には私の都合があるから、その方がいい。今まで通り、普通でいいよ」


「……ゴホン! 解った。では……アテナは、ロックブレイクでキョウシロウと会っておるが覚えとるか」


「もちろん。一緒にアシッドスライムと戦った」


「うむ。奴は今、自分の恩人であるルイ・スヴァーリ伯爵の護衛をしとる。そのスヴァーリ伯爵は、公国の使者として、この国へきておるがその他に別の用事でも来ておる」



 ファムが口を挟んだ。



「グライエント坑道。そこには、沢山の鉱物資源があって、公国はそれを採掘している」


「そうじゃ、ファムの言う通り。採掘された鉱物資源は、軍事利用する為に公国と帝国に運んでいるんじゃ」



 なるほど、話が見えてきた。



「だいたいの事は察しがつくわ。つまり、そのグライエント坑道を破壊、もしくは採掘場として使えなくしてしえばいいという訳ね。確かに冒険者の仕事としては、打ってつけね」


「そうじゃ。話が早くて助かるわい。グライエント坑道は、帝国へのルートにもなっておるからの。そこを潰すだけでも、両得なんじゃ」



 陛下は、私の目を見て言った。



「つまりそう言う事じゃ。馬鹿息子……ガラードは野心の塊じゃ。王になりたがっとる。もともと余亡き後は、後の事は第一継承者であるガラードで決めておった。それなのに、あの馬鹿は何を急いておるのか。あいつなりの正義があるのだろうが、これは間違えとる。アテナよ、息子を正してやってくれ」



 私は頷いた。ギブンが続ける。



「資源採掘は今も続いておる。だから、すぐにでもそこへ行って計画を実行したい。グライエント坑道が使用不可能になれば、殿下と公国の繋がりはどちらにしても一旦解消。手痛いダメージとなって、ガラード殿下も少しは反省されるかもしれますまい」



 陛下とギブン達の狙いは解った。ガラード王子は兎も角、侵略戦争を考えている帝国にこれ以上余計な力をつけさせる訳にはいかない。


 私はルシエルとルキアの方を見た。



「面白そうじゃねえか! ミューリもファムも友達だ。友達が困っているなら助けてやろうぜ。理由はそれだけで十分だろ。あと、上手くいったら報酬と別に美味いもんをたらふく食べさせてほしいな!」



 ルシエルの言葉を聞いて、陛下は笑って頷いた。それを見て、ミューリとファムがはらはらしている。



「わ、私はアテナについていきます! カルビもそうですよ! それに私もミューリやファム、ギブンさんにノエルさん。皆を放ってはおけません」



 ルキアもこの国王陛下直々の依頼を受ける事に異議は無いようだった。



「それじゃあ、早速行動しましょう! こうしている間にも、グライエント坑道から鉱物資源が帝国や公国にどんどんと流れているんだから。善は急げって言うしね」



 あははと笑うと陛下も笑われた。


 そして、陛下に再度頭を下げると玉座の間をあとにした。


 外の通路まで出るとそのまま城を出る。ミューリが言った。



「よし、じゃあこれからグライエント坑道で向かうよ。準備はいいかい?」



 ルシエルが手を挙げた。



「いいぜ! 要はその採掘場を使えないように完全に破壊すれば言い訳だろ? 問題ないぜ。でも、どうやって破壊する? 魔法か? 確かにミューリの火属性魔法なら打ってつけかもな」



 すると、ギブンがいつの間にか背負っていた大きな袋を地面に置いて中を見せた。


 まじまじとそれを見ると、ルキアが首を傾げる。



「な、なんですか、これは? 何か筒のようなものですね」



 ミューリとファムが、驚いた表情で顔を見合わせる。そして、ギブンがニヤリと笑った。



「これはのお、ダイナマイトっていうもんなんじゃ。火をつけると、ドカンと大爆発を起こすド派手な爆弾じゃ」



 城の前、大通りでそんなものが山のように入った袋を地面に置いたギブン。それを見て、私達は危ないから直ぐに街を出ようと皆を即した。


 これより我々一行は、グライエント坑道へ向かう。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ダイナマイト 種別:アイテム

採掘用に使用する強力な爆弾。鉱物資源などの採取を生業にするドワーフの必需品の一つでり、ノクタームエルドでは馴染みのあるもの。破壊力が恐ろしい程あるので、戦いでも使える。

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